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2005/02/07

Andrew Sullivan の休筆

 アメリカを代表する政治評論 Blog ”The Dayly Dish" の Andrew Sullivan が、しばらく休むと宣言している。知的でバランスのいい保守派の言論人として、いつも参照していたブログだった。ここでも何度か紹介している(「Blogosphere、ブロッガーが創った言論空間」「ブッシュはアンカーマンだと、Sullivan」など)。折々の政治トピックスについて、毎日数項目の的確なコメントを書き、自分の意見を表明する。そのブログを読みに行く人は、10万人を超えると自分でいっていた。その人が突然ブログを”hiatus(すき間、文章が欠けた状態)” にすると書いて、みなを驚かせている。

 しばらく休息をとりたい、旅行もしたい、本を書く、というのが休筆の理由だという。私が読み始めたのは、半年ほど前からだが、このブログは5年前に始まり、書いたものは、数百万語といわれる。毎日欠かさず政治情勢をウォッチし、コメントを書き続ける作業は大変なものだろう。ブログは個人の表現媒体である。書くこともさることながら、情報に目配りし、自分の考えを持ち、踏み外すことなく表現する。ブログは誰でもがやるが、一番トップのレベルのブログ間の競争は激しいものがある。間違った言論を唱えれば、たちまち人気を失墜しかねない。ほとんどの時間をつぎ込んでこそ成り立つものであり、緊張を強いられる。先日も代筆をたてて1週ほど休んだので、おやと思ったが、とうとう一時ダウンしようという気になったらしい。

 ブログを評論しているブログ ”The Blog Herald”の2月3日の記事 Conservative Blogger suffers Blog Burnout では、Blog Burnout という言葉(「ブログ燃え尽き症候群」とでもいおうか)で、彼の休筆を次にように論じている。

Whether “Blog Burnout” will become a commonly used phrase this year is yet to be seen, but the rapid growth of the blogosphere and those attempting to get ahead will mean that Sullivan is most likely the first of quite a few, in a marketplace that is rapidly commercialising at the top, and where it is becoming more and more difficult for hobby bloggers or part time bloggers to compete with full time individual bloggers and those blogging for the increasing number of blogging, online and media companies that are expanding nearly daily.

 ブログ言論空間の急速な成長の中でトップを維持しようとする時、「ブログ燃え尽き症候群」が現れるのは十分にありえたことで、Sullivan がはしりとなった。彼ですらこうなのだから、普通のホビー・ブロッガーがフルタイムで専門的にやっているブロッガーと競い合うのは容易なことではないだろう、と書いている。

 最近書いたことがあったが、彼の言論は変調を来していたように私には見えた。ブッシュ再選に明白に反対を唱えていたのだが、再選されるやいなや、彼の政策を積極的に支持する側に回り、イラク戦争の見通しに楽観論を唱え、イラク選挙の成功を感情を込めて賞賛していた。それまでの抑制された表現ぶりからすると、私には人が変わったように思えた。そしてこの休筆宣言である。ブッシュの再選の見通しを誤ったことに、内心の揺れ動くものがあったのではないか。

 休筆とはいえ、ブログは立ち上げたままで、ときどき書くという。休筆宣言後も、読者のメールをたくさん紹介したり、ブッシュの年頭教書を褒め称えたりしている。抑えの効いた名演説だったという評判だが、イラクの女性選挙民が紹介された場面など、私は見え透いた演出と見たが、Sullivan はそれを見て、熱いものが喉にこみ上げてきた、と書いている。こんな調子で、書きたい時にたまに書いて、つないでいくつもりらしい。9ヶ月かけて、一冊本を書き終えたら復帰するとも約束している。

 リベラルのブロガー James Westcott は、Sullivan の腰の据わらない態度を How Can We Miss You If You Won't Go Away?(「辞めないのだったら、名残の惜しみようがないじゃない」)と皮肉っている。当然予想される内容の読者メールを長々と紹介した Sullivan の未練ぶりは、競争ブロッガーからすると、舌打ちしたくなるほどのもののようだ。

 表現の練れた彼の名文ブログを毎日読む楽しみがなくなったのは残念だ。しかし、彼の「燃え尽き」ぶりは、私ら素人にも、ほどほどにブログをやるべしとの教訓を与えてくれた。

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