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2004/06/13

竹村健一は電力の走狗になったか

 核燃料サイクルの見直しの報道に危機を感じているのか、電力会社は、「文藝春秋」に、大枚をはたいて広告ページを買い、竹村健一と上坂冬子の対談を載せている。それがまた、どうしようもない「たわごと」をならべたものだ。こんなもので、説得できると私たちを甘く見ているのだろうか。原子力や電力の広報のセンスはじつに悪い。

 文藝春秋という雑誌は、昔はそれほどではなかったと思うのだが、自前の記事の間に、広告ページを平気で挟むようになった。特に巻頭グラピアページはひどい。どのページが雑誌記事で、どれが広告か、紛らわしい。たとえば、「face」という人紹介の写真ページがあり、今回は「和食を変えたデザイナー」という特集だが、5ページものの間に4ページの広告がとびとびに挟まっている。こういう特集は、続けてみせるのが、編集の常識だろう。ページをめくると、広告ページでは興がそがれる。それと同じことが、巻頭70ページほどのグラビアページで行われ、ほぼ半分は広告である。

 その巻頭グラビアの中に、今月は上記の対談が8ページほどを使って掲載されている。「辛口評論・同級生の”核”談義」というタイトルで、まるで雑誌記事本体であるかのような体裁になっている。最後に小さく「提供・関西原子力懇談会」とあって、注意深い人は広告ページであると気づく。この掲載スタイル自体が人を欺くものである。

 内容となるともっとひどい。「核燃料は繰り返し使えば千年以上もつ、といわれていることも、頭の片隅に置いてほしい」と、記事見出しで強調されている。高速増殖炉の実現がほとんど見送られてしまった現在、そんな夢物語をいわされるとは、竹村も可哀想なものだ。前回の原子力長期計画(2000年)策定の際、増殖炉を路線から外したのは、実は電力であるのに、そしてそれは妥当な判断だったと思うのだが、広報に関しては、依然として夢を売り続けている。とてもちぐはぐだ。

 増殖炉を選択肢として降ろしてしまった今は、唯一の可能性は、いわゆるプルサーマルだが、これはリサイクルというほどのものではないし、竹村が言わされているような千年もつ計画ではなく、あと80年分しかないといわれるウランを、100年に引き延ばす程度の資源節約効果しかない。プルサーマルで燃やした燃料を再処理する計画がないので、プルトニウムは一回だけ再利用に回されるだけだからだ。ずいぶんまやかしのリサイクルであるし、それで無限にリサイクルできるかのような幻想を売っている。

 ウラン資源は、今のまま使い続けると70年しかないと、これまた竹村はいわされているが、最近のIAEA(国際原子力機関)がまとめたところによると、既知資源量が80年分、推定資源量を入れると270年分、日本の研究者(原研高崎研)が進めている海水中からのウラン採取が可能になれば、ほぼ無限にウラン資源はあるのである(朝日新聞04年5月24日)。コストは引き合ず、安全性に問題があり、原爆の材料としての問題性もはらむプルトニウムに、手を出すことはないのである。

 相手をしている上坂冬子も、竹村に負けじと夢物語を売っている。バッグの中から、プルトニウム燃料の模型(小指の先ほどのセラミック)を取り出し、これ一個で4人家族の半年分の電力が賄えると、昔々原子力がバラ色だった頃の語り口で熱弁をふるっている。今どきもうそんな言い方では、一般人でもごまかされまい。専門家は、そんなこと言うのはやめてよと、赤面することだろう。

 竹村のおはこらしいが、「放射線が怖くて、女が抱けるか」というばかばかしい話も繰り返されている。それは、私たちの体内にも放射線を出す物質が含まれている、ということから来ている。カリウムは生体に必要な元素だが、ごく微量の放射性同位元素を含んでいる。また大気中のラドンを吸い込んでいる。それらによる被爆は問題にならない量だが、ゼロではない。竹村は原子力発電所の出す放射線量が少ないことをいうのに、原子力発電所の外壁にずっと立ち続けたとき受ける放射線量より、彼女を抱いたときに、彼女の体がもっている放射能から受ける放射線量の方が多いですよ、と上のような言い方をして、結構受けているらしい。 この人は、つべこべ言わずに、わかりやすい表現でいうのが上手なことは認めるが、上の言い方はいただけない。

 ともかくお粗末。こんな対談を、「文藝春秋」に潜り込ませて、核燃料サイクル路線への支持を取り付けようとする、電力広報の体質にはあきれる。最近の見直し論議は、今のまま行けば、どうせ政府と電力の思惑通りに既定路線維持ということに落ち着くことだろうが、もっとまじめな議論で世論を喚起し、原子力に対する一般人の理解のレベルを上げるように努力すべきだ。

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