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2004/10/09

再処理優位へと舵取り:原子力長計策定

 日本の原子力発電の路線が、既定方針通り、再処理→プルトニウム利用(当面プルサーマル、いずれ高速増殖炉)という行き方でいいか。原子力委員会での検討作業が進んできた。つい先日まで、新聞報道を通じてわれわれに聞こえてきていたのは、再処理をする場合のコストが検討されている、ということだった。その結論は10/5に報じられた。それについては核燃サイクル路線は割高だと確認されるに書いたばかりだ。ところが、それから3日。今度は「核燃再処理優位の評価」(朝日新聞04/10/8)との新聞報道がでた。予想していたことではあったが、あまりにも早い反転に驚く。

 すでにいくつかのエントリで書いてきたが、原子力委員会では、使用済み核燃料をどうするかについて、(1)全量再処理(2)部分再処理(3)全量直接処分(4)当面は中間貯蔵、の四つのシナリオについて比較してきた。これまでコストだけが注目されてきたが、じつは10の項目について評価が行われてきたらしい。検討を行っている新計画策定会議のホームページ で、04/10/7の会議資料を見ることができる(原子力委員会の資料の公開度は非常に良い。)。それに目を通して見ると、経済性だけではなく、安全性は当然として、エネルギー供給の安定性、技術的問題、核不拡散の面からの問題、路線をもし変えるとしたときの問題などが検討されたようだ。特にこれらの評価視点を総合的に判断すべきことが強調されている。

 全量再処理の処理費用は、直接処分の1.5〜1.8倍かかるが、路線を変えるとこれまでの投資が無駄になる、青森県と国・電力との信頼関係が壊れる、再処理技術が継承されなくなるなどを理由に、既定路線維持が選択されるようだ。エネルギー・セキュリティーは、そもそも日本が原子力を始めたときから重視されてきた点だ。石油供給の先行き、ウラン資源の見通し、地球温暖化に伴う化石燃料の使用抑制など、いろいろな理由を挙げて、プルトニウムを使う路線を相変わらず選択することにしている。

 エネルギーの安定供給を確保することは、国にとって非常に重要だが、それをすぐにプルトニウム利用に結びつけて考えるのは、原子力の人の我田引水だろう。当面現行の原子力発電規模を維持することは必要だが、将来のエネルギー確保は、もっと総合的に多様な方策が考えられる。

 原子力の路線を見直し、場合によっては変更する可能性を、今回は若干期待させるものがあった。策定会議には、異なる意見も出たらしい。しかし原子力を取り巻く状況が既定路線をがんじがらめにしているようだ。たとえば、上記朝日新聞のネット版には

直接処分路線を選択した場合は、使用済み核燃料を再処理工場で現在受け入れている青森県の協力が得にくい。同県の三村申吾知事は9月に策定会議へ出席し、「受け入れはあくまで全量再処理が前提」とくぎをさしている。

というようなことがあったと書いている。再処理工場稼働で、最も不安を抱える地元が、他方では、再処理をフル稼働でやってほしいといっている。原子力の陰の面が垣間見える。

 コスト評価は何のためだったのだろう。この程度の負担を国民に納得させながら、これまでの路線は毫も変えないことにするプロセスに過ぎなかったのだろうか。

 全量再処理となると、様々な問題が残る。再処理して蓄積するプルトニウムをどうするのか。プルサーマルを全面的に展開するのだろう。全国の各地にある原発でプルトニウムが使われる。プルサーマルで使った燃料のための新しい再処理工場が必要になる。労する割にリターンの少ない再処理だ。全量再処理となると、それだけではつじつまが合わない。ゆくゆく高速増殖炉を使うという選択でもある。もんじゅの事故などがあって、電力は、ナトリウム冷却という危なっかしい原子炉を実用に使う気はなくなったと見る。それだのに電力が、この全量再処理の路線に乗るのはどうしたことか。問題先送りで、とりあえずは既定路線を維持しておこうという、これまで原子力路線を誤らせてきた判断を、またもや繰り返そうとしている。ますます泥沼に入りこまなければいいが。

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