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2004/06/23

米大統領選の決定的要因は信仰?補論

 先に書いた「米大統領選の決定的要因は信仰?」では、長くなるし、やや脇道にそれるので、省略したことを別項目として書いておく。

 アメリカは宗教的にきわめて多様な社会である。ありとあらゆるキリスト教の教派がある。アメリカで創設され、この国にしかない教派もある。他にユダヤ教、そして最近ではイスラム教も増えてきた。それら宗派の一部は、このところとみに政治化し、選挙結果に大きな影響力を及ぼすようになった。宗教と政党基盤との関係は流動化している。政党側も各宗派の信者をどう取り込むか、無関心ではいられない。

 一概にはいえないが、かつては、アングロサクソン系の北部プロテスタントは共和党、南部プロテスタント、カトリック、ユダヤ教、その他と無宗教は民主党、というおおまかな色分けだった。黒人差別撤廃運動、ヴェトナム戦争、ヒッピーの反体制運動をそれへの反動、ウォーターゲート事件などいろいろあって、伝統的な政党基盤を揺るがした。保守的でありながら民主党支持だった南部プロテスタントが、共和党支持に鞍替えしたのが、流動化の顕著な例である。

 レーガンも、クリントンも、宗教勢力を巧みに取り込むことによって当選を果たしたが、ブッシュJr. ほど旗幟を鮮明にすることはなかった。現大統領ブッシュの、信仰・モラル・家族の価値を前面に出す選挙キャンペーンによって、宗教諸派と政党との対応が、一面では顕在化し、また別の面では複雑になってしまっている。

 現在、二つの陣営を分ける論点の一つは、妊娠中絶と同性愛を認めるかどうか、である。それをかたくなに認めようとしない非容認派(pro-lifeと呼ばれる)が、プロテスタント、カトリック、ユダヤ教の宗派を横断して手を握るようになった。一方、容認派(pro-choiceと呼ばれる)も宗派を超えて連携している。

 前の記事で紹介したTIMEの特集記事によると、現在、問題が先鋭化しているのは、カトリック教会内である。中絶反対は、ヴァチカンが決めたカトリックの大方針である。しかしカトリック信者は概してリベラルで、自分は教えに従うが、政治問題とはせず、個人の自由に任せてよいという考えの人が多かった。ところが最近になって保守派カトリックの司教たちが、非容認を公然化させる運動を始めた。容認派の政治家がミサに来たら、聖餐式に列席するのを拒否するというのである。カトリック信者にとってミサで聖餐にあずかることは、非常に重要である。聖餐のパンは、キリストの肉そのものと信じられており、それをいただくことで、信者の身に救いが実体化すると信じられている。この運動は、ケリーやそのほかのリベラル議員をねらい打ちし、保守的な政策を強制しようとするものだが、この動きには眉をひそめる神父や信者たちも多い。

 TIMEには、カトリック信者を対象にした世論調査結果が出ている。それによると、信仰と政治的問題とは分けて考えるべきだという人が 70パーセントと大多数を占めている。ケリーが容認派であるからといって、ケリーへの投票に影響を受けないとする人が83パーセントと、良識を示している。しかし、リベラルな良識派は、粗雑な言動のキリスト教原理主義者たちに負けつつあるのではないか、心配である。

 宗教国家アメリカの、政治色の強い宗教運動には今後も注目する必要があるようだ。

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