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2005/04/30

温暖化対策が動き出すが

 京都議定書の批准国として、温暖化対策がいよいよ動き出す〈目標達成計画を閣議決定(05/4/30毎日新聞)〉。もっとも「目標達成計画」という名の努力目標を掲げたのに過ぎず、規制や環境税などの強い政策は見送られた。いわば及び腰でおつきあい程度の対策が動き出すわけだ。

 京都議定書による地球温暖化対策は、成功しないだろうし、抜本的に見直した方がいいと、私は考える。京都議定書さえ締結国が遵守すれば、地球温暖化問題は解決できると信じておられる方が多いようだが、とんでもない。とてもとても、そんなことでは、温暖化は止まらないし、先進国の経済は無為に傷つく。主な理由は4つ。

1.アメリカが参加せず、中国は何もしなくていい。そんなバカな。
2.シミュレーションによると、議定書による二酸化炭素削減シナリオが実施されたとしても、二酸化炭素濃度は減少しないし、温暖化も止まらない。
3.日本やアメリカでは、経済的損失も含めて削減にかかるコストが大きいのに対し、削減による便益が少ない。もっと最適化したシナリオが別にある。
4.そもそも地球温暖化の原因が、人間の活動による二酸化炭素排出のせいであるかどうか、不確実である。

 地球全体で気温が上昇し、異常気象が生じたり、氷の量が減っているのは、事実である。しかし、それが人間活動に伴って排出される二酸化炭素の増加によるのかどうかについては、どうもそうらしいという程度で、さまざまな異論もある。しかし、確実にそうだと結論が出てからでは、遅すぎる。人間活動による温暖化が事実だ、とみなして行動を開始しよう。国際的合意として気候変動枠組条約が1992年に採択され、参加した国による検討(締結国会議COP)が進められ、京都会議(COP3、97/12)で議定書ができた。

 アメリカのクリントン政権は、積極的に対策を進める方針であったが、ブッシュになって態度が変わり、批准はおろか条約国から離脱してしまった(2001年)。世界全体の1/4の二酸化炭素を排出しているが、京都議定書に従い、2012年までに90年排出量よりー7%になるよう削減する、との目標を達成しようとすると、自国の経済に大きなダメージになることが理由だ。

 中国は、世界の15%(2000年)と、第2位の二酸化炭素を排出している(ちなみに日本は5%で世界第4位)が、途上国扱いで、何の削減努力もしなくていい。温暖化は、先進国の産業活動のつけであって、これから成長しようとする国の頭を押さえつけるような対策はごめんだ、というのが途上国の主張で、それが容れられた。その後も中国は成長を続け、2000年の排出量は、基準とされる90年値から、すでに39%も増えている。さらに今後も高い経済成長を続けている一方、対策は何も講じないだろうから、そのうちに、排出量はアメリカ並みになるだろう。日本がチマチマした対策で削減した量など、問題なく吹っ飛んでしまう。著しくバランスを欠いている。

 温暖化は科学の問題であるとともに、経済学の問題である。温暖化対策にどれだけのコストがかかるか。それによってそれぞれの業種や国がどれだけの損失を被るか。温暖化対策をすることによってどれだけのベネフィットが得られるか。温暖化と経済活動を組み合わせたシミュレーションが行われている。アメリカ・イェール大学の経済学教授ノードハウス(サムエルソン『経済学』の共著者)の計算が公表され、よく知られている(W.D.ノードハウス:『地球温暖化の経済学』〈東洋経済新報社、2002年、これは次の新著の翻訳ではなく、1994出版の別の書の和訳である〉、W.D.Nordhaus&J.Boyer: "Warming the World" MIT Press 2000)。ノードハウスのグループは、温暖化現象と世界経済についての、詳細な計量データを使い、さまざまな対策シナリオについて、コンピューターを駆使して、シミュレーションを行った。その結果を簡単にいうと、

1,京都議定書のシナリオによる二酸化炭素削減効果はほとんどなく、温暖化も押さえ込めない。これは途上国に削減義務が課されていないためである。
2.経済的なダメージは、アメリカが最大、日本、カナダ、オーストラリアなどの高所得国これにつぎ、ロシアを含む東ヨーロッパは大もうけ(排出量取引などで)、ヨーロッパ先進国は損得が相殺し、中国を含む途上国も受益。

という結論を出した(詳細は上掲の英書を参照、一部の結果は伊藤公紀『地球温暖化』〈日本評論社2003〉に紹介されている)。この結果はブッシュ政権の政策変更の根拠となったといわれる。石油資本と結びついているブッシュは、彼らに損害を与える温暖化対策には踏み込まないのだ、とよくいわれるが、こうしたしっかりした解析が政策のベースにあることにも注目する必要がある。このノードハウスの結論より説得力のある結果が出てこない限り、私は京都議定書に「?」をつけざるを得ない。

 地球温暖化の科学についても、多くの論がなされている。地球の気象変動はじつに複雑な現象である。これまでも、数千年規模、数万年規模、数百万年規模で、気象は大きな変動を続けてきた。現在の温暖化も自然現象なのかもしれない。もっと研究を進め、議論を深める必要がある。以上、地球温暖化問題に注目して調べてきた、現段階での私としてのまとめである。

目にとまったブログ・エントリ
ブログ時評(05/2/20):京都議定書、本当の問題点を言おう [ブログ時評11]
極東ブログ(05/2/16):環境税(温暖化対策税)はしばらくやめにしたらどう

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