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2004/06/25

ヒトクローン胚を作ること強行採決で容認

 どこまで許されていいか、賛否があり、決定が先送りされていたヒトクローン胚を作ってもいいことが、条件付きで可決された(朝日新聞「ヒトクローン胚を容認、条件付きで、科議会議調査会)。再生医療の研究を進めるためである。臓器移植には拒否反応の問題がある。自分の体細胞の核を他人の卵子の核と置き換えて育ったのがクローン胚、これから条件次第でさまざまな臓器(たとえば血管とか)を作ることができるかもしれない。まだこれからの研究次第だが、成功すれば、臓器移植での拒否反応の問題を避けられる。カスタムメイドの、さまざまな臓器を人工的に作って医療に利用すること(再生医療)が将来の夢だ。そのための基礎研究をはじめてもよろしい、という方向へ一歩進んだことになる。それにしても強行採決とは?

 ヒトクローン胚とかそれに関連することは、用語も概念も専門的で、一般人にはわかりにくい。しかしある程度の理解を持ち、関心を抱いてウォッチしていくのは重要だ。生命倫理に関することとして、専門家任せではなく、社会の判断を求められているからだ。当面は研究だから、と見過ごしているうちに、こんなことになってしまったの?と驚かされる事態になる日が来る。その時ではもう遅い。

 この問題については、私はずぶの素人だが、関心を持って調べ、ずいぶん前にHP本館に、「幹細胞って知ってますか」という解説を書いている。もっと専門的で良い解説は、「EP:end-point 科学に佇む心と体」にわかりやすい用語解説がある。再生医療、ES細胞、幹細胞、万能細胞と、人間クローン胚から幹細胞を作ることに関する引用集が、まとまっていて参考になるだろう。

 これまでどこまで許されていて、今度何が認められようとしているのか。まとめてみると、
・一般的な幹細胞研究は制限なし(幹細胞は人間の身体のどこにもある)。
・ヒトの受精卵細胞を使って組織を育てることができるか、その基礎研究をすることは認められていた。
・今度認められようとしているのは、ヒトの卵子に、別の人の体細胞の核を入れ、それを育てたもの(ヒトクローン胚)の研究着手である。
・もしこのヒトクローン胚を子宮に着床させれば、クローン人間ができるが、それは「クローン技術規制法(01年成立)」で禁止されている。

 では問題点は何か。
・卵子提供者のプライバシーや権利保護
・再生医療にクローン胚を使う際の安全性

 外国ではどうなっているか。
・キリスト教国(特にカトリック国)では、受精卵や卵子の利用は、神を冒涜するものとして、あるいは生命倫理を犯すものとして反対が強い。殺人に等しい行為として反対する人もいる。フランス・ドイツでは全面禁止。英国では限定的に認められている。アメリカはずるくて、連邦政府が研究資金を出すことは禁止しているが、民間の研究は野放し。かなり進んでいるらしい。
・韓国では、本年2月ヒトクローン胚から一歩進んだES細胞の作成に成功している。

 日本では、どこでどのように決められつつあるのか。総合科学技術会議が決めることになっている。首相が議長の会議である。実質的にはその下部組織である専門調査会が案を作る。今回のニュースは、その調査会(生命倫理専門調査会)で議論中だったが、調査会会長が突然審議を打ち切り、条件付き容認案を提案、多数決(10対5)で決められたということだ。

 条件とは、
・クローン人間を作ってしまわないよう、胚の管理体制
・卵子提供者への負担(金銭問題、売買の対象になることなど)
・安全性についての科学的検証をする制度的枠組み
などが整うまでは、当面研究着手を凍結とのこと。何のことはない、一歩踏み出したが、当面は何もできない、ということだ。

 どう考えたらいいか。
・朝日新聞の今日の社説「クローン胚ーー研究は認めてもいいが」では
『大きな可能性を秘めている研究を入り口で閉め出すべきではないと考える。今回、調査会が異例の採決で結論を出したのはいささか強引との批判は免れないが、厳しい条件をつけたうえで研究を認めた方針は妥当である。』と容認の方向である。
・私の考えは、大いに進めるべし、ただし、透明性を条件に、ということだ。社会全体が関心を持ってウォッチし、段階ごとに、みんなで考えて、判断していくことが必要だ。

 この稿をを書くのに参考にしたウェブログは、上記 EP さんのもののほか、PurpleAquariusさんヒトクローン胚容認される である。

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