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2004/11/14

デジタル化の中で、アマチュア写真家たちは悩んでいる

 ベテランのアマチュア写真家たちの会合があった。フイルムを使うカメラを使いこなしてきた彼らは、デジタルへ向かう流れの中で、変化に順応しようか、断固としてフィルムに留まろうか、対応に苦慮している様子だった。

 カメラ・メーカーは自社カメラの愛好者を結集してクラブをつくっている。その下には地区別の支部が組織されている。不肖私めも、アマチュアカメラマンの端くれとして、某N社のクラブに属し、デジタルを名乗る支部のメンバーとなっている。先日このクラブの支部長連絡会なるものが開かれた。私は支部長の代理として半日の会合に出てみた。グループ・ディスカッションやパーティーの場での会話から、デジタルへの根強い抵抗を感じた。

 写真の世界はこの10年、特にここ数年、フイルムからデジタルへの大変革が進んでいる。デジタル・カメラ(デジカメ)は急速に普及している。N社の役員が挨拶の中でいっていたが、日本のカメラメーカーのデジカメ出荷数は、昨年が5000万台で、今年は6500万台になるだろうという。日本のメーカーが世界のマーケットをほとんど独占しているから、これは全世界への供給台数だが、すごい数である。大部分はコンパクトとかコンシューマー用といわれる小型の、価格にして1万円台から数万円程度のものだ。一方、報道やコマーシャルフォトの分野で働くプロのカメラマンや、写真趣味にかなり入れ込んでいるアマチュア向けの、高級一眼レフデジカメもけっこう売れている。ここ1,2年、100万台で推移してしてきていたものが、デジタル一眼レフ普及機の登場により、今年は250万台になる勢いという。

 デジタル写真は、すごい勢いで普及している。携帯電話がデジカメ撮影機能をつけたことが、輪をかけている。街では気軽に携帯を構えてシャッターを切っている人々の姿を目にする。「デジタルカメラの登場で、シャッターを切る回数がフィルムカメラの時代の5倍になった」と、先日朝日新聞に数回連載された「デジタルカメラ最前線」の記事にあった。

 デジカメは、主に記録としての写真(たとえば家族写真)のために使われている。注文でも自前でも、簡単プリントが普及するとともに、この分野ではフィルムカメラの出番はどんどん減退している。しかし、そのような使い方と一線を画して、写真を「作品」として作ることに熱を上げている人々がいる。プロは別として、このような人を「ハイ・アマチュア」という。何十万もするカメラやレンズを所有し、月に何百駒という写真を撮り、現像やプリントに年に数万円から百万円ものお金を使う人、これがハイアマチュアである。

 私が出た支部長連絡会に集まったのは、このようなハイ・アマチュアを組織し、それぞれの地域で、撮影会や、作品を持ち寄っての月例会、さらにはグループ展や個展などのグループ活動を主導しているリーダーたちである。この人たちが、昨今のデジタル化の動向にどう立ち向かっているのか。はじめてこの種の会合に参加する私の興味はそこにあった。

 5,60人が参加し、いくつかのグループに分かれてディスカッションがあった。クラブの幹事を務めるプロ写真家たちがまとめ役として加わり、全体会合で報告者となった。夜には懇親会があり、そこでも多くの人と意見交換できた。主催者のクラブ事務局が、デジタル化にどう対応するかをテーマとするように積極的に仕掛けた。

 予想通りだったが、ベテラン・アマチュア写真家たちは、デジタルへの対応に悩んでいる。長くフィルムの時代に写真に親しみ、フィルムカメラに馴染み、レンズの選び方やフィルムの特性に精通し、現像からプリント作りまで高いレベルでやってきた人々である。これまでの技術がほとんど通用しないデジタルが、怒濤の勢いで入ってきている。どうしたものか。それぞれの支部内でも盛んに意見交換がされているようだ。

 デジタルはまだまだ作品作りにふさわしいレベルまで達していないと、デジタル導入を拒否する人。デジタルはパソコン技術とつながっている。それを使いこなさずには、本格的なデジタル写真は成り立たない。今さらパソコンを覚えなければならないなんて、できないとあきらめる人。暗室での現像や引き伸ばしに馴染んできた人にとって、パソコンに向かってデジタル画像処理をすることには著しい違和感がある。しかし時代の趨勢には逆らえないと、副次的にデジタルを手がけはじめたが、本格的な作品作りには、やはりフィルムでなければという人。まちまちであるが、総体的にはデジタルに対する拒否感がハイ・アマチュアには強いと見えた。

 話を聞きながら、いくつかの問題を感じた。まずはデジタルの技術的なバリア。アマチュア写真家は、これまでのカメラ技術には通じていても、それとは異質なデジタルの技術に入って行くには、かなり高い障壁を感じている。概していえば、アマチュア写真家は高齢化しつつある。若い人たちは抵抗感なくデジタルに入っていくが、既成の支部に集まっている会員は、確実に高齢化しつつある。クラブのコンテストなどには、若い人がどしどし参入し、デジタルカメラで撮ったデジタルプリントによる投稿が増えているという。クラブの活動は、デジタルへ向かいつつあるが、傘下の支部に集まるアマチュア写真家は、その動きから取り残されつつあるようにみえる。支部の多くは若い人たちに見放されるのではないか。そんな危惧さえ感じた。

 フィルム写真には、デジタルではできない「何か」があるという信念を持っている人が多い。その多くは誤解であるが、最後に残るものがある。それはフィルムカメラという道具そのものに対する愛好であったり、カメラの操作やシャッター音などへの愛着であったりする。特定のリバーサル・フィルムの醸し出す色合いにこだわる人も多い。

 写真を記録する媒体としてのフィルムの優位は、ほとんどなくなった。フィルム愛好者がよりたのむ最後の砦であったが、技術はそれをどしどしなくしてしまった。そのことに目をつぶっているアマチュア写真家も多い。プロの写真家たちが、ほとんどデジタルに移行していることで、それは実証されているのだが。解像度(写した写真の精密さ)はフィルムを超えたといわれる。階調性(明るい部分や暗い部分の明暗の程度をどれだけ写せるか)や色域(再現できる色の範囲)もどんどん良くなってきていて、いまではほとんど問題はなくなりつつある。特定のフィルム(エクタクロームとかフジのベルビアなど)がいいというのは、むしろそのフィルムが作る独特の色合いの歪みを好んでいるということだ。それすらデジタルは作り出すことだろう。

 撮影時の心の持ちようが、著しく違うことをいう人もいる。撮影時に最適の条件設定をして、シャッターを切る。一写入魂である。あとはカメラとフィルムに任せて、出来上がりを楽しむ。デジタルでは、そんなに魂をこめていないのではないか、とフイルム愛好者はいう。デジタルでは、たくさん撮れる。駄目なら消せる。あとからの処理で補える。撮り方が安易にならないか。その批判は当たっている面はある。それが時代の変化というものだともいえる。精神主義は技術の進歩によって変化を迫られる。しかし良い写真を撮るという本質のところでは、どんな道具を使おうと、変わらないのではないか、ともいえる。

 デジタルを標榜する支部の代表者として、この会合に出席した私は、多分に違和感を感じながら、上に書いたような感想を持った。フィルムを愛するアマチュア写真家たちは生き残ることだろう。しかしデジタルで良い写真を撮るアマチュアが増えて行く中で、彼らの砦は守られるだろうか。クラブの主催者であるN社は、最近、製品の最高位にあるフィルム一眼レフをモデルチェンジした。フィルムにこだわるハイ・アマチュアの存続を信じているようである。

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コメント

最近、ニコンF6というフィルムカメラを購入したものです。
アクさんのご意見興味深く拝見しました。

私は他にもいくつかフィルムカメラを所有しています。
が、実際には現在趣味の撮影はほとんどデジタルです。

ところで、医療用の画像診断においてはすでにデジタルは
アナログ(フィルム)と比較して問題ないと思われます。
(それ以前に、CTやMRIやPETなどはもともとデジタル信号
を再構築したものですからデジタルしかありません。)
また、消化管内視鏡などはとっくにアナログを超えています。

135サイズのフィルムカメラとフィルムについては、残念です
が現在愛用しているご高齢の方々(つまりNクラブの方々の大
部分)が鬼籍に入られたあとはその存在価値を失うであろうと
思いま?

投稿: drhasu | 2004/11/14 20:24

ご意見に同感します。本年1月に小生HPで記載したコメントを報告させていただきます。

デジタル時代の写真とカメラ”
<2004/1/1作成>
■■■ デジタルカメラは、フィルムカメラと同じ“撮る道具”

  カメラ専門雑誌の新年号を飾る話題としては、「デジタル写真、デジタルカメラはどうなのか?」が欠かせないようです。昨年のヒット商品としては、「HDD内蔵DVDレコーダー」と「デジタルカメラ」がランクインしています。高機能で価格も実売15万円前後と手ごろなデジタル1眼レフカメラが各社からラインナップされ、いままで見送ってきたフィルムカメラ愛用者たちもようやく購入し始めた年となりました。

 “KEN's Office”では、1997年から6年間にわたり、「デジタル・ショット」と題して、デジタルカメラ5台を取り替えながら写真撮影を行ってきました。私は、40数年の写真歴ですが、最近6年前からフィルム・カメラで撮りに行くことは無くなり、それからついに“銀塩写真”に戻ることはありませんでした。

 こうした体験からも、最近のデジタルカメラ、特にデジタル1眼レフカメラは、以前のカメラ感覚で問題なく写真撮影に使えるようになってきたと思います。受光素子、電池、プリンタなどの技術革新の結果、「カメラらしいデジカメ」が出現し、撮影時の操作性、写真の解像力や色彩なども、鑑賞に充分堪えられるレベルにあると断言できます。参考: http://www.ne.jp/asahi/office/ken/photo_kokoro_mukausaki.htm

 フィルムカメラもデジタルカメラも、写真を撮るツールとして、「シャッターチャンスに強く、間違いなく写る」基本機能が満たされている製品が最高のカメラになる点では変わりはないのです。
 メーカー各社は、ただ一点、フィルムの代わりに受光素子(CCD、CMOSなど)で写真画像を記録する関連部分だけが、従来の機構に変わる部分、主として画像処理の電子回路・部品開発に傾注してきています。
 

■■■ フィルムを受像素子に変える挑戦が続く

 デジタルカメラ出現の前に、フィルムカメラの露出制御に電子回路が入り始め、AF(オートフォーカス)を加えながらカメラシステムに革新が続き、機械とのハイブリット式カメラが増加して来ていました。
 やがて、インターネットの普及、IT時代と併行するように、「フィルムを受光素子に置き換えようという試み」がデジタルカメラ開発へと発展してきました。

 それからは、ご存知のとおり、より高い解像度を求めて30万画素、100万画素、200万画素、400万画素、600万画素、1000万画素へと、急速に“デジカメ”の技術革新が続き、普及台数と比例するように、価格も80万円、60万円、30万円、20万円、15万円と低落してゆき、今ようやく買いやすい価格水準に入ってきたようです。


■■■ デジタルカメラ(デジタル写真)の決定的違いを知っておく

 ① デジタル画像なので、劣化しない、転送できる、コピーできる。
 ② 撮った直後に、画像確認ができる。(内蔵液晶、パソコンなどで)
 ③ 画像記録メディア(CF,SM,マイクロHDDなど)は、転送・消去することで繰り返し再使用できる。
 ④ デジタルカメラごとに、“フィルムと現像所”を内蔵している。
 ⑤ パソコン専用ソフトとフォトプリンターで、“現像”、“引き伸ばし”、“焼付け”、“定着”ができる。
 ⑥ 画像の保存は、HDD、MD、CD-R、DVD-Rなどに自在、無限にできる。
 
 デジタルカメラは、単に撮影するだけではなく、メーカー別、機種別に異なる“フィルム種類と現像所”も一緒に持った「画像処理システム全体」を購入することになる点に注意したいですね。
 また、質感や色彩が正しい=良い写真を作るためには、プリンタ性能、インクや用紙の選定、パソコンディスプレイの精度なども大切な選択肢になります。


■■■ デジタルカメラ撮影の楽しみ方

  写真を撮る道具として、自分が信頼できるデジタル・カメラを所有できたら、次には、ぜひ“一粒で三度おいしい”デジタル写真処理を味わっていただきたいと思います。①撮影する、②編集する、③プリント(引伸ばし)する段階で、自分が撮った画像を三度じっくり味わえるのです。

 “写真を撮る”なら、以下の注意をして撮影に臨むようにしたいですね。・・・自戒を込めて!(笑)

 ① 無駄に撮り過ぎない。(フィルム代が不要だと思い、集中力がないまま気楽に撮らない。)
    ・・・ 「写真を上手く撮るようになるには、集中して、たくさん撮ることだ」

 ② 被写体選びより、予め撮りたいテーマ(思い)を決めて出かけ、カメラを向けよう。
    ・・・ 「ついでに撮る」のは記念写真、「探して撮る」のが自分の写真

 ③ 今度の撮影には、交換レンズ、予備の記録メディア、電池、三脚、ストロボなど抜かりはないか?
    ・・・ あれを持ってくれば良かった!と、チャンスを逃さない準備

投稿: “KEN's Office” 大澤 憲 | 2004/11/14 20:53

drhasuさん、お読みいただいてありがとうございます。カメラ・マニアには、時代の趨勢などお構いなしに、道具としてのカメラを可愛がってしまう性癖があるようで、F6を出したN社もそのあたりにおもねっているように思えます。デジタルを追求して開発された技術要素を、フィルムカメラに還元してみた、というような面もあるようですね。

投稿: アク | 2004/11/15 07:04

Ken's Office 大澤 憲 さん、詳細なデジカメ論をご紹介いただいてありがとうございました。特に「デジタルカメラ撮影の楽しみ方」に書かれた「撮影に臨む注意点」は、適切なご指摘だと読みました。

投稿: アク | 2004/11/15 07:11

アクエリアンさんいつもお世話になっています。
 私は丁度デジタルと銀塩写真の丁度間に位置する世代かもしれません。この過渡期を見れる事は面白いなと思います。全く銀塩を否定するものでもないですし、肯定するものでもないのですが、今回発売されたF6を見ると昔の「戦艦大和」を思い浮かべるのは私だけでしょうか。戦艦大和は時代が大艦巨砲主義から航空機へ移り変わる中で設計、建造されました。戦艦大和は能力を十分に発揮する場を与えられることなく沖縄沖に沈みました。F6には活躍の場が与えられることを望みます。
ではまた。

投稿: Aurora A | 2004/11/16 09:50

Aurora A さん、どうも。技術史的にみるとそうなのでしょうね。レコード→CD→DVDその他というような。でもいまだに真空管のアンプを可愛がって、これでなければ、という人もいますから、その程度には残るのでしょうね。そちらではご覧になれないでしょうが、「アサヒカメラ」という雑誌では、「ニコンの大英断」などと持ち上げているプロもいます。こういう趣向は、日本人的なのかもしれません。欧米人のほうが合理的に考えますからね。ライカなども日本人マニアのおかげでもっているのではないでしょうか。

投稿: アク | 2004/11/16 21:33

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