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2004/12/09

ブッシュはアンカーマンだと、Sullivan

 この人のいうことさえ信じていれば、迷わずにすむ。世界は揺れ動いている。この先どうなっていくか分からない。何が正しくて、何かいけないか。どこに善悪の判断を求めたらいいか分からない。そんな中で、この人こそが、しっかりした正しい判断をもたらしてくれる。水上を漂う船が、碇(anchor)によってしっかり定位置に留まっておられるように、水上に漂い、岸から流されそうな船をしっかりつなぎ止めてくれる。そのような人を、アンカーマンとよぶ。Andrew Sullivan は、ブッシュは、米国民にとって、唯一の、そして最後のアンカーマンだ、と英国のTimes の日曜版に書いている

 ユーモアか、皮肉めいた語り口にも思えるが、半分は本気、というか、アメリカ国民の置かれた不安な状況の中で、ブッシュの大統領としてあり方を、ポジティブに評価し直しているようにも見える。Sullivan は、もともと保守派の言論人だが、先の大統領選では、明らかに反ブッシュの論陣を張っていた。以前にも書いたが、彼のブログ(The Daily Dish by Andrew Sullivan)は毎日10万人の人が読んでいる。最近、彼の論調は変わってきたように思える。ブッシュ政権が続くという現実を受け入れ、ブッシュを選んだアメリカ国民を理解しようとしているみたいだ。ここに紹介する Times への寄稿で、イギリスの読者に、アメリカ人がなぜブッシュを必要としたのかを弁明しようとしている。

 アンカーマンとは、アメリカのテレビ番組で、時事解説をするテレビキャスターをいう。ひと昔前は、CBS局の Walter Cronkite が代表株だった。アメリカが直面するさまざまな事件や問題に、この人がどう論評するかが、世論の流れをつくった。特に、ヴェトナム戦争について、アメリカは手を引くべきだとこの人が言いはじめたことによって、アメリカの世論は一気に反戦へと傾いたことが知られている。

 かつてはそのようなアンカーマンが何人かいた。彼らは権威そのものだった。Cronkite の後継ぎだった Rather は、選挙戦の終盤、ブッシュの軍歴情報についての偽情報をつかまされて、一気に人気を落とし、局を去った。真に「碇(=よりどころ)の人」という意味でのアンカーマンは、この人を含めて、ずっと以前から消え失せていた。他の分野についてもそうだった。喜劇のキャラクター、教会、最高裁、そして大統領、ニューヨーク・タイムズ・・・、アメリカのすべての面で「権威」なるものが急速に消えた。

 権威が喪失し、真のカルチャーが、サブカルチャーにとって替わられたこの時代に、ブッシュの元気のいい呼びかけが、かつてロナルド・レーガンがそうだったように、大統領職の堅実さを回復したのだ、と、Sullivann は説く。

In a world without authority and with danger and confusion, Bush is a rock. Even when Americans disagree with him, he seems strong and unyielding. His penchant for absolutes is tailored for a culture where doubt and confusion rule.

[権威を喪失し、危険と混乱にある世の中で、ブッシュは岩だった。国民が賛成しない時でも、彼は強く、頑固だった。絶対的なものへの偏好は、疑念や混乱が支配的な世の中には、おあつらえ向きのものだった]

 ブッシュは、決まり切った手順とか,予定遵守などにこだわる古いタイプの人だ。きちんとすることを自分に課したが、それが国全体にいい影響を及ぼした。彼が公にいうことは、陳腐な標語みたいなものの繰り返しに過ぎなかったが、その陳腐さが、人々を安心させた。

 彼の人柄は権威的ではない。むしろ内心はびくびくしている弱い人だ。その弱さのゆえに大統領府を防護的な強さで守ろうとした。自分の分を知るゆえに、ホワイトハウスを、チームの力で、まとまりがあり、敬意をもたれるものにするという公約を果たした。

In a world where the anchors have retired into irrelevance, this president has provided rigidity to the ship of state. It may prove too rigid, too unyielding and too prone to error. But it is solid. And solidity is what Americans now lack — and unconsciously yearn for.

[碇がもうどこにも見当たらなくなった世界で、この大統領は国という船に堅固さをもたらした。あまりにも堅すぎ、頑固すぎ、過ちがちだ。しかしとにかく堅い。そして堅さこそ今アメリカ人が欠いているものであり、無意識ながらあこがれているものだのだ。]

 Sullivan は名文家で、高度のレトリックを駆使する。ここに書いていることを本音ととるか、諧謔ととるか。拙い紹介で意を尽くしてはいないが、お読みになる方にお任せしよう。私は半々だと考える。

 この人の論調が変わったと先に書いた。つい1,2日前、古巣のNew Rebublic 誌のOnline版に書いたイラク情勢を楽観するとの論説(読むには登録が必要)では、イラクでの流れが今変わりつつあり、選挙も無事に予定通り進むだろう、などと書いている。外から見ると、ぐっとブッシュ寄りになったように見えるが、アメリカ人大半の心情からすれば、そのように楽観したいのだろう。

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