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2005/01/11

知るほどに疑念つのる温暖化

050111Warming

   樹木の年輪などから推定された過去千年の温度変化
 (伊藤公紀「地球温暖化」(日本評論社、2003)より転載)

 異常気象が続いている。昨夏の真夏日記録。上陸台風の数と各地での災害。世界のあちこちでの異変のニュース。ついこの一週間でも、ヨーロッパでそしてカリフォルニアで、時ならぬ暴風や大洪水が報じられている。確かに地球規模で異常気象が頻発している。地球温暖化は確実に進んでいるようだ。対策についての合意を急がないと手遅れになるかもしれない。

 このブログでも地球温暖化に何度か注目してきている(04/8/1404/8/13)。原因についての科学的な検討、予測される気象変動とその環境影響、対策法、その経済効果、政策手段、国際的な協調、南北問題などなど、様々な問題がからんでおり、人類の将来に計り知れない影響を与える重要な問題である。

 関心をもっていろいろと調べてみるほどに、じつは本当のことが分からなくなってきた。当たり前だとしてマスコミでいわれていることに疑念がわいてきた。温暖化の原因が人類の生産活動にあることは明白だと、単純に信じ込んでいたが、そのこと自体が科学的に確立しているわけではない。懐疑派に属する人たち(養老孟司ら)の言動を歯がゆく思い、産業界寄りのスタンスゆえに京都議定書から離脱までした米政府の方針には怒りさえ感じてきたが、それでよかったのか。さまざまな問題点を知れば知るほど、この問題はそう単純ではないことが分かってきた。そのことをおいおい書いてみたい。

 温暖化の観測事実についても、その原因についても、科学的な議論はまだ決着がついていない。最終決着はつかないまでも、相当の確率で温暖化の原因は人類の生産活動にあり、温室効果ガス排出を抑えるべきことは当然だと考えてきたが、それすら半信半疑になってきた。また温暖化対策として何をするのか、それをどう政策的に誘導するのか、それが本当に効果があるのか。このあたりになると、もっと議論が分かれことも分かってきた。

 こうは書いても、温暖化対策は無用といっているのではない。現象も原因も確定していない。しかし結論が出てからでは遅いだろう。水俣病やイタイイタイ病の例がある。半信半疑ながら、打つべき手は打たねばなるまい。2酸化炭素削減は化石燃料節約のエネルギー対策の観点からも、歴然としている公害ガスによる環境汚染対策の観点からしても、進めるべきだと思う。

 しかし科学の観点からは、現状でわかっている事実と原因のあれこれについては、まだ中立的な判断にとどまるべきだろう。気象には変動がつきものである。長い年月にわたる変動や短期的な変動がある。その結果異常とも思えることが続くことがある。その時、人々も、マスコミも、科学者すらも、これは異常だとし、原因を安直に求めがちになる。注意した方がいいのは、理論家やシミュレーション屋である。観測屋や実験屋が何かを見付けると、それをうまく説明する理屈を手品のように繰り出すのが彼らである。それにマスコミがわっと飛びつく。政治の問題となる。先にも書いたように、社会としては何か対応しなければならないのだが、科学としてはクールに見続けていく必要があるだろう。

 じつは、気象というのは、とても複雑な現象である。地球という大きなシステムに、太陽からエネルギーが注がれ、地球は輻射熱を宇宙に放出している。大気と海洋が大きなエネルギー循環を担っている。太陽から注がれるエネルギーも一定ではなく、黒点の消長に伴い変動し、太陽磁気が宇宙線の入射に影響する。そういう大きく複雑なシステムの大きなスケールの変動はなかなか捉えがたい。観測といってもごく限られた地点でのデータしか得られていない。冒頭に掲げたのは気温変動のデータである。3人の研究者を代表とするグループが、樹木の年輪などを丹念に調べて出したデータである。温暖化の議論に良く引用されるのは、黒い線で描かれているマンのデータである。私が04/8/13のエントリで引用した資料にも、このデータが使われている。しかしそれぞれに根拠のある測定から得られた3つのデータを比べてみると、相互の差の大きいこと、ここ数十年の温暖化は過去の変動と比べて特段のものとはいえないこと、などが分かる。

 理論やシミュレーションは、まだ巨大システムとしての地球を扱うのに十分とはいえない。単純化を迫られ、注目した要因でもって温暖化を説明してしまう傾向があるようだ。

 温室効果ガスによる温暖化が事実だとして、政策的にとるべき手段については、その経済的観点からコスト・ベネフィットや有効性を十分に検討すべきだ。この点では、米国ブッシュ政権のとっている施策は、政策的に正当化できる面もある。もちろん例のごとく自国中心、身勝手ともいえる面があることは確かだ。

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