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2004/08/13

自分に似る中国人を想像してみようと内田樹

 サッカー・アジアカップの中国人観衆のしめした反日感情について、いろいろな人がいろいろいっている。この人なら、いかにもこういいそうだ、というステレオタイプな発言が多い。その中で目をひいたのは、『街場の現代思想』の著者、内田樹のブログでの想像力の問題である。中国人でありながら、自分と同じような経歴・職業・考え方などを持つひとを想像し、その人の「同意」がえられるような発言をしよう、というのが内田の考えだ。

 数日前に内田は同じブログで重慶から遠く離れてを書いたが、その中でこんなことをいっていた。

 個人的には不愉快なことだが、かりにもしこの反日教育のせいで、江沢民時代に中国国内の政治的安定が保たれたという事実があるとすれば、日本はそれによって不利益よりもむしろ利益を得たと考えることもできる。
 私はむしろそういうふうに考えようと思う。
 中国が統御不能になったら、どれほどのリスクを周辺地域は負うことになるか、これはほとんど想像を絶している。
 中国が効果的に統治されていて、13億の人心が安定していること、これが日本人である私が隣国に望む第一のことである。
 「反日教育」が中国国民の一体化「幻想」の涵養に資するところが大きく、結果的に中国国内の政治的安定に寄与するものであったなら、私はこれを支持しても構わない。
 イデオロギッシュな反日教育の影響で日本人が中国人に憎まれる方が、中国が統治不能になるより、日本人にとってはずっと「まし」な事態だからである。

 この発言にはいろんなコメントがあったらしい。ネガティブな反応もあったことだろう。それに対して、再度内田が書いたのがこれである。そこでこう書いている。

 こういう問題について考えるとき、私が自分に課している条件はいつも同じである。
 それは、「中国の大学でフランス哲学を教えているひとりの功利的ナショナリスト」(「中国的ウチダ」である)を想像してみて、その人の「同意」がとりつけられるように書くということである。

 石原慎太郎のように「民度が低い」と一蹴することはたやすい。中国側にも中国的慎太郎がいて、日本人はアメリカべったりで、民度が低いとうそぶいていることだろう。これでは、対立が激化するばかりで、何も生み出さない。

 いつのまにか中国と日本は、お互いがなければそれぞれの国の経済が成り立たない関係ができている。「毅然とした態度で」などといって、強硬策をあおるのがいい結果をもたらすか。それよりも、内田のいうように、自分の似姿が相手側にいるものと想像してみよう。その人に「オレもそう思うよ」といってもらえるような、ものの考え方をしていこう。それが、「街場の常識」をわきまえた、大人の態度だ。

 内田樹の『街場の現代思想』をお読みになりましたか。お薦めします。

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コメント

内田も石原も「あくまで他人事」と高みからモノを言っています。内田が想像してみるのはせいぜい「自分に似た中国人」まで。日中関係の泥沼の中で、なんとかしようともがき苦しんでいる日中両国の人間ではありません。だから賛同できない。

投稿: naoko | 2004/08/16 04:29

naoko さん、コメントありがとうございます。
「日中関係の泥沼の中で、なんとかしようともがき苦しんでいる日中両国の人間」もいるのでしょう。ただ、両国関係がそのような泥沼の中にいる人々によってではなく、高みからものをいっている人でもなく、付和雷同しやすいマジョリティの感情的反応によって動かされるのが心配です。その意味では、クールな言論も大事だと思います。「泥沼」の実態がもっと知れわたるといいですね。

投稿: アク | 2004/08/16 09:06

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