« Blogoshpereについて追記 | トップページ | オオカミは、いるだけで効果がある »

2004/09/27

日本を拠点とする米軍再編の動き

 米軍の再編問題に注目している。日本に駐在する米軍が、日米安保の範囲を超えて、世界規模の重要戦略拠点になりかねない。国際紛争に軍事力で関与しないはずの日本が、軍事力をもって世界ににらみをきかせる米軍の拠点になるというのは、じつにおかしなことだ。

 この問題は、韓国での米軍兵力を削減するという報道がなされたころから、関連して日本で何が起きるのか、関心を持ってきた。驚かされたのは、04/9/22に朝日新聞がトップ記事で伝えた 日本拠点、極東超え部隊指揮 米軍再編で米政府が計画である。日本駐在の米軍を中東やバルカン半島までにらむ「戦力展開拠点」とするとか、そのために現在米国にある陸軍第1軍団司令部を日本に移すというのである。

 記事を引用しよう。

 米軍再編をめぐり米政府が、ワシントン州の陸軍第1軍団司令部を日本に移すなど陸海空軍と海兵隊の司令部を日本に集める構想について、中東、中央アジアなどにも展開する統合部隊の指揮機能をもたせるための計画であると、外務省などに説明していることが分かった。日米安保条約は、米軍の在日基地を使用した活動範囲を極東までと定めており、日本政府内では条約との整合性を説明するのが難しいとして、計画の受け入れに慎重論が出ている。

 米国の構想の要点は、こういうことらしい。

米政府は米軍再編について(1)アフリカやバルカン半島から中東を通って東南アジアに至る広範な「不安定の弧」が、テロや紛争など新たな脅威の多発地帯であるにもかかわらず、米軍配備の薄い地域と分析(2)冷戦時代の軍の編成を抜本的に見直し、テロなどの新しい「非対称の脅威」に柔軟に対応する(3)海外の米軍基地について「戦力展開拠点」(PPH)を筆頭に四つのレベルに格付けする――と説明している。日本をこの最も重要なPPHの一つに位置づけている。

 アフリカから中東、バルカン、さらには東南アジア(インドネシアやフィリピンを含むのだろう)をつなぐと、地球儀上に弓状の地帯が描かれる。それを「不安定の弧」と呼んでいる。新しい名称だ。その地域で起きる問題に機動的に対応するために、東に位置する拠点として日本を使おうという構想のようだ。具体的には、

陸軍第1軍団、第7艦隊(母港=神奈川・横須賀)、第5空軍(司令部=東京・横田)、第3海兵遠征軍(同=沖縄)の司令部に対し、事態に即して編成される小規模な統合部隊を指揮する機能をもたせる。このため、陸軍第1軍団司令部を米国からキャンプ座間(神奈川県)に移す必要があるという。また、これまでの4軍それぞれの編成も機動的に展開できるように、小型化する。

 もしそんなことになったら、日本駐在の米軍の活動を日本の防衛や極東の安全と平和のために限定している日米安保条約の枠組みを明らかに超える。すでに実態としては、日本駐在米軍のインド洋や中東地域への出動が、事前協議なしに黙認されてきた。しかし今度は、公式の任務が安保を逸脱する司令部がくるとのである。いくら何でも放ってはおけないだろう。

 この問題については、アメリカ側がずっと以前から協議を呼びかけていたのだそうだ。それを受けた外務省が、日本の選挙に影響するからとか、なんとかかんとか言い逃れをして、返事を先延ばししてきた。それに対しアメリカ政府はひどくいらだっているらしい。その内幕をあからさまに書き、警鐘を鳴らしているのが、04/9/23朝日新聞、【日本@世界】船橋洋一米軍再編、日米同盟にも意味である。船橋が定期的にかいているコラムだが、今回はふだんの3倍、新聞の一面全部を使ったもので、力が入っている。

 米国側は、戦略環境の変化を分析し、同盟として対応するべき新たな課題にどのような抑止力、兵力構成、基地体制を構築するか、という同盟の「なぜ」と「いかに」の戦略課題を日本側とすりあわせようとした。
 しかし、日本側は当初「基地の地元の負担軽減」にしか関心がないように見えた。・・・。
 米側にとって最大の誤算は、"盟友"小泉首相率いる官邸が岩のように硬く、"同志"外務省が氷のように冷たかったことだった。

 船橋は、朝日の最近の変貌をになう現実主義者である。このアメリカの戦略変化に積極的に対応すべきだと主張しているようだ。「肝心なことは、同盟の「なぜ」と「いかに」を改めて明確にすることである。」として、中国あるいは朝鮮半島への日本としての戦略的対応をアメリカとすりあわせるいい機会だと主張し、及び腰の政府の尻をたたいている。この問題を他紙があまり取り上げていない中で目立つ姿勢である。

再編に向けての日米共同作業は、米軍基地一つ一つの役割と機能を日米が洗いざらい点検することを含む。額賀福志郎自民党政調会長が言うように、「戦後初めて日本が安保で米国に対等にモノが言える機会」には違いない。ただ、それはいや応なしに日本の防衛努力を一つ一つ点検する作業ともなる。再編の中で、日本は自国の防衛についてより大きな役割を果たすことを迫られるだろう。

 米国にとって日本の「戦略的価値」は高まりつつある。それを、テロの心配の少ない在日米軍基地やイラクへの自衛隊派遣やミサイル防衛にとどめず、むしろ日本の構想力と外交力、言ってみれば「同盟力」によって高めていくべきだ。その同盟像の核心は、日本の役割の強化と自立、日米それぞれ足りないところを補い合う相互補完、同盟と相互強化の関係に立つアジアの地域安定の枠組みづくり、となるだろう。

 問題から逃げずに、この機会にアメリカに日本としての主張をぶつけるのがいい、との考え方は、当たっている。しかし、憲法・安保との整合性をアメリカ側に理解させながら、日本のアジアでのあり方とアメリカの戦略構想とをどのようにすり合わせることができるか。船橋のいっている「日本の構想力と外交力、言ってみれば「同盟力」」というあたりを、しっかり考えてみる必要があるのだろう。

 ところで、外務省の米側への反応は、予想通り単に消極的なだけであった。04/9/25の朝日新聞、米陸軍司令部「座間移転は困難」 日本側が米に伝達によると、

米軍再編問題をめぐり、日本政府が現時点での米側の構想に対する見解をまとめ、陸軍第1軍団司令部を米ワシントン州からキャンプ座間(神奈川県)へ移す案については、20日にワシントンで行われた日米の局長級会談で「政治的に受け入れは困難」との考えを公式に伝えていたことが分かった。協議での米側の反応は不明だが、第1軍団司令部の日本移転は米軍再編の柱の一つだけに、今後米側の反発も予想される。

「さらば外務省!」を書いて、外務省を飛び出した天木直人のブログの米軍再編をめぐる日米交渉が何故進まないのかで、彼は、

米国の要求はもうそのような誤魔化しでは対応できないところまで来ている。米国の要求に従って国民に了解を求めるか、国民の前にすべてを明らかにして国民の求める政策を米国に納得させるかのどちらかの選択を行わねばならない時に来ている。

と政府、外務省の及び腰を叱っている。

 アメリカは簡単には引っ込むまい。議論が十分になされないまま、米国に一方的に引きずられ、変な妥協でごまかされないよう、しっかり見守っていく必要があろう。

|

« Blogoshpereについて追記 | トップページ | オオカミは、いるだけで効果がある »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36654/1535382

この記事へのトラックバック一覧です: 日本を拠点とする米軍再編の動き:

« Blogoshpereについて追記 | トップページ | オオカミは、いるだけで効果がある »