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2004/09/12

3年前,9/11翌日のNYT社説を読み直す

 3年前の9/11について、昨日は不謹慎な思い出を書いたが、もう一つ思い出したことがある。それは事件の翌日のニューヨークタイムズの社説である。何か頼りなげで、茫然自失、という印象を持った。その後ブッシュのもとで復讐戦に転じることになるのだが、事件直後の NYTimes 編集局のありのままの空気は、事件をどのように受け止めたらいいのか分からぬまま、事件のショックをやや叙情的に伝えていた。当時のスクラップを取り出して読んでみた。一部を訳出してお目にかけよう。タイトルは”The War Against America; An Unfathomable Attack”である。私の読んだのは、それが転載されたInternational Herald Tribune で、タイトルは "Mourning in America" になっている。 書き出しはこうである。

 普通の状態を想いおこしてみよう。もしできるなら。火曜日の日の出のとき、ニューヨーク市がいつも通りだったことを思い出してみよう、9月初旬の美しい夜明けだったことを。・・・数え切れない習慣や手順が全部いつも通り街では進んでいて、壊れていなかった。無邪気ともいっていいやり方でみんなが動いていた。
 それらすべては、午前10時半までに失せてしまった。マンハッタン南地区は、ポンペイと同じ灰の殻になってしまった。・・・アメリカ人全部にとって考えられないようなことが現実になった。
 ジョージ.W.ブッシュは、この火曜日をわれわれは決して忘れないだろう、といった。それは、本当に、歴史の分かれ目になる瞬間だった。これ「以前」と「以後」に分けて世界を考えることになるだろう。

 その次には、乗客の乗った旅客機がミサイルになった驚きや、その乗客たち、そしてビルの崩壊とともに犠牲になった人たちのことが、繰り返し放映される崩壊するビルの映像から、想像できないと悼んだあと、また次のように続く。

 自分の国が戦争状態にあり、自分らが攻撃を受けていることを突然知った市民たちが、それ以前の生活がどうであったかを思い出せるかどうか、そんなことを一度でも想像したことがあるだろうか。だが、今や、われわれがそれなのだ。空には煙の柱と砂ぼこりが舞い、通りは空の輪郭だったビルが粉々になった瓦礫で雪のように埋まっている。そこから火曜日の夜明けを思い出してみるとき、すべては変わったと、私たちは理解する。

 あのビルが攻撃を受け、崩壊するなど考えもしなかっただけに、崩れ落ちるビルの映像を目の当たりにしたショックは大きかった。

 世界貿易センターは市内で目立つという点では際だっていた。しかし、それはまたきわめて普通の場所でもあった。・・・ しかし今や誰もが知るとおり、それは空からの攻撃に対して、衝撃的なほど無防備だったのだ。唯一の防御策といったら、空からの攻撃をしようと思う人間などいるはずがないし、それをやってのけるなんて考えられないという、おめでたい信念だけだったのだ。

 このテロの背景にテロリストたちのアメリカに対する憎しみがあることを指摘する。それが、こんな形になるとは思いもよらなかったが。

 ニュース解説者は、テロリストたちがどれほどの規模でこの計画を練っていたかを論じている。しかしそれ以上に大事なのは、これを実行するのに必要だった憎しみの深さを考えてみることである。その憎しみは通常の戦闘行為を超えているし、限度がなく、またいかなる交渉も成り立ち得ない。そんなにひどい憎しみの感情は、かえってテロリストたちの行為を誤らせ、不安定で非効率なものとし、成功しないだろうと仮想していた。しかしそれは歴史の分岐点の向こう側にわれわれがいた時期のことだった。

 そして結びのことばとしては、反撃ではなく、テロリストを含めた慰めを語っているようだ。それが、意外だったので、その後たびたびこのことばを思い出している。

 われわれは闘うべき相手国のない戦闘行為で被害を受けた。世界貿易センターの崩壊を伝えた同じテレビ画面上で、テロリストたちと思われるものたちが住んでいたところの人々の姿を映しだしている。彼らは普通の人たちで、彼らの生命は、私たちが失ったのと同じようにかけがえのないものだ。そのことで、とても重い気持ちにとらわれる。世界は慰めを必要としている。

 この考え方の延長線上で、アメリカの対応がとられていたら、世の中はまったく違ったものになっていたであろう。しかし、アメリカ人のうち単純な精神の持ち主たちに主導されて、悪は力で罰しなければならないと、戦争に入っていく。ニューヨークタイムズも、その方針を支持し、私たちもそのアメリカについて行ってしまったのだった。

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コメント

はじめまして。PPFVと申します。どうぞ宜しくお願いします。

とても興味深いエントリーでしたので、引用ならびにTBさせていただきました。
事件直後にこのような社説が書かれていたとは驚きでした。
またお邪魔したいと思います。

投稿: PPFV | 2004/09/17 21:07

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