« 歴史家に評価されなくていいとブッシュ | トップページ | ロシアがチェチェンでやっていること »

2004/09/08

台風が熱帯の暑い空気を持ってくるから?

 気象情報で、気象予報士が「台風が熱帯の暑い空気を持ってきたため、明日は暑いでしょう」という。先日も同じようなことを言った予報士がいた。ほんとうにそうなのか。台風18号が通り過ぎた今日、どこも暑い。特に関東地方は暑い。水戸では35度になるという。台風ははるか北の北海道を通過しつつある。この関東地方の暑さを、台風が持ってきた熱帯の空気で説明するのは無理ではないか。北にある台風に向かって、日本のすぐ南にある太平洋高気圧から南風が吹き込むために暑い、と説明するのが順当なところだろう。

 台風が熱帯の暑い空気を持ってくるから、というのは素人わかりするが、この場合は間違ったいい方だ。科学的なことを分かりやすくするために、ときどきそのような表現が使われる。高い木の葉っぱを食べるためにキリンの首は長くなった、というような説明もその類だ。分かりにくくても正確な表現を望みたい。

 台風は熱帯の暑い空気を持ってくるか。気になったので考えてみた。

 熱帯で発生した台風が大きな渦巻きとなって、そのまま移動してくるとしても、まず空気そのものは比熱が小さく、熱を運ぶ役割をほとんど持たない。台風は、暖められた空気が密度が低く(軽く)なることで、上空へ登っていき、周りの気圧の高い空気がそこへ吹き込む、ということの繰り返しで発生する。発生した場所の空気がそのまま中心部に残るなどということはなく、絶えず入れ替わっている。台風が熱帯の暑い空気を持ってくる、というは正確な表現ではない。

 台風は、熱帯の熱(エネルギー)を運んでくるが、その役割を果たすのは、水蒸気である。水蒸気は空気に比べてはるかに多くの熱を含むことができる(比熱が高い)。熱帯の海は、強い太陽に照らされて暖まり、蒸発して、水蒸気を大量に発生する。これが暖かい空気とともに上昇する。高いところにある冷たい空気に触れると雲になる。水蒸気が微細な水滴(雲)になるとき凝結熱を放出する(水を蒸気にするときに気化熱が必要になるのと逆のプロセス)。それが空気を暖めるため、台風の中心部(いわゆる眼の部分)の高度の高いところは地表に比べて温度が高い。

 熱帯で台風が持った熱エネルギーは、場所を移動する途中に雨と風として消費される。しかし、移動する台風の下に暖かい海があると、水蒸気はどんどん供給され、台風のもつエネルギーは維持されたり、大きくなったりする。だから日本にやってきたときに持っている熱エネルギーは、熱帯で獲得したままのエネルギーというより、途中で補給されたエネルギーを持ってくるといったほうが正確だろう。

 台風の持ってきたエネルギーは雲を作り続け、雨となって降り、空気の運動エネルギー(風)となって、消耗される。雨は熱エネルギーを含み、地表を暖める。確かに台風の持ってきたエネルギーは残るが、それは暖かい空気として持ってきたわけではない。凝縮熱は空気を暖めるが,それは高層の空気のことで、地表の空気が暖められるのではない。暖かい空気は、台風に向けて吹き込んだ南の空気なのだ。熱帯から台風が運んできた空気ではない。

 こんな過程を考えると、予報士のいう「熱帯の暑い空気を持ってくるから、暑い」は、事実を単純化し過ぎていて、間違ったイメージを与える表現だと思う。あまりムキになっていうほどのことではないが、今日はちょっと科学のお勉強。

|

« 歴史家に評価されなくていいとブッシュ | トップページ | ロシアがチェチェンでやっていること »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36654/1387233

この記事へのトラックバック一覧です: 台風が熱帯の暑い空気を持ってくるから?:

« 歴史家に評価されなくていいとブッシュ | トップページ | ロシアがチェチェンでやっていること »