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2005/03/17

旅をして思うこと

050317Sardine

 旅をしていつも思うことは、この大きな地球上に、風土や生活習慣に多少の違いはあれ、人間として生きる根本のところで、私たちと変わりのない人々がいることである。当たり前のことだが、そのことを具体的に知るたびに、そのことに新鮮な驚きを感じてしまう。そして考えるのは、私たちは小さな違いにこだわり、この大きな普遍を共通認識にできないのか、ということである。

 高度を下げた航空機から街や村落の灯りが見える。その灯り一つ一つに人々の暮らしがある。そのことは一見なんでもないことだ。だが、その暮らしを自分のものと引き合わせて想像してみるとき、一つ一つが自分のと同じかけがえのないものであろうことに思い至る。生き、生計を立て、愛し合い、苦労し、笑い興じ、涙し、あるいは主張を持ち、・・・、人々は徒党を組み、相争い、悪をなすやからも中にいる。私たちの日常と似た人々の暮らしが、そこにあるに違いない。隣近所があり、町や村の生活がそこにもある。それが世界だ。一方、私たちが新聞の政治面などで遠い国でのニュースに接するとき思い浮かべるのは、なんと仮想的な世界であることだろう。その仮想世界をマクロに眺めてあれこれと論じ、支配している人々がいる。それはある意味で途方もないことだ。そのことが人々の不幸せを作ってきた。それが歴史だ。ふとそんなことを思ってしまう。

 リスボンの盛り場を外れたとあるレストランに入る。観光客の群がる場所と食事場所を避け、地元の人で賑わう店にあたりをつけて利用する。当然メニューは分からない。連れ合いがいつも携行する「指さし旅行会話」の本の食事のページを開き、魚の絵を頼りにこれとこれと注文する。私は鰯、連れ合いは烏賊。料理法までは注文しようがないので、お任せだ。あちこちのテーブルをのぞく限り、焼いたり、あげたりしたものがポテトや野菜と一緒盛りになったプレートが出ている。何とかなるだろう。あわせて白ワインのハーフを頼む。ヴィノ・ブランコは通じたが、ハーフは手振りで分かってもらう。鰯には驚いた。何と大ぶりの鰯が9尾も並んでいる。別に大皿の野菜サラダも付く。連れ合いには烏賊の代わりに蛸が来た。指さしたつもりの烏賊が蛸に見えたのか。しかしうまく唐揚げされた蛸はなかなかうまそうだ。持参した小瓶の醤油を取り出す。粗塩を振って焼かれた鰯の表面の塩をこそぎ落とし、醤油を掛けて食べる。うまい。ポルトガルでは日本に似て、鰯を炭火焼きしたものを好んで食べる。醤油を見て、何だと亭主が寄ってくる。再び指さし本の登場。巻末の和→ポルトガル語辞典で醤油を引いて、これだと示す。聞いたこともないものらしい。怪訝な顔をしくびをふっている。コック仲間を呼び、味わってみて、わいわい言っている。悪くない味だということらしい、テーブルの周りの人も興味深げに眺めている。結局鰯は5尾平らげたところでギブアップ。連れ合いにも助けてもらい、2尾を残す。蛸の方はほどほどの量だった。勘定の段になって、2匹残すとは何ごとかと、亭主はユーモラスな身振りで不満を漏らす。こんな場を体験すると、文化こそ多少違え、人間いずこも同じだな、との思いを新たにする。

 泊まったホテルのわきのケーブルカーで背後の丘に登ると、リスボンの街を展望できる。場所を変え、角度を選んで写真を撮っている間、ベンチに座っていたワイフは、日本人の旅行者から声を掛けられ、話し込んでいる。ヨーロッパの領事館にいる息子を訪ねたついでにポルトガルへと旅してきた夫婦だという。ビジネスを引退して旅を楽しんでいるらしい。「ポルトガルは2度目ですが、駄目な国ですね」とおっしゃる。街には勢いがない、たばこが野放しだ。一生懸命働こうとせず、怠けているから、この国は駄目なんだ。規律もなっていない。路上でのくわえたばこ、レストランや公共の場所での禁煙の習慣がない。禁煙と表示があっても、無視されている、などとこの国の観察を述べられる。働き者日本人が外国批判をするときに、よく聞くせりふだ。私には、この国の人々の生き方は良いと見える。ほどほどに働き、生活を楽しむことに重点を置いている。月収の平均が8.5万円ほどと聞いたが、ずっと豊かそうに見える。物価が安い。ワインなどミネラルウォーターより安く思える、昼食をワインつきでゆっくり楽しみ、シエスタ(昼休み)をたっぷり取る。暮らしに困らない程度に働けばいい。楽しみを犠牲にしてまであくせく働くことはないなど、と考えているようだ。それでいて、食いっぱぐれた人はあまり見かけない。住のレベルは、日本よりはるかに良さそうだ。もとビジネスマンの批判にむきになって抗弁はしなかったが、日本とポルトガル、それぞれの暮らし方があっていい、と思った。

 旅に出て良いことは、こうして地球大に拡がっている、さまざまな人々とその暮らしに出会うことである。それには日本に似た国、アメリカ化している国を避け、できるだけ辺境に行くのがいい、というのが私の考えだ。ポルトガルを辺境だといえば、この国の人に叱られるかもしれないが、西欧の辺境と言っていいだろう。普通の見方で言えば、西欧で遅れた部類の国、ヨ−ロッパの田舎といえる。もっともリスボンはほかのヨーロッパの街とあまり変わらず、かつてノスタルジーを誘ったナザレの浜辺などは、美しいだけのリゾート地と化し、私の期待は大きく外れてしてしまったが。

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コメント

アクさん

お帰りなさいませ。おいおいお聞かせくださるのを楽しみにしております。

この写真をみて、懐かしく思いました。本当にポルトガルというのは、シンプルな料理だけれども、その量の多さにはあきれます。

みやさんのお顔が複雑な表情なので、なんか伝わってくるものがあります。

アクさん、ちょっとお願いがあります。
私も、10年ほど前に行ったのですが、当時はデジカメではありませんでしたから、このお写真をみて思い出したことを、私のブログにもスキャンして写真を貼り付けてみようかなと思いますが、その時は、どうしたらこちらと簡単に行き来できますでしょうか?

ちなみに、
http://www.asahi-net.or.jp/~jf2m-mrt/michiyo/essay2.html

こちらにもちょっと書いてありますが。

投稿: 美千代 | 2005/03/18 09:26

美千代さん
おひさしぶりです。みやが留守の間の雑用をこなして、旅行記を書き始める間のつなぎに、ブログの方に断片的感想を書いたのでした。掲載したのは変な写真で、みやは気に入らないのですが、こんなに食べるの?とうんざりした表情が出ているのを見てもらうつもりでした。料理写真は心がけて撮るようにしているのですが、食べる方に気が向いて、いい写真を撮ることがおろそかになります。これも拙い写真でお恥ずかしいです。

ところで、「私のブログ」とおっしゃっているところを見ると、美千代さんもブログをはじめられたのですか。それでしたら、トラックバックを使って、こちらの記事に連携をとることができます。

また、この美千代さんのコメントのように、URLを書き込んでいただければ、そこからそのページへ飛ぶことができます。ただし、URLだけでは、クリックして飛ぶことができませんから、html記号の リンク開始記号(A HREF="">の"と"の間にURLを書いて、たとえば「美千代のポルトガル料理(芋ぼう)」などと書き、その後に 記号"(/A>" を書いていただけると、以下のように、クリックで、そのページへいけるようになります。上記で記号の前括弧をわざと<のかわりに(に置き換えて表記しています。そうしないとリンクに化けてしまうからです。
「美千代のポルトガル料理(芋ぼう)」
何か的はずれの返事をしているようでしたら、もう一度お尋ねください。

投稿: アク | 2005/03/18 10:51

美千代さんのブログのことを、美千代さんの掲示板を読んでいるみやから教えられました。右コラムにある「おすすめブログ」にさっそく登録しました。

そこで改めて、トラックバックのこと。美千代さんが記事を書いて、それを私の記事に連携させるには、自分の記事を書く欄の終わりの部分にあるトラックバックの欄に、連携したい私の記事のURL、たとえばこの記事でしたら、
http://aquarian.cocolog-nifty.com/masaqua/2005/03/post_1.html
をコピーアンドペーストすればいいのです。そうすると、私のブログの右コラムにあるトラックバック欄に美千代さんの記事のタイトルとブログ名が表示され、読者は、私の記事に連携した美千代さんの記事を参照できるようになります。

投稿: アク | 2005/03/18 11:29

アクさん

ごめんなさい!本来のコメントから外れたのは、私の方だったのです。でも、何故そうしたかにについて、一言あるのです。

アクさんが、鰯にお醤油をかけた場面で。

>醤油を見て、何だと亭主が寄ってくる。

ここを言いたかったのです。
どうして、亭主が飛んできたのか、飛んできたのが、奥さんなり、女従業員でなかったか?そこですよ。ポルトガルの大抵の食堂は、女性が厨房でお料理を作るからです。

男性が、給仕人なんです。
紐というのも悪いですから、経営者が表で取り仕切ってるといえばいいでしょう。それは、市場でもそうだったと思います。
おそらくアクさん達のことですから、絶対に市場へ行ってらっしゃることでしょう。でも、そこで一生懸命に働いているのは、大方、女の人だったろうと、思います。

ポルトガルは、男性天国かもしれません。

私は、けっしてポルトガルを駄目な国とはみてません。
だって、今の日本が果たして住み良いでしょうか?疑問です。

投稿: 美千代 | 2005/03/18 13:22

美千代さん、再度のコメントありがとうございます。
そう、確かに女性が料理をしていますね。厨房とレストランとをつなぐ小さな窓から女性の顔が見えたり、料理を出し入れしたりしています。割烹着を着て帽子をかぶって裏方に徹しているようで、決してお客の前に出ません。一方お客にサービスをするのは男性ですね。ただ、そうでもないところも見かけました。みやがそのうちに詳しく書くでしょう。

市場にも行きました。リスボンのリベイラ市場。ここでは売り手は女性が多かったかと思いますが、男性もいました。

男性天国かどうかは、しかと見届けませんでしたが、どの町や村でも、昼間外に出て所在なげに立ち話をしたり、ぶらぶら歩きをしている男性が多かったですね。それが彼らの暇つぶしのようでした。ガイドさんは彼らに娯楽がないから,と説明しましたが、外に出て人と会って話をすることを楽しむ彼らの方が健全だと思いました。

投稿: アク | 2005/03/18 14:06

アクさん みやさん お帰りなさい。

良い旅をされたようですね。素敵なLisboaの絵葉書を、有り難うございました。PCの横に貼りつけてあります。

以前、ポルトから南下するツアーに応募しましたら、定員に満たなくて企画がキャンセルになりました。仕方がないので、リスボンへのみ出かけ、そこから近場のシントラへ日帰り旅行をしたのでした。費用が減少した分、ホテルはフォーシーズンにしました。

親日的なポルトガル人は、旅の間中、とても良い印象でした。が、
シントラの土産物屋で、タックス申請のために渡したパスポートが手に戻っていないことに気づかず、帰国のフライトの直前になって、その失敗に気づき、時に遅しで、フィックスの飛行機に乗れませんでした。
それからが、もう、今から思い出しても頭が痛くなる(笑)戦いが始まりました。
結果的には、予定を一日延ばして、翌日の同じ飛行機で帰国したのです。JALだったから無事だったのかもしれません。冷や汗ものでした。

アクさんや美千代さんの旅行記のような綿密なものではありませんが、簡単にHPに纏めたものが下記↓です。
http://www.za.ztv.ne.jp/emeg3p6b/risubon/porutogaru.html

URLは、ブログのアドレスです。

投稿: 沙羅 | 2005/03/21 19:53

沙羅さんもポルトガルへ行かれていたのですね。
パスポートがないことにフライト直前になって気づき、それを何とかして翌日に帰国できたとのエピソードは、沙羅さんならではのものです。あらためて感心。いろいろやっていますね。HPの旅行記も見ました。ファドは私たちも、2度聴きました。一つは大きなところ、もう一つはパパママ産業的小さな店。ファドが気に入って、今はなき歌姫アマリア・ロドリゲスのCDを買って帰りました。近々水戸に現役で国際的に知られているクリスティーナ・ブランコが来るのを楽しみにしています。シントラではあの奇っ怪なお城を見損なったのが残念です。宮殿の方にしか行きませんでした。

投稿: アク | 2005/03/21 23:07

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