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2004/07/26

オオカミと森の生態系

040725Wolf
 米国でオオカミが復活しつつあるとの報道を読んだが(ハイイロオオカミ、絶滅危惧種から復活 米21州で宣言【朝日新聞04/07/18】)、イエローストーン国立公園でのオオカミ復活の詳細が日経サイエンスの記事(「オオカミが変えたイエローストーン国立公園」)として出ている(04年9月号)。日本にオオカミがいなくなったことによる生態系の問題も取り上げてある。鹿などの増えすぎは、最上位の捕食者としてのオオカミがいなくなったためだという。

 害獣として駆除され、イエローストーン国立公園には1920年代を最後にオオカミがいなくなった。このときからエルク(大型の鹿)が増え始めた。その結果、若木が育たなくなり、植生が変化し、鳥や小動物を含む生態系も大きく変わった。1995年と96年、それぞれ14頭と17頭のハイイロオオカミを、カナダから移して繁殖をはかった。最近では、それが約170頭にまで増えた。その結果、2万頭もいたエルクがほぼ半分になり、ヤマナラシや柳などの樹木が生長するようになり、植生が回復し、鳥や小動物も増えた。

 エルクの減少と植生の回復を、必ずしもオオカミに帰することはできないとの意見もあるようだが、森の食物連鎖の頂点にいるオオカミの存在が自然な生態系を回復させたのだとする見解が有力だ。

 イエローストーンでは人工的にオオカミを移入したが、アメリカのほかの地域では、数が少なくなっていたオオカミを絶滅危惧種として保護してきた。その結果最近では数が増え、家畜を襲われると牧場主からクレームが出るまでになった。もう保護の必要がないだろうと、中部から北東部の21州については、内務長官が復活宣言をし、絶滅危惧種の指定を外すことになった、というのが最初に引用した新聞記事である。

 日本では、鹿やイノシシの増加による被害が、このところしばしば報じられている。これも森の捕食者であるオオカミがいなくなったことが一因だ。日本では1905(明治38)年を最後にいなくなった。政府が害獣として駆除を奨励したからだが、感染病による減少もあったらしい。すぐに鹿などが増えなかったのは、日経サイエンスに書いてあることによると、狩猟でバランスがとれていたかららしい。ハンターの数が減り、高齢化するともに、鹿やイノシシが増えてきた。1980年代以降目立ってきた。鹿は日本の森の生態系を変えつつある。鹿の多く棲む森では、樹木が育たず、そのためそこに棲む鳥の種類が少ないという調査結果がある。

 日本の森にオオカミを戻すべきだと運動している人々がいる。日本オオカミ協会である。「日本の森にオオカミの群れを放て」という本も出版されている。日本では森と人里が近接している。オオカミを野に放って、うまくいくだろうか。

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コメント

『 日本では森と人里が近接している。オオカミを野に放って、うまくいくだろうか。』
 この続きをお聞かせください。
 固体が増えたとき、人里に狼が降りてきて、家畜、場合によっては人が襲われれると言うことがありうる。そういったリスクを考えて、繁殖させる場所を特定するという処置を取ればいいのでしょうか?
 それ以前に、狼のえさとなる鹿や猪以外の、下位の動物が日本の山に十分いるのでしょうか?
 一度滅びた最上位の動物が人為で戻ることによる生態系の撹乱はないのでしょうか?
 少なくなった下位の動物が狼によって絶滅と言ったことが起こるように思えます。
 生態系を管理するのは一筋縄ではいかないというのが私の感想です。

投稿: 魔法使い | 2004/08/10 22:52

申し訳ありません。上の文が2重登録になってしまいました。一つは削除ください。
さて、気になることがもう一つあって、狼は人を襲うか?と言う問題です。
 狼と言えば赤頭巾ですが、これは、日本狼には当てはまらないと言う主張もあります。むしろ益獣であり、古来からあがめられてきたともあります。
 しかし、狼を森に放つということになったら、民有林ではまず無理でしょう。国有林でしかも外に出ないようなしかけがいるかと思います。

投稿: 魔法使い | 2004/08/10 23:15

 さてどうなんでしょう。本文で紹介した「日本オオカミ協会」のHPや出版物をごらんになってください。オオカミを導入したら生態系を再び乱すことになるか。鹿やイノシシ、猿などの繁殖しすぎが問題になっていますね。熊の問題もあります。オオカミ復活をいっている人は導入すればいい方向に行くと主張しています。オオカミは人を襲うか。むしろ家畜を襲う可能性は多分にありますね。導入には反対する人が多いだろうと思います。「うまくいくだろうか」と書いたときには、そんな意味を込めたつもりでした。

投稿: アク | 2004/08/11 09:27

オオカミに限らず生き物同士の共生に人が関わると話がややこしくなりますね。手塚治虫、火の鳥のなかにもそんな話が出てきていました。俄王が一緒に育てたシロ(狼)とアカ(猿)が大きくなって自然界に帰り、それぞれボスになりますが、テリトリーを巡って群れ同士が争い、最後は二匹が対決してぼろぼろになって死んでいきます。
『やっぱり無理じゃったか』というのが、二匹の墓の前で俄王がつぶやくせりふでした。
『オオカミに対する誤解と偏見を解いて、その生態を科学的に正しく伝える』というオオカミ協会の理念は共感できます。
 人間は生態系のごく一部だという考えが浸透し、森には様々な神つまりカムイがいたことを理解し、これを復活することが理解されれば、何とかなるかもしれません。でも、難しいですね。動物を高みから見下ろして保護すると言う考えはあっても、これをカムイとして敬う人々はほとんどいません。どこかで敬う気持ちがないと..

投稿: 魔法使い | 2004/08/11 10:54

オオカミを単なる動物だと思っている人が多いようですが今一度顔の表情をよーく見てください。単なる動物に見えますか。私は彼らがなにかを私たちに訴えようとしている気がしてなりません。
オオカミは極めて人間に近い、いやそれ以上の人格?オオカミ格を持っていると確信しています。それは日本オオカミ協会のホームページのナブー
http://www.nabu.de/wolf/Wolfgame.swfを見れば
一目瞭然、目からうろこです。オオカミをその辺にうろついている犬猫と一緒にしないでください。
オオカミは人を襲うために存在しているのではないのです。いいですか、彼らには天から与えられた崇高な使命(生態系のコントロール)を授けられ地球上に存在してしていることを絶対忘れてはならないのです。
私のe-mailを公開してもよろしいです。

投稿: 高林常雄 | 2013/02/11 22:25

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