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2004/09/24

良い労使交渉だった

 最近は労働組合の存在感が薄れている。ストもめったにない。そんな中で、労働問題から遠いところにあったプロ野球で、典型的な労使紛争が起き、労働者側の選手会が良く闘って(古田の指揮ぶり見事)、経営者側の譲歩を勝ち取った。久しぶりに労働組合の存在価値を明らかにしてくれた。「プロ野球選手がストをするなどもってのほか」との声もあったが、その中でストを敢行したのは良かった。ねばり強い交渉をしたあげく、最後の手段としてストに打って出ざるをえなかった選手たちの判断を、大部分の人は理解した。「ストをやるならやってみろ」という強硬論に引きずられた使用者側も、国民世論がどこにあるかを知り、妥結の道を求めた。単に妥結だけではなく、プロ球界を再生させようとの機運が、労使両者に出てきた。ストをやってこそ開けた道である。

 そんな中で読売新聞は、球団側の肩を持って論陣を張った。ここ1週間に3回も、社説でこの問題を取り上げ、選手会側を非難し続けた。球団側が妥協し選手会側に歩み寄った今日、これで4回目になる社説で方向転換して、再生のために前向きの議論を、といいだした。完全に流れを読み損ない、みっともない主張を垂れ流した。以下に主な部分を引用してみよう。()内は私のコメントである。

「ファン裏切る“億万長者”のスト」(04/9/18)
試合を楽しみにしていたファンへの裏切り行為である。(本当に裏切ったのは誰だったか、みんな知っている)
実現が難しいとみると、今度は新規球団の来季からの参入に固執した。経営側も、そこまでは譲れなかった。(本当は譲っていいという球団が大多数だった。それをさせなかったのは誰なのだろう)
コミッショナーが、最終局面で出した調停案も、結果的に選手会に踏みにじられた。
野球界が今後、「労使対決」のイメージに染まってしまうことを恐れる。

 この日の読売社説は、早版の表現を改変している。現在ネットにあり、私が引用したのは、改変後のものである。早版のオリジナルの一部の表現は、つげちゃんのNEW気ま日記で読むことができる。なおこのブログでは、4回にわたり各社の社説を読み比べている。


「何が選手たちの真の望みなのか」(04/9/19)
不毛なストに突入した。・・・週末の熱戦に水を差されてしまった。
「かたくなだ」として、ストの責任を経営側に転嫁する声がある。そうだろうか。(かたくなだったのは、一部の経営者側だった)
「二〇〇五年」の挿入にこだわる選手会の弁護士と一握りの選手によって、議論は振り出しに戻った。(それがなかったら、一リーグへと流れていただろう)
試合を拒む選手の背中など、子供たちに見せたくないのだ。(子供たちも真は選手側にあり、ストという手段が正しい場合もあることを学んだのではないか)

「球界の将来築く『着地点』を探れ」(04/9/20)
争点は、ほぼ絞られている。選手会側が求めるように、新規球団の参入を「来季」と特定するか、経営側が主張する「それ以降」とするか、である。
(コミッショナーの)根来氏は、新規球団参入については、きちんとした審査の仕組み、ルールを確立することが先決で、事務的にも来季からは難しい、との見解を示している。(まったく役割を果たさなかった根来コミッショナーの案に、この段階でもこだわるというとんちんかんな主張)
ストはだれにとってもマイナスでしかないことは、この二日間で、はっきりした。あとは着地点を探る作業だ。今度こそ、スト中止の決着を望みたい。(少し論調が変わってきた。世論を読み損なった社説の着地点を探っているようだ)

「プロ野球再生に前向きの論議を」(04/9/24)
残念なのは、選手会も経営側も、それぞれプロ野球の将来を真剣に考えているのに、理解し合えなかったことだ。(やっと選手会も正しい主張をしていたことを認めている)
NPBに、自分たちの主張を正しく選手たちに理解してもらい、ファンにもアピールする努力が不足していた感は否めない。それが「かたくなだ」といった批判を浴びる結果となり、最後は譲歩する形で妥結に至った。(球団側とともに読売の自己反省か)
今回の労使交渉は、球界関係者やファンだけでなく、ふだん野球にあまり関心を示さない人たちの注目も集めた。プロ野球「再生」のためには、選手と経営側の“対決”ムードを払拭(ふっしょく)し、前向きな議論に転換する必要がある。(読売新聞は、1週前の「不毛」発言を反省すべき)

「経営者側にとって、ファンの声、世論の力をはじめて知った3ヶ月ではなかったか」という書き出しで、朝日新聞の西村欣也編集委員は次のように論じている(04/9/24、スポーツ欄「チェンジ」コラム)

 (前略)
選手会を支持する世論はさらに、予想以上の高まりをみせた。ストに追い込んだようにさえ見えた経営者側は、ようやく誤算に気がついたのだろう。
 選手会の要求をほぼ飲み込む形で、23日労使交渉は妥結した。
(中略)
 この選手会の戦いは、球界を超えて、閉塞感に覆われた社会にも、勇気を与えたのではないだろうか。「是は是、非は非」と言い続ける。けっしてあきらめない。声を上げ、行動する。一人一人の小さな声が、やがてうねりとなって大きな力となる。世論を顧みない一部の勢力が、その声に包囲された。
 選手会と世論がスクラムを組んだ3ヶ月の戦いは、社会を変えていくヒントになるかもしれない。

 妥結内容には、まだ今後に待つ事項が多い。しかし球団側のおおかたも選手会と同じ向きに向き変えたようだ。今後の前向きの進展に期待したい。

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