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2004/12/29

稲むらの火

 インド洋の巨大津波の被害が報じられるにつけ、思い出すのは「稲むらの火」である。私たち世代(戦中に小学校教育を受けた世代)は、みな幼な心に覚えている教材である。小学校の5年か6年の国語の教科書にあった。

 安政元年(1854)、安政の東海地震(M8.4)の際に、現在の和歌山県広川町で起こった実話にもとづき、小泉八雲が書き、それを書きあらためたものが、小学校の教科書に採用された(昭和12ー22)。

 広村の庄屋五兵衛は地震を感じたあと、家の庭に出て、下の村を見下ろす。五兵衛の屋敷は、高台にあった。村人たちは、豊年を祝う宵祭りの準備に興じている。その先の海に目をやって異常に気づいた。水が沖へと引いて、広い砂浜や岩が現れてきている。これは津波がやってくる。そう直感した五兵衛は、急いで村人に知らせようと、庭先に積んであった稲束に次々に火をつける。刈り取って干してある大事なものだが、今はそんなことをいっておれない。下の村では、「大変だ、庄屋さんの家が火事だ」とみなが駆け上がってくる。五兵衛は「火はそのままにしておいてよい、村中の人に来てもらえ」と、全員を高台によび集めるよう檄を飛ばす。全員の避難が確認された。そこへ大津波がやってくる。

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2004/12/24

年賀状の準備

 この季節になると、年賀状の準備と、宛名の印刷に忙しくなる。「筆まめ」の住所録をパソコン画面に表示し、訂正や追加をして、発送先を選ぶ。住所録にはおよそ400ほどの宛先がある。そこから年賀状を発送するのは200ほどだ。親しい友人、知人たち、あるいは指導を受けた恩師、もとの上司や同僚たちには、年一回のご挨拶は欠かせない。だが、出すか、出さないか、判断に迷う相手もある。

 以前何かのことでご縁ができ、年賀状を交換するようになった。その縁が実質的ではなくなっても、年賀状の交換だけは続いている場合がある。そろそろお終いにしようかと、こちらが出さないでおくと、先方から頂く。恐縮して返事を出したあと、こういう関係を大事にする方なのだと、次の年には忘れずに出す。すると今度は先方が外したらしい。こちらが出したものに遅れて返事が来る。そんなちぐはぐの関係で切れずにいる人がいる。今年はどうしたものか、悩んでしまう。

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2004/12/23

キリスト教国でなくなるアメリカ

 昨夜(04/12/22)のNHK「クローズアップ現代」で、04年のしめくくり番組の2回目(最終)として「アメリカー超大国の不安」を放映していた。国際社会という観点からアメリカをよく知る緒方貞子は、9/11によりアメリカの何かが壊されてしまい、その結果、彼らの最も良い面であった寛容さが失われてしまったと、単独行動主義に走るアメリカの基底に、アメリカ人の心の変化があることを指摘していた。アメリカ全州を車で訪ね歩いた詩人長田弘は、こんなことを言っていた。アメリカ人の家を訪ねて気がつくのは、玄関のドアが内向きに開くことだ(日本では、玄関がドアの場合、外向きに開くことが多い)。これはアメリカ人が、外から来た人々を、自分の家に迎え入れる、開いた心の表れであった。それが今ではすっかり変わってしまい、彼らの心は内向きに閉じてしまっていると、近年のアメリカ人の変化を指摘する。

 ブッシュを再選し、イラクでの戦争をひたすら進めるアメリカの根底に、大きな変化が、それもこれまでの良きアメリカを何か歪んだアメリカへと変貌させる変化が起きている。アメリカを知り、アメリカに親しみを感じてきた人々ほど、そのように感じているようだ。

 アメリカ政治とアメリカ・キリスト教をよく知る蓮見博昭は、近著『9/11以後のアメリカ政治と宗教』(梨の木舎、2004/10)の中で、アメリカはキリスト教国ではなくなりつつある、それが問題だ、と書いている。世論調査をすれば、80%程度が自分はキリスト教徒であるといい、50%程度が教会の日曜礼拝に行くと答え、過半数が妊娠中絶や同性愛は聖書の教えに反すると考え、ダーウィンの進化論を学校で教えることに反対する。アメリカは、最も熱心なキリスト教徒が住み、政治に強い影響力を持つ国である。そのアメリカが、じつはキリスト教国ではなくなりつつあるというのだ。

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2004/12/20

フォトコンテスト特選

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 ニッコールクラブ主催の能登写真教室フォトコンテストで、上掲作品『軍艦島と少女』が特選を得て、会報05年Early Spring 号に掲載されました。少人数参加の撮影旅行でのフォトコンですから、大したことではないのですが、フォトコン常連のベテランをさしおいての特選はうれしいです。

 能登半島の突端に近い内浦の海岸のごく近くに見付島という島があります。その異様な形から軍艦島とも呼ばれます。島だけではなかなか絵になりにくく、どう撮るか悩んでいたところに、折良く青い帽子、赤いドレスの少女が現れ波に戯れはじめました。その子を前景に、島に渡る石の道を斜めに、そして軍艦島を真正面に上まで入れた構成が選者に評価されたようです。別のカメラで撮った同じモチーフの作品は、参加している写真道場の本年8月のチャレンジリーグでは、あまりいい評価を得られませんでした。島を全部上まで入れずに、少し上が切れたものでした。その点を減点されての評価でした。

 もう一つうれしいのは、大多数の参加者がポジフィルムで撮った作品を提出する中で、デジタルプリント作品が評価されたことでした。フォトコンテストの動向を見ていると、このところデジタル写真が増えてきていますが、依然としてコンテストを競うアマチュア写真家の主流はフィルムです。少数派のデジタルにも日が当たったことが、うれしかったです。フィルムかデジタルかは、今やあまり問題ではなく、表現された画像の善し悪しがものをいうのでしょう。

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2004/12/19

新宿中央公園の青テント村消滅?

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【かつて青テントが並んでいた辺りでは、樹木の剪定と刈った枝の始末の作業が進んでいる】

 東京滞在のある日、西新宿をぶらついたあと、新宿中央公園まで足をのばしてみた。「新宿ナイアガラの滝」のある広場では、若者たちのグループがあちこちに陣取って、演劇やダンスの練習をしている。ホームレスたちは、暖かい日だまりで、麻雀卓を囲んだり、将棋をしたりしている。いつもののどかな風景だ。しかし、わきの階段を登り、「区民の森」の方へいってみると、様子が一変しているのに驚いた。青テント村が一掃されている。辺りの樹木の枝は極限にまで剪定され、その枝や枯れ葉は機械に掛けられて,細粉と化している。初冬の柔らかな日射しが地面を照らし、これまでの陰湿な区画のイメージを一変させている。かつては青テントに囲まれて居心地の悪そうにしていたブロンズ像「瞭」(分部順治・作)が、今ではぽつんと寂しそうにしている。

 250人ほどのホームレスが暮らす最大規模の青テント村として知られていたところだが、いったい彼らはどうなったのだろう。下の広場の片隅には少数ながらテントは残っている。テントもなくベンチに寝転がっているホームレスを多数見かける。「区民の森」の周辺部にがんばっている青テントが見える。しかし大部分のホームレスたちはどこかへ移動していったのだろう。ここのホームレスたちには、後援組織があり、自立支援と宿泊施設への入居に向けて、都との話し合いが進んでいるとの話は耳にしていた。それがいい方向へ行き、その結果としての現状なら、喜ばしい変化だ。何も知らない私は、穏やかな日射しのもとに佇みながら、剪定作業と、その結果として妙に寒々しい光景と化した公園の一角を眺めたのだった。

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2004/12/12

同期会に出て、人生いろいろを感じる

 高校同期生の忘年会があった。九州の高校だが、仕事や結婚で、東京やその近郊に住みついているものが多く、在京組同期会を続けている。毎月決まった日に、同じ場所で飲み会を続けている連中もいる。忘年会には30名ほどが集まった。表参道を全面ガラスの壁で見下ろすモダンな会場を借りて、イタリアンのご馳走にワイン飲み放題のパーティだった。酒とともに話が弾んで、今だからできる話というのがポロリと出た中で、驚かされたのは、若いころ左翼非合法活動に身を投じていたK君と、警視庁警官として彼を追う立場だったT君との因縁話だった。

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2004/12/09

ブッシュはアンカーマンだと、Sullivan

 この人のいうことさえ信じていれば、迷わずにすむ。世界は揺れ動いている。この先どうなっていくか分からない。何が正しくて、何かいけないか。どこに善悪の判断を求めたらいいか分からない。そんな中で、この人こそが、しっかりした正しい判断をもたらしてくれる。水上を漂う船が、碇(anchor)によってしっかり定位置に留まっておられるように、水上に漂い、岸から流されそうな船をしっかりつなぎ止めてくれる。そのような人を、アンカーマンとよぶ。Andrew Sullivan は、ブッシュは、米国民にとって、唯一の、そして最後のアンカーマンだ、と英国のTimes の日曜版に書いている

 ユーモアか、皮肉めいた語り口にも思えるが、半分は本気、というか、アメリカ国民の置かれた不安な状況の中で、ブッシュの大統領としてあり方を、ポジティブに評価し直しているようにも見える。Sullivan は、もともと保守派の言論人だが、先の大統領選では、明らかに反ブッシュの論陣を張っていた。以前にも書いたが、彼のブログ(The Daily Dish by Andrew Sullivan)は毎日10万人の人が読んでいる。最近、彼の論調は変わってきたように思える。ブッシュ政権が続くという現実を受け入れ、ブッシュを選んだアメリカ国民を理解しようとしているみたいだ。ここに紹介する Times への寄稿で、イギリスの読者に、アメリカ人がなぜブッシュを必要としたのかを弁明しようとしている。

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2004/12/07

ビンラディンの潜む場所

 米国大統領選が大詰めのころ、ビンラディン逮捕というサプライズ・ニュースが用意されていて、ブッシュ勝利のために効果的に使われるだろうとの噂があった。ケリーは、9/11から3年以上も経つのに、なぜ張本人を捕まえ損なっているのかと、ブッシュに迫った。米国人の大部分は、ウサマ・ビンラディンを捕まえないことには、9/11は終わらないと考えているだろう。

 ナショジオの12月号に「ビンラディンの”影”を追う」との記事が載っている。TIME誌のパキスタン・アフガニスタン支局長が写真家とともに、今年3ヶ月にわたって、ビンラディンと彼に従うアルカイダが潜むといわれる地域を取材して回った。そこはアフガニスタンとパキスタンの国境にまたがる広大な山岳地帯(北海道より少し狭いくらいの面積)で、パシュトゥン人という、誇り高く、戦いに強く、助けを求めるものに厚い庇護を与え、最も統治しがたいといわれる部族の住む地域だ。

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2004/12/03

小沢征爾 second time this year in 水戸

 今年は小沢征爾が2度も水戸に来てくれた。前回のことは7月8日にここに書いた。水戸室内管弦楽団の定期演奏会。この楽団の音楽顧問として、年に1,2度来てくれる。こんな機会に恵まれるのは、水戸在住の特権だ。今回は「オール・モーツアルト・プログラム」で、交響曲36番「リンツ」や協奏交響曲(K.364)など。楽団も小沢が来ると、ふだん以上にいい音を出している。さすがだ。小沢のモーツアルトはいかにも楽しげな演奏で、大いに楽しめた。今日から3日水戸芸術館で演奏会。地元だけではなく、首都圏から、わざわざやってくるクラシックファンが多いようだ。この滞在期間に、前回と同じく「子供のための音楽会」をする。さらに今度は小沢の発案で、北越の震災被災者を慰問のため、6日には新潟県長岡で、予定のなかったコンサートを開くという。「世界の小沢」だが、日本のこと、特に若い人の育成にとても力を入れている。

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政治は「感情の季節」に入った、と入江 昭

 激しく闘われたアメリカ大統領選が現状維持で終わったあと、気落ちしたのか、言論界はなんだかシュンとしている。あれだけはっきり割れたアメリカの国内世論はどう落ち着くのか。あと4年ブッシュの顔などテレビで見たくないと願った自分の気持ちを、どこへ持っていったらいいのか。大統領選後について納得のいく論調を探し求めていた。入江昭(ハーバード大教授)が朝日新聞04/11/29の「思潮21」に書いた「感情の季節」は、そんな渇きをある程度癒してくれる。少し紹介してみよう。

 ブッシュ対ケリーは、表面的には感情と理性との対立だった。しかし、破れた民主党側の人々の事後の反応を見ると、かなり感情的だ。どうやらアメリカ政治は「感情の季節」に入り、保守派とリベラル派の感情的な対立は、今後続くだろう。困ったものだと考えるかもしれないが、感情的要因は、理性的判断の前に消去されるべきものではなく、むしろ感情的なものを建設的なものへと向けていくのが良いのではないか。これが入江のいいたいことのようだ。

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2004/12/02

白川静の『文明と荒野』(風の旅人11号から)

 雑誌「風の旅人」の最新11号を、いつものように、巻頭の白川静の直筆随筆から読み始めた。含蓄は深いが、難解でもある。特集タイトルに合わせて「文明と荒野」と題されたエッセイの読解を試みてみよう。

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