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2004/07/23

宮本亜門演出「ドン・ジョヴァンニ」の奇抜さ

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 何かやってくれるだろうと期待半分で観に行った宮本亜門演出の二期会オペラ「ドン・ジョヴァンニ」は、想像を超えた奇抜さだった。オペラ好きの常連(年配者が多い)は、たまげたのではなかったか。ドンファン伝説をもとに、モーツアルトが1787年にオペラ化したこの「ドン・ジョヴァンニ」は、これまでもいろいろな解釈で上演されてきた。宮本は、場面を現代、それもテロで破壊されたニューヨークに移し替えた。舞台全面は倒壊したままの瓦礫の街である。ドン・ジョヴァンニはテロリスト。物語の発端で主人公にたまたま殺された騎士長が、テロの犠牲者に擬せられる。その棺には星条旗がかけられる。アンモラルな主人公を追いつめ、最後に撃ち殺すのはアメリカの軍隊、という設定である。ラスト、「悪人の末路はこの通り」と明るく唄って幕になる場面では、大きな星条旗が中央高く掲げられ、舞台に立つ全員が星条旗の小旗を振る。アメリカ的正義の勝利を称えているのではない。むしろ痛烈に風刺しているのだ。

 モーツァルトが、制作当時ぶつかって、その中で何かを主張したかった「現実」を現在に移し替えれば、このようになると宮本はいいたいのだろう。このドラマは、さまざまに解釈されてきたが、当時の絶対王政の世の中、厳然と支配していた道徳律に反して、自由に生きた反体制の人としてドン・ジョヴァンニを肯定的に描いたのだという解釈がある。宮本演出はその線の延長上にあるのだが、あまりにも奇抜。星条旗の登場にはしっくりこなかった。

 演出ぶりはともかくとして、二期会の主な歌い手はヨーロッパの本舞台で鍛えられてきた人たちで、演奏・演技は十分楽しめた。モーツァルトらしい繊細で美しいメロディーは随所に聞こえた。見せ物としても楽しめた。本来は農夫たちという設定の若者群を、現代風の、麻薬ごっこに耽ったりする不良グループにしてみせる。ドン・ジョヴァンニが主催する舞踏会の場は、怪しげな雰囲気で、ストリッパーまで登場する、乱交パーティー風。舞台全面での乱痴気騒ぎは、どこをみたらいいか、目がきょろきょろした。有名なアリアの一つ、従者レポレッロが唄う「カタログの歌」では、主人公の女性遍歴の数々を記したカタログ本の代わりに、携帯電話の画面をスクロールして見せた。パーティの食事には、ケンタッキーフライドチキンの大箱。その他もろもろの現代風の仕掛け。やはり評判の宮本亜門だけある。しかし、もしこれをモーツァルトが見たら、なんということか。

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