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2004/07/08

小沢征爾 in 水戸

 小沢征爾が水戸にきている。水戸室内管弦楽団の定期演奏会(58回)の指揮をとるためだ。年に1度か2度、この楽団の指揮を欠かさず続けてくれている。水戸市民としては、世界の小沢が、こんな地方都市に律儀にやって来てくれることをありがたく思う。小編成だが、この楽団のレベルはとても高い。総監督の吉田秀和、指揮の小沢が声をかけて、選りすぐりで編成されている。オーボエの宮本文昭、フルートの工藤重典など、名手がメンバーとなっている。潮田益子など、弦楽器には女性の優れた弾き手がそろっている。

 今回は、バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽、モーツアルト:協奏交響曲 変ホ長調(レヴィン復元版)そして同じくモーツアルトの交響曲第40番ト短調、であった。昨夜私らが聴いたのが初日で、3日間続く。今日の昼の時間には、「子供のための音楽会」を茨城県武道館でやっている。小沢征爾らしい教育的配慮なのだろう(その後目にした共同通信の報道によると、これは小中学生約3千人を招いておこなったものだそうだ)。

 会場となっている水戸芸術館は、水戸市の中心にあり、磯崎新の設計になる気品あふれる建物群で、音楽・演劇・美術などのセンターとなっている。音楽会は定員600名余りのこぢんまりとしたコンサートホールで行われる。低い舞台を扇状の客席が囲んでいて、どの席も舞台に近く、演奏者の息づかいが聞こえるほどだ。演奏する人もここはとても弾きやすいという。

 小沢が来るとなると、東京あたりからも聞きに来る人がかなり多く、チケットをとるのが難儀である。チケット売り出し日の前日から並ぶ人も出てくるが、当日朝行って列に加わっても、どこかの席にはありつける。地方都市住まいならではの有難味だ。

 昨日のバルトークは始めて聴くものだった。半音階のパッセージが、一つのパートからきわめて弱音で始まり、だんだんとオケ全体に広がっていき、ティンパニや大太鼓がこだまし盛り上がっていく音楽は珍しく、聴き応えのあるものだった。小沢ならではの指揮が、難曲らしいこの音楽の魅力を、聞き慣れないものにもわからせてくれた。最後のハンガリー民族音楽風の盛り上がりも良かった。1936年、ナチスドイツの脅威にさらされる中で、反ゲルマン的な色をにじませて作曲された意図も伺えた。

 モーツアルトの協奏交響曲はオリジナルが失われていたものを、研究者が復元したものであるが、フルート、ホルン、オーボエ、ファゴットの4つの管楽器の独奏が、いかにもモーツアルト的で軽妙なメロディーを絡ませ合わせて聴かせてくれ、堪能できた。舞台中心に半円を組んだ独奏者と、その背後のオーケストラの中間に指揮者の小沢は立ち、独奏者のあいだに割り込んだり、後ろに下がってオケを指揮したり、本人はいい音楽を聴かせようと懸命なのだろうが、その仕草がユーモラスで、それも楽しめた。交響曲40番は聞き慣れたものだが、小編成らしい端正な音を聞かせてくれた。随所に管楽器の名手の音が高く響き渡り、澄んだ弦楽器の合奏が絶え間なく流れた。

 一つの曲目を終わるたびに、拍手が鳴りやまない中で、楽団員一人一人と握手をしたりして喜び合う小沢のいつものやり方は自然で、ほほえましいものだった。創り出す音楽は相変わらず若々しいが、身体の動きには、小沢もいささか老いたかな、と感じさせるものもあった。無理もない、昭和10年、私と同じ年生まれなのだから。

 なお水戸芸術館の活動について、かつて心ないマスコミの攻撃があり、私もHPにそのことを書いたことがあったが、その後も変わることなく、水戸市民の文化の核としての活動を続けていることはうれしいことだ。

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