ビッグバン以前にも時間と宇宙が存在した?
われわれの住む宇宙も時間も、ビッグバンによって始まった、というのが、現代宇宙論の定説である。ビッグバン以前はどうなっていたのか。時間がそこから始まったのだから、それを問うのはナンセンスといわれていた。しかし最近、ビッグバン以前に時間も宇宙もあった、とする理論が出てきた。それを解説する、月刊日経サイエンス04年8月号(04/6/25発売)の記事「時の始まりはいつだったのか、ビッグバン以前の宇宙」を読んでみた。
【左:従来のビッグバン標準理論、右:弦理論にもとづく宇宙論】
遠くの星雲を観察してみると、どんどん遠ざかっている。ということは、宇宙は、どんどん膨張している、ということだ。膨張している時間を逆向きに回してみると、宇宙は137億年前、物質とエネルギーが凝縮した一点から爆発的に生まれたことになる。ハッブルが宇宙の膨張を観察し(1929)、ガモフが、アインシュタインの一般相対性理論(1916)にもとづく理論的基礎づけをした(1946)。それが今日ビッグバン理論とよばれるもものである。私たちの日常からすると、時間・空間的にかけ離れた世界の話であるが、いったい私たちは、どこから来て、どこへ行くのか、という存在の基礎に関わることだからだろうか、一般向けの解説書としてよく書かれた、
『宇宙創成はじめの三分間』(S.ワインバーグ著、ダイヤモンド社、新版1995)
『ホーキング、宇宙を語る』(S.W.ホーキング著、早川書房、ハヤカワ文庫NF)
は広く読まれているようだ。
ビッグバンには、一般の人の関心も高い。たとえば、こんなblogを見た。
ちょこつぶ: 宇宙は広大です『大学の般教に「現代の宇宙物理論」(だったかな?)ってのがあったので受講してました。内容はビッグバンから現在に至るまでの宇宙物理論で、この授業すっごく面白かった!!
ビッグバン以前は、「今のこの空間はなかったって、つまりどういうこと?」とか考え出すと不思議でしょうがないよ。今も宇宙って広がり続けてるんでしょ?空間が広がってく? 空間なんて最初からあるものなんじゃないの?(笑)・・・はっきりいって意味不明。だからこそ面白いんだよね。』(以上引用)
ビックバンより前は、どうなっていたのか。時間がそこから始まった、というのはどういうことなのか、を疑問に思うのは当然だろう。これまでの理論では、答えがなかった。じつは、原初ごくごく短い時間、宇宙全体がごく微少の空間に閉じこめられていた状態を説明できる理論がなかった。重力と量子力学とを統合した「量子重力理論」がまだ完成していないからである。
ここ十年くらいの進歩で、弦理論なるものがいい線をいっているらしい。端的に言って、宇宙の究極を説明するのは「ひも」である、という理論だ。バイオリンの弦のように、ぴんと張られた弦、ひも、は振動する。その長さどんどん短くしていくと、これ以上は短くできないひもの長さに到達するらしい。それがどう振動したり、動いたりするか(じつは10次元とか、11次元空間でのことだが)。その理論から、原初のビックバンを超えて、向こう側の時間と宇宙が見えてきた。ビックバンは、宇宙の本当の始まりではなく、単なる通過点で、それ以前、永遠の過去から宇宙は存在していた、とも考えられることになってきた。
どんな理論も検証可能でなければ、単なる仮説にすぎない。このプレ・ビッグバン説も、もう一つの有力な仮説も、いずれ検証されることになろうという。
興味深いのは、時間に始まりがなかった、というだけではない。多次元空間での宇宙論からすると、われわれの宇宙とは別の、全く独立な、別の宇宙が存在しうるらしい。空想をたくましくすると、哲学的、あるいは宗教的な意味合いも帯びてくる。
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