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2004/09/30

石油生産はピークを超えつつある

 石油の量を一つが1000億バレルの巨大ドラム缶で計ることにすると、採掘可能な究極の埋蔵量はこのドラム缶で18本分となる。このうち8本分はもう使ってしまっていて、残りは10本しかない。10本の内訳は、現在知られている油田から汲み上げることができるのが、8.5本。今後発見される新油田に期待できるのが、1.5本である。そんな予測がなされたのが、1998年のこと。その後も4年で1本のペースで使っているから、現時点では9.5本を使い切り、残りは8.5本になっているはずである。

 石油に関する予測は、データもまちまちで、しかもいろいろな思惑に左右されるものらしい。特に業界の予測は利害絡みで信用できない。上に紹介した予測は、客観的データを積み上げた第3者の専門家によるもので、かなり信頼するに足りるようだ。彼ら(C,J,Campbell&J.H.Laherrere)の論文「安い石油がなくなる」を載せた日経サイエンス1998年6月号は、「しのびよ最後の石油危機」(日経サイエンスのHPから検索経由で書き出し部分を読める)との特集を組んでいて、その巻頭で

石油関連の膨大な統計資料を詳細に分析すると、石油生産は今後10年以内(1998年時点で書かれていることに注意)にピークを越え、その後は坂を下るように減産が進むと予測される。そうなれば石油価格は高騰し、世界景気は低迷、石油をめぐる政治的な緊張が起きるだろう。世界は知らないうちに絶壁の縁に近づいているのかもしれない。

と書かれていた。6年前に予測されたことが、今現実化しつつあるのではないか。

 石油価格が、NY商業取引所で、28日には1パレル50ドルをつけるなど高騰している(朝日04/9/28夕刊トップ、NY原油、初の50ドル 年初から5割の値上がり)。投機的な側面はその後修正されつつあるようだが、高値は続くだろう。

 この朝日の記事には、

イラク戦争で米国が優勢になった03年4月下旬から5月上旬には1バレル=25ドル台だったが、約1年5カ月で約2倍に達したことになる。

米国の景気回復や中国の経済成長に伴う需要増で、世界的な供給余力は乏しくなっているものの、専門家の間では「実際の需要と供給を見ると、30ドル台が妥当だ」(米石油アナリスト)との見方が強い。

とあり、現在の高騰は一時的で、それも投機的な動きに伴うものとしている。イラク戦争後の復興が遅れていること、ベネズエラでの政情不安、ナイジェリアでの内乱、中国の石油需要の増大など、いろいろな要因が積み重なって現在の価格高騰となった。中国の需要増以外は一時的な要因であるし、中国の価格押し上げ要因はまだそれほど大きくはないから、それらだけを見ると、かつての石油危機のあとと同様、今後石油価格が低落することも考えられる。

 70年代の石油危機を乗り越えて以降、まもなく石油は枯渇するといわれる一方では、新しい油田が次々に開発され、埋蔵量はいっこうに減らない。石油資源は当面無尽蔵との楽観的見方に浮かれてきた。大型のスポーツ多目的車(SUV)が売れ、ミネラルウォーターより安いガソリンは、文字通り湯水のように消費され続けた。

 しかし、石油は、ふだんわれわれが考えるほど無尽蔵ではない。有限な資源が抑制されることなく大量に消費され続けた結果、予測されたとおりに、生産にかげりが見え始め、そのことが今回の価格高騰の基礎的な要因になったと考えてみた方がいい。

 石油価格の変動には、一時的な変動要因と、長期的な要因とがある。一時的な要因を強調し、一過性だとする考えもあるが、長期的にどうなのか、この問題にはずぶの素人だが、その気になれば、手元にある資料程度でこの問題を考えることができる。1回ではすみそうにないので、何回かに分けて書いてみるつもりで、まず取り上げたのが、最初に引用した98年の予測論文である。

 石油の資源量と生産見通しについては、かずかずの予測がなされている。専門家の資料は当然あるだろうが、私がここで紹介するのは、石油開発の情報サービス会社の専門家が1998年に公表し、一般向けに解説記事に載せたもの(前記日経サイエンス誌)である。この論文の著者は、石油会社で探鉱地質学者として活躍した後、石油開発に関する世界最大手の情報サービス会社:ペトロコンサルタント社(ジュネーブ)で働いている。情報の信頼性の高さには定評があると著者紹介に書かれている。

 彼らの調査は詳細にわたっているが、最終結果のまとめのグラフが、これである。ブログの画面は縮小表示されているので、画面をクリックして拡大したものをごらんいただきたい。

040930OilProduction.jpg

 細い曲線が予測値である。予測通りとすれば、2004年の今ピークを超えつつあることになる。生産量がピークとなるというのは、どの産油国もさらに増産するゆとりがなくなるということだ。その傾向は出ているらしい。高騰を抑えるため、OPEC諸国は増産を決めたのだが、サウジをはじめとして増産できずにいる。サウジの油田はすでに疲弊し始めたとの報道もある。生産余力を持ってこそ、価格調整ができる。その余力を持てず、精一杯アップアップしながら最大限の生産をしているのが現状のようだ。さて、産油国に生産余力がなくなり、生産量がピークを打ったことが共通認識となると、大変な事態が起きる。供給が需要に追いつかないのだから、価格はどんどん高騰する。予測によっては80ドルから100ドルになるとの声もある。経済の大混乱が始まる。早めに手を打っておかなければならない。何ができるのだろう。

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コメント

アクエリアン様

トラックバック、並びに詳細且つ綿密なデータを
大変ありがとうございました。
とても勉強になりました。m(_ _)m

御指摘の通り、巷では産業成長著しい中国の
需要急拡大による品薄を根拠に上げる向きを多い
のも事実です。

ですが..ロイターの記事

欧州委員会のデパラシオ副委員長(運輸、エネルギー担当)
は28日、現在の原油上昇圧力は11月の米大統領選挙以降
に弱まるとの見方を示した。

の一節を読んだ途端、頭のボルトが一本飛んでしまい
過激な暴言を吐いてしまった次第です。。(~~;)

更に...

今でも、米国政府と米英のメジャー(巨大石油資本)による
価格操作も大きな要因のひとつであると信じて疑いません。

何故ならば、イラク戦争において米国との協調を拒否し
批難した露・仏でさえ米英連合がイラクを制圧した時点で
原油利権闘争に敗北した落胆ぶりは尋常ではなかったから
です。

それはともかく..

今後とも論理的コンセプトに裏打ちされた記事を
楽しみにしております。

どうぞ、よろしくお願い致します♪


投稿: すほ~い☆ | 2004/09/30 22:34

すぽーい☆さん、ようこそお越しくださいました。
原油の価格は、お書きになったような一時的な要因がとりあえず目につき、現実の政治やビジネスもそれで踊っているのですが、その根底に、有限な資源がどんどん費消されているという事実があることを、この機会に考えておきたいと、書いてみたのです。
イラク戦争の裏に石油があり、大統領選でどう動くかなど、ご指摘の問題は、当面重要であるのはもちろんです。

投稿: アク | 2004/10/01 09:19

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