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2005/01/14

ニューヨーク・タイムズ・オンライン版の有料化?

050114BW インターネット上で新聞記事を読む人は多いだろう。ブログを読むと、新聞記事をリンクで参照して書いているエントリが多い。よく読みに行く米国の政治問題を扱ったblogには、New York Times(NYT) や Washington Post の記事を引いて論じているものが多い。リンクをたどって記事を読みに行くことになる。それとは別に、NYTの論説・意見欄(OP/ED)は、ほとんど毎日目を通しに行く。ところが New York Times のオンライン版が有料になるかもしれないという。

 NYTオンライン版の有料化のうわさは、アメリカのブロッガーの間では、少なからず問題になっている。"BLOGS AND THE MEDIA" by Kevin Drum in Political Mediaには、以下に引用するBusiness Week の特集記事への参照に加えて、ロイターの報道(ここではMSNBCにリンクをつけておく)で新聞業界コンサルタントのMorton が、これから多くの新聞は電子版を有料販売する方向に向かうだろう、とコメントしていることを引用し、

 もしそんなことが起こったら、ブログで行われている政治問題についての議論のほとんどは、死に絶えることだろう。オンラインの新聞や雑誌が生の報道材料を豊富に(=無料で)提供しなくなれば、ブログ上で何かを書ける人はほとんどいなくなるのではないか。

と書いている。彼のエントリには、100件以上のコメントがついて(これは毎度のことだが)、盛んに議論されている。私がこの問題を知ったのは、いつも読みに行くDangerousmeta経由で知った"Pay the Gray Lady" by Photodude.comによってである。

 ことの発端は Business Week(BW) の1月17日号のトップ記事The Future of the New York Timesである。NYTの現社主 Arthur Sulzberger Jr.にスポットを当て、アメリカを代表するこの新聞の抱えるさまざまな問題点を社主から聞き出している、昨年あったニセ記事でっち上げ事件で編集長が退陣するなどのスキャンダルもあったNYTを、これからどう運営していくのか、政治的に変更しているとブッシュ陣営から攻撃されていること、など興味深い問題を取り上げている。その最後の部分で、印刷媒体としての新聞とインターネット上で無料で購読されているNYTオンライン版の将来について問題の発言が飛び出したわけだ。現在社内では有料化すべきだという意見と、それに反対する意見とに分かれて議論されている。社主は明言を避けたが、どちらかというと有料化に傾いているような印象を受けた、とBWは書いている。

 NYTの発行部数は、現在約120万部だという。それに対して、オンライン版を読みに来る人数は毎日1800万もあるのだそうだ。印刷された新聞を購読している人の15倍もの人が、無料でオンライン版を読んでいる。新聞の購読者はこのところほとんど増えていないが、そちらの方の売り上げで新聞社の経営は成り立っている。オンライン版の収入は、ページに載せてある広告によるもので、このところ年率30〜40%で増えているとはいうものの、収入への貢献度は、全社の10%程度であるという。新聞を購読している120万人の読者が、15倍の数のオンライン版読者の無料購読を支えていることになる。

 社主は、「良質の情報を無料でオンラインで読むという読者世代を安易に育てすぎてしまったのではないか、という厄介な問題に直面している」と語ったそうだ。多分Wall Street Journal(WSJ) などに倣って有料化を検討しているのだろうと、記事はにおわせている。WSJのネット版はトップページはあるが、記事を読むには、オンライン版の購読契約が必要である(年$79)。

 NYTほかの米英の新聞、雑誌のオンライン版は、非常に充実している。ほとんどの記事を全文掲載していて、無料で読むことができる。ただし、1週間(NYTの場合)とかある期間以上経過した記事を読む場合には有料とすることが多いようだ。日本の新聞のオンライン版は、それほど気前よくない。記事は全文掲載ではなく、速報版という程度のものが多い。社説やコラム(天声人語など)は読めるが、ニュース解説のようなものは載せていないし、ニュース性のない記事は読めない。過去の記事は索引できるが、限られたものしか出てこない。完全な記事検索のサービスはあるが、有料で契約(月額525〜3150円)したうえで記事ごとに84円の料金がかかる(Asahi.com perfect の例)。

 インターネットという媒体は、さまざまな情報に無料でアクセスする、という習慣を私たちにもたらした。私たちは、新聞や一部の雑誌を、無料で読むことができる。新聞社もこの趨勢に応じて、記事をインターネットで公開してきた。無料に加え、即時的にニュースに接するという便益まで享受している。しかし新聞社の経営という面からすると、これは容易なことではないだろう。新聞を購読する人は増えない(減っているところもあるようだ)。さりとて有料化となると、現にここまで進んだインターネットの便益は激減することになる。一紙ならまだしも、あれこれの新聞を金を払ってまでして、オンライン版を読む人は少ないだろう。新聞をネタにしてのブロッガー間の意見交換も大幅に阻害されよう。

 インターネットの普及とともに、新聞・雑誌などのメディアは、これからの時代、読者に情報をどういう形で提供・販売するか、ということと、どのように収益を得て経営を成り立たせるかの、難しいトレードオフ問題に直面しているようだ。NYTがどうなるかが、世界的に波及していくことだろう。注目していきたい。

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