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2004/09/10

韓国原子力の度重なるミスにあきれるが

 先日のウラン濃縮の報道に続いて、今度は韓国がプルトニウム抽出をやっていたことが明るみに出た。先日の件で、この報道はクールに受け止めた方が良いことをその背景の解説を含めて書いた。今回も同じ考えだが、西側民主主義国家の一員として、韓国がこのような問題への意識が低かったことは残念だ、とだけは追加しておこう。

 韓国は原子力に関しては、米国に首根っこを押さえられている。原子炉も核燃料も米国からの、あるいは米国の承認のもとでの輸入、あるいは日本企業との協力などに頼っている。アメリカとの原子力協定で、ウラン濃縮も再処理もしないことを約束している。2000年に行われたと報じられているウラン濃縮実験程度、すなわち実験室規模のもの、を短期に試行するするぐらいのことはできても、核兵器開発につながるような大規模開発は、IAEAに隠れて進めることなどとうていできない。米国との政治経済的なつながりを断つくらいの覚悟がなければできないことだ。それはするまい。

 今回明るみに出たプルトニウム抽出は、1982年のことだという。アメリカから輸入したトリガ型の研究炉(神奈川県にあった立教大学の原子炉と同型)の使用済み核燃料の一部をプルトニウム実験に使ったらしい。この原子炉はすでに使用を停止し、廃棄工事を進めていた1997年、IAEAの査察官が施設から採取した試料から微量のプルトニウムが検出された。現在の査察の精度は非常に高い。施設に残されたわずかの痕跡や、空気中のほこり、衣服への付着物などから、疑わしい試料を見つけることができる。

 この査察結果をめぐって、IAEAと韓国は協議中だったらしい。韓国は、最初はおそらく、そんなことはしていないと言い張ったのだろう。証拠を突きつけられ、経緯を調べ、渋々と認めようとしていたのだろう。報告書を提出し、IAEAの公式レポートに記載されて一件落着となる,その過程にあったのではないか。

 朝日新聞の伝えるところ(04/9/9夕刊)では、この実験が行われた当時、米政府はそのことに直ちに気づき、レーガン大統領からの要請で、全斗煥大統領はこの実験を中止させ、IAEAに報告されたという。これがほんとうなら、今回あらためて明るみに出てきたのも、実験が行われたことを韓国政府が知らなかったと主張するのもおかしい。どうもIAEAへは正式の報告ではなかったようだ。トリガ研究炉の使用済み燃料棒は、すべて米国に送り返されることになっていたはずで、その一部を再処理実験に回すとは考えにくい。米国が全世界に供給している研究炉用核燃料の管理が、必ずしも厳格に行われていない事実が明るみに出たともいえる。

 この件が、この時期に、米国国務省高官からリークされたのは何故だろうか。濃縮ウランのことがばれた直後ゆえ、韓国が核兵器開発の意図があったという方向で、国際的に糾弾されるようになることは十分に予測される。それにもかかわらずこのリークとすれば、米国の意図は何だろう。米国に少し距離を置きたがっている韓国現政権にお灸を据えようとしたのだろうか。六カ国協議の冷え切ったこの時期に、不利なカードは早めに切っておこうという計算が働いた可能性を朝日新聞(04/9/10)は指摘している。

 6カ国協議で北朝鮮に核開発を断念させようとしている現在、このことが報道されたことの影響は非常に大きい。北に核を放棄させるには、大きな障害になるだろう。韓国の実験が、核拡散防止条約違反ではあったことは明白である。事実を明らかにし、それが核兵器開発を目指したものではなかったし、一回限りで中止され、今後このような実験を行うことはないと、国際社会が認定しないことには、北の核を止めろとは要求できないことになる。日本世論は、韓国に核開発意図があったなどと騒ぐのではなく、冷静に対応する必要があるのではないか。

 米国も、早々に幕引きにかかったようである。核兵器計画の証拠なし 米が韓国実験で初見解(共同通信)

 韓国の「中央日報」が 社説で、韓国の誤りを認めた上で、

米・日のメディアにも自制を促したい。 漠然とした推測報道は、北朝鮮の核問題解決の助けにならないどころか、北東アジアを核武装競争に引き込む副作用すら生じる危険性を孕んでいる。 このような敏感な問題であればあるほど、事実に基づいた報道をおこなってメディアの度量を守るべきだ。

と書いている。そのことに怒っているブログも見かけるが、今回は度量を示した方が、日本にとって利益になる、と私は思う。

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コメント

結局、アクさんは「北の核を止めろと要求」すべきだと考えているのでしょうか?考えていないのでしょうか?
前回のエントリを読む限りでは現在の核不拡散体制そのものに疑問を呈して「このゲームのルールを変えることを考えるべき」などと書いていましたが、「北の核を止めろとは要求できないことになる」と困るという文脈(そう取りました)は、つまり当面はこのゲームを続けるべきだと言うことですよね。

投稿: 鼻つまむ | 2004/09/11 00:52

 北の核を止めさせるよう関係国が足並みを揃えて努力する必要があるでしょう。韓国のおかしな話は、こちら側の結束を乱したり、北にいい口実を与えることになりました。ますます難しくなりましたね。
 現在の核不拡散体制がどのようなものであるか、その中で日本と韓国がそれぞれどのような制約下にあるか、などを知らずに、韓国の実験を論じている人が多いようです。もともとおかしな不平等条約であることを指摘したかったのでした。しかし当面は、このゲームのルールを使っていくしかないでしょう。しかしそのルールは、良い子の国には厳しく適用されているのですが、悪漢の国(そんなルールは認めないという)をどうしようもないのが問題です。
 北は、しのごの言って、なかなか止めないでしょうね。アメリカも中国も、目の色を変えて取り組むほどの切迫感がないようです。見くびっているのでしょうか。

投稿: アク | 2004/09/11 09:40

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