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2005/05/16

核融合実験炉誘致断念に思う

 欧州連合(EU)と誘致合戦を延々と続けてきた国際熱核融合実験炉I TER の建設地を、やっとフランスに譲ることに決まった(「ITER建設地、G8までに政治決着 日本とEU合意」朝日新聞2005年04月12日)。これについて、05/5/15の朝日は、「融合炉誘致 負けるが勝ち、もある」という社説を掲載している。この問題については、私はこのブログで、「日欧の競り合いで、立ち往生の核融合炉計画」(04/7/31)を書き、この計画を解説し、日本はがんばりすぎだ、日本の科学技術予算に過重な負担となる装置建設は譲った方がいい、と主張した。私だけではなく、この計画を知る科学技術畑のおおかたの人々は、そう考えたと思う。

 今回のエントリでは、以前の主張をくりかえすのではなく、この誘致合戦で、どのようなゲームプレイヤーが、どんなプレイを演じたかを考察してみよう。これは本来国際的なゲームプレイで、その面はそれで興味深いが、あまり情報を持ち合わせない。国内のゲームプレイヤーだけに注目して書いてみる。

 国内では、誰がゲームプレイヤーだったか。核融合研究者、原子力研究機関、文科省、原子力委員会、総合科学技術会議、電機メーカー、建設業界、経団連、電力、青森県、他分野の研究者たち、一般国民、ジャーナリズム、などが思い浮かぶ。これらのプレイヤーは、それぞれ利害は違う。しかし誘致が有利という面を共有したプレイヤーたちは、相互に連携し、最後まで一歩も引かない強固な体制を築き上げて、誘致に熱を上げた。いい加減降りたくても、それができない立場に落ち込んでしまったプレイヤーもいた。また客観的にものをいう立場のプレイヤーは、口出しの機会を失ったり、どうせなるようにしかならないだろうと静観を決め込んでいた。連携した各プレイヤーの内部にも、消極論や反対論があったであろうが、大きな声にはなりえなかった。あまりにも壮大な計画に現実感を失い、反対もできなかった、ということもあろう。海のものとも、山のものとも分からない、だから反対しなくても、という消極的無関心層が、プレイヤーの周辺に多くいたのではないか。

 まず、本来のゲームプレーヤーは、核融合の研究者である。核融合研究の宿命は、巨大・巨額装置を必要とすることである。核融合が発電装置としてものになるかどうか、装置を作って実験したい、という段階に立ち至った。ところがそのためには、数千億円から1兆円という途方もないお金が必要だということになった。これは、一つの国の負担を超えている。そこで国際協力で、ということになり、ITER計画が始まった。もう20年も前のことである。それ以来、核融合研究者の間でも、そのような巨大計画に研究資源を一極集中することの是非が、盛んに論じられた。中小規模の特徴のある装置で、もっと基礎的な研究を積み重ねるべきだというのが正論であったが、巨大装置推進の流れには逆らえなかった。

 役所の内部事情は複雑だったと思われる。役所はおかしなところで、担当者は、ことの是非にかかわらず、与えられた仕事に最大限のエネルギーを傾ける。核融合担当になれば、ITER推進に躍起となる。役所内部には、どう資源を配分するかという点で異論があっても、足は引っ張らない。互いに競い合うことで、役所全体のエネルギーが高まると考える。上に立つものは、役所の仕事が大きくなるという点にメリットを見いだし、推進する。つい最近まで、役所というのは科学技術庁だった。当時文部省はこの計画を冷ややかに見ていた。行政改革で科技庁と一体となってできた文部科学省は、それまでの経緯を忘れたかのように、この計画推進の旗振りをしている。たとえ巨額の研究資金が必要となっても、自分の腹は痛まないという計算をしているのだろうか。

 誘致推進のもっとも大きな力は、青森県六ヶ所村に大きな負債を背負い込んでいる国と経団連、そして地元利益の欲しい青森県だったろう。六ヶ所村に広大な工業用の敷地を開発したものの、立地してくれるものがない(原子力関係と石油備蓄基地を除いて)。空き地の利息の支払いだけで毎年大きなお金を要する。ITERはその穴埋めとして救世主的な存在だったのだろう。もしここに立地したら、国際協力で多くの外国人研究者が往き来する。アクセスが悪く、研究インフラの乏しい場所が研究所立地にいいはずがない。それを無理押ししたのは、そんな事情からである。

 電機メーカーは、原子力関係の投資を渇望している。かつては原子力技術は花形だった。多くの優秀な技術者が育った。しかし今や仕事がない。原発の新規発注は停滞している。研究開発用大型装置への投資もかつての勢いがない。原子力、特に核融合・加速器専門部門を維持できないという悲鳴らしきものを聞いたのはずいぶん前のことだ。ITER計画が日本に来れば、日本の電機メーカーが製作の主体となる。いくつかの部分に分けて、バランスよくみなが潤うように発注することになるだろう。当初数千億、長期的には1兆円を超える投資は、彼らにとって久々のご馳走だ。巨大装置建設は、巨大建設工事を伴う。サイクル施設の建設が終わったこの時期、青森県での公共事業として、この計画は、ゼネコンにも地元業者にも喉から手の出るほどのものだったろう。

 電力、経産省は、21世紀いっぱいかけても、ものになるかどうか分からないような核融合には関心はない。しかし、青森県でのさまざまな施設についての地元への配慮からして、推進の一翼を担いでいたのだろう。

 他分野の研究者は、有限な研究資金を大きく削り取られるという意味で、ITERなど、とんでもないという見解だったろうが、それが反対意見としてまとまることはなかった。学術会議ではどのような議論があったのか、私は耳にしていない。総合科学技術会議が、このような問題を議論する公式の場なのだろうが、それを仕切っているのは、主として、もと科技庁の役人である。消極的・否定的な意見など出ようがない。

 かくして、ゲームプレイヤーたちは、20年、特にここ10年ほど、激烈ともいえる誘致劇を演じてきた。とっくに降りてよかったのだが、降りようと誰も言えなかった。そんな長い長いドラマもついに幕切れとなった。ドラマは大団円を迎えられなかった。しかし大部分のプレイヤーは、この結果を予見しながら演じてきたのではないか。最大限がんばって、結局来ないのが、最良の結果だと思っていたと推察する。そういう意味ではよかったと言える。もっとも誘致断念にあたって、いろいろと条件を付けたようだ。どっこい只では降りない。プレーヤーを絞って、本音の第2幕が始まるかもしれない。そのあたりをきちんと見届ける必要があるだろう。

 この稿で書かなかったほかのゲームプレイヤー。ジャーナリズムは何をしたのか、ほとんど見えない。本来のプレイヤーであるべき国民(納税者)とその代表(国会議員)は、蚊帳の外だった。科学技術は、膨大な金食い虫であるとともに、国の将来を担うという観点から、もっと世論と政治の場で議論されていいと、今回の経緯をみまもりながら、つくづく思う。

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コメント

 おもしろい記事を上げて頂き有り難うございます。そうですか、私はそのような物理の領域のことは全くわからないのですが、核融合は本当に大きなお金がかかるものなのですね。昔から加速器を初めとして物理でも最先端の領域は巨大科学のような印象を私は持って来ました。カミオカンデもそうでした。カミオカンデからはとっても重要な発見がたくさんなされたと聞きました。何か日本の物理学は何か大きなとてつもないものを作れば何かしらすごい発見ができるのだという迷信のようなものが、本庁の役人の方々、私を初めとする門外漢はもっているのではないでしょうか。そのことが核融合実験を推進してきた理由にあるのかなと感じました。
 ちなみに生命科学の領域では、このような大規模プロジェクトして近年ではヒトゲノム計画がありました。これも生命科学の新しい地平を切り開くと、アポロ計画なみの規模でアメリカで始まったのですが、興味深いのはその当時の日本の反応です。日本のいくつかの研究室は参加しましたし、中村祐輔先生を初めとする一部の研究者の方はこの計画に熱心だったのですが、多くの研究者や役人の方々はこのゲノム計画について「単なる地図づくりと塩基配列決定にすぎない」とか、「これは作業であって真理を追い求める研究者の仕事ではない」と批判的な立場をとっておられたように思います。一方、アメリカでは「このままだと日本に全部持って行かれてしまうぞ」との危機感から大規模な予算が組まれ(一部のアメリカ人はこのような正確さを求められる単調作業こそ日本人が最も得意とする作業だと感じたようです)、国家的戦略として予想よりもずっと早く計画を終了しつつあります。
 核融合実験炉に日本はしゃかりきになりましたが、どうしてヒトゲノム計画にはこれほど無関心だったのでしょうか?通算の予算規模はほとんど同じであったはずです。
 私は結局、日本は使用した予算に見合った大きさの、目に見える建物が得られないと動かない日本の体質があるのではないかと思います。結局、土建屋が潤わないと日本の場合は事がスムーズに進まない体質があるのではと感じるのですが、これはひねくれた意見でしょうか?

投稿: Aurora A | 2005/05/17 23:45

Aurora Aさん、コメントありがとうございました。

科学が金のかからないお遊びだった時代ではなくなり、大きな研究投資が必要になった現代、科学技術行政がどのように行われるか、大きな問題ですが、まだ未成熟のように思えます。アメリカでも、それがうまくいっているとは必ずしも思えないのですが、日本では、どのように政策決定がなされるべきか、その模索の段階にあると思います。既存研究機関の既得権、ボス的研究者のかなり恣意的発言、役所の素人ながらセンスのいい判断などによって決まっていきます。それで救われている面と、ネガティブな面とあるように思います。

ヒトゲノム計画については、私の理解はだいぶ違います。最初日本は消極的でした。それを咎めたのがアメリカです。例のワトソンがScienceに、日本は今回も何もせずにただ乗りするのか、という論説を書きました。それが刺激になって、日本も本気に取り組むようになったと思います。あれは成果公開のプロジェクトですから、日本にやられてしまうのではないか、というより、日本は何もせずに、成果を利用するだけではないか、というのがアメリカの主張でした。それ以後、日本も体制を整え、それなりの貢献をしたと考えます。私のいた研究機関にまで、何かせよとの要請があったのでした。とても無理でした。他機関が代わりを務めてくれました。

カミオカンデは、大きな装置ですが、核融合にくらべれば、何十分の一程度の予算です。土建屋もそんなに潤わないでしょう。原子力となると、スケールも違うし、そこにいる人々の感覚も違うようです。

投稿: アク | 2005/05/18 23:09

アクエリアンさん、詳しい解説を頂き有り難うございます。カミオカンデと核融合の予算規模もわからない素人です。勉強させて頂いています。有り難うございます。
 ヒトゲノム計画において計画後半からアクエリアンさんが述べられたように、ワトソンのコメントが掲載されたりして「日本も何かやれ」という流れに変わって来たようですが、計画の初期段階では「日本にやられてしまうのではないか」といった危機感がけっこうアメリカの研究リーダーの間であったようです。公聴会などでこの手の発言が一部に記録されていると聞きました。このあたりの流れや情報は京都大学の柳田先生の講演記録から知りました。結局、アメリカは途中から日本がしゃかりきに参加したとしても絶対に逆転出来ない安定的リードをとったので、今度は「少しは利用するのだから負担をせよ」という態度に変わったのではないかと思います。ヨーロッパもこの計画に関してはEMBLで早期よりそれなりの貢献をしていましたので、ヨーロッパへは強い圧力がかけられなかったものと推測されます。
 このような流れから感じる事はアドバンテージを取るまでは自発的にやる一方、自分に有利な仕組みが一旦出来るときっぱりと負担を要求するアメリカのエゴイズム(在日米軍もそうです)です。さらには独自の哲学や政策を持つ事ができず、外圧がくると途端に手を返したように(外圧が来るまで何もしないとも解釈できますが)態度を豹変する本庁の役人たちや日本の研究リーダーたちの卑屈さが見えるような気がします。私は歴史的に日本は外圧なくしては大きな政策決定できない民族性があるように感じます。
 アクエリアンさんのおられた畑違いの機関にまで、「何とか貢献せよ」といいう指令が来るところなどその慌てぶりが見えるようで何かとても滑稽に見えるのですが、私の見方はあまりにも霞ヶ関批判でしょうか?
 またアメリカの科学技術行政もうまくいっていない点は私も同意するところです。捏造は日常茶飯事ですし、生命科学においては若い優秀な人材はアカデミックなポジションはあまりに割が合わないと敬遠しています。苦労が多い割に不安定、さらには低収入と来ていますので製薬会社等に人材が流れる事は止める事ができません。生命現象のおおまかな基本原理がわかった現在においては、その基本原理が応用される局面にさしかかっており、将来的にアカデミック敬遠の傾向はさらに強まることでしょう。私はおそらくこの人材不足の問題をアメリカは将来的に移民によって解決しようとするのではないかと推測しています。アメリカは生命科学における方針を変えることなく移民法を改正、すなわち優秀な科学の人材にのみ比較的容易に永住権を持たせる制度を策定し、アジアなどの国から人材を「輸入」しようとするのではないかと予測します。
 もっとも無責任な予想ですので本当にどうなるかはわかりませんが、アクエリアンさんはどう思われますか?

投稿: Aurora A | 2005/05/19 02:30

 なるほど、です。日本は外圧に弱い、いや、外圧がないと動かない。おっしゃるとおりです。アメリカも、それを知っていて、うまく日本を動かしています。イラク戦争での、Boots on the ground なんていう一言がずいぶん効きました。

 研究開発の面で、アメリカは、当面の利にさとい。さとすぎる。その分だけ、無駄がなさ過ぎる。日本では,まだ鷹揚な研究計画が許されている。それによって、長い目でのシーズが出てくるゆとりがある。Aurora A さんのアカデミックの衰退の予感は、アメリカではその通りでしょう。でも、日本では、まだ権威主義が温存されていて、アカデミックが強いでしょう。今度の独法化で、どう変わるか、注目しましょう。極度の効率の追求は、当面よくても、いずれ変革の種になるような研究の出てくる土壌を損ないます。

 それでも、アメリカは、いつまでもこの世界でトップを走り続けている。人材を惹きつける魅力、人と違うことをやらなければという研究風土、賢く立ち回ればそれなりに豊かな研究費がえられる環境、その他もろもろ、研究者にとって依然としていい場所であり続けることでしょう。

投稿: アク | 2005/05/19 23:12

Aquarea さんの解説、興味深く拝読いたしました。

私は地元青森に住んでいます。六ヶ所村が ITER の候補地になってから、注目していました。

最初は、フランス、スペイン、カナダ、そして日本(那珂と六ヶ所)が ITER の候補地でした。カナダのクラリントンは予算の関係で脱落、日本は政治的判断で?六ヶ所に絞込み、そしてヨーロッパ連合は最終的にフランスのカラダッシュに統一し、ITER建設候補地の最終果実を手にしたといった図式です。また、中国を抱き込むなど、国際的な問題解決の巧妙さと日本の稚拙さが露呈した交渉だったと個人的には感じています。

ITER はラテン語で「道」という意味ですが(ITERのHPより)、これを国際熱核融合炉(International Thermal Experimental Reactor)で ITER はオリジナルではないという逸話もメール交換でITER ドイツの方から聞きました。ラテン語ですから「イテル」と発音するとのことでした。英語圏でも、アイター?もしくはイーター?と発音をしますから、ITER は Big Eater (金食い虫?)との冗談が飛び交っているとのジョークも聞きました。

さて、Aquarea さんのプレーヤー(青森県)のご指摘、「誘致推進のもっとも大きな力は、青森県六ヶ所村に大きな負債を背負い込んでいる国と経団連、そして地元利益の欲しい青森県だったろう。」はとても的を得た分析だと思います。むつ小川原に、石油プラントをはじめ、化学工場、自動車産業、などを誘致し「後進県」(今は、使われない用語です)からの脱却を切望したプロジェクトでした。しかしこれは束の間の夢、誘致されたのは石油備蓄基地と原子力3点セット(放射能葉器物貯蔵施設、ウラン濃縮工場、プルトニュウム分離再処理工場、そして最近は MOX 製造工場が追加)でした。これは結局積極的に望んで誘致する他自治体がなかったおこぼれです。

ITERの誘致が「負けるが勝ち」との見方もあるでしょう。ただ、私が気になるのは、プレーヤーの一人、青森県の主体性が何処にもなかったと思われることです。県民に対する説明(パンフ、テレビ、ラジオ)はほとんどなかった様に思われます。私の印象に残るのは、六ヶ所村長の「明日にでも地上に太陽が実現?」的な付け焼刃的PRでした。

何もないから、ITER誘致? とでも言った「主体性」のない誘致に動く体質は、あの破綻したエンロンが巨大LNG発電所建設計画を打ち上げた時も同じでした。何処にも「青森県」が出てこない、「青森県の主体性」が見当たらないことです。結局、「中央で決まった」「外国ではこうやっている」の他人任せの構図です。これはとても寂しいことです。

翻って、Aquarea さんの解説に戻ると、兆を超える巨大プロジェクトに、結局「誰も」責任を持った推進役、もしくは反対役もいなかった事が明確になりました。理念・グランドデザインがなく、「利害関係」だけで誘致、誘致の構図が垣間見えました。

でも、「しかし大部分のプレイヤーは、この結果を予見しながら演じてきたのではないか。最大限がんばって、結局来ないのが、最良の結果だと思っていたと推察する。そういう意味ではよかったと言える。」そして「プレーヤーを絞って、本音の第2幕が始まるかもしれない。」だとしたら、これに振り回された「青森県民?」何でも下にランクされる四十数番目県は結局また「裏切られた!」の感想を持ち落ち込んでいることだろうと思ってしまう。

投稿: かおるちゃん | 2005/05/23 16:24

かおるちゃん、さん。ていねいな書き込みありがとうございました。ちょっと出かけていて、レスが遅れました。
かおるちゃん、さんの書かれたことが、私の言い足りなかったことを補ってくださっています。

 青森県での政府と県がタイアップしての開発の失敗の歴史、については、私も耳にしたことがあります。甜菜とか、製鉄とか、あるいはもっと過去があるのでしょうか。きっとまとめて論じたものがあるのでしょう。今回の件は、それに新たな一ページを加えたことになりますね。どうして青森県がそうなのか、的確な分析を知りません。周辺各県や北海道と何が違って、こうなっているのか。興味があります。地方と中央と、どうあればいいのか、そのところを根本的に考えさせられる事例です。

 「大多数のプレイヤーは・・・」は、青森県にはちょっと酷ないい方でした。しかし、文科省や、ITERに関わっている研究者や研究所経営者などは、意外にこんなところが本音かと、私は推測しています。

 またご意見をお寄せください。

投稿: アク | 2005/05/26 09:30

アク さん

コメントありがとうございます。

「開発の失敗の歴史」良くご存知ですね。甜菜はビートを栽培し、グラニュー糖を作ろう、製鉄は下北に比較的豊富な「砂鉄」を原料に溶鉱炉を作る計画でした。まだ、「鉄は国家なり」の言葉が残っていた頃ですね。その後、日本列島改造論?の頃、「むつ小川原巨大開発構想」が持ち上がり、「壮大な夢」のバラまきがありました。その負の遺産は「不良債権」として残っています。

また、ITER の候補地六ヶ所村周辺には、満蒙開拓団として送られた方々が、敗戦で何処にも行く所がなく開拓地と称した荒野に放り出されました。下北は昔、斗南藩を名乗り、戊辰戦争で破れた会津藩兵とその家族が移住された流刑地です。そして、何処でも積極的に受け入れない、原燃3点セットが、むつ小川原開発の失敗の穴埋めを幾らかでも埋め合わせするために?誘致されたと考えると、この地は国家の「棄民政策」の実験場かと皮相な見方をしています。

ITERは、中性子で汚染される、金食い虫、他の研究開発の予算が削減される、などなど批判されていました。が、ある意味で「陽」の側面もあると考えます。特に、日本が国際的なビッグ・プロジェクトでその力量が試される、学術の面ばかりでなく、政治・経済・文化も含めて、とても貴重なチャンスであったとの見方もできるのではなかったかと思います。

国際的なプロジェクトですから、いわゆる日本的な村意識では運営はできません。また、ホスト国ですから、独自性と主体性(我儘ではなく)もかなり要求されます。とすれば、官僚、学者、経済人などの真の国際人(あるかどうかわかりませんが)への脱皮が促され、ITER を介した、「日本人の意識構造改革」とでも言った部分にも大きな影響を与えたと思います。限られた研究者をカラダッシュに送っても、彼らはあくまでも選ばれたエリートです。そしてその影響力は限定的です。もし、ITER が六ヶ所に誘致されれば、何千人、何万人に刺激を与え、それも長期(50年?)に渡りますから、それは建設費負担の数千億と比較してもその数倍、数十倍の様々な効果があると考えます。

それは、日本列島改造論のようなハードの改造ではなく、日本人の意識の壮大な改造計画とでも言ったもので、このような視点から発言するリーダー(為政者、研究者)が出てこなかったのはとても残念でした。

投稿: かおるちゃん | 2005/05/28 14:10

今日の新聞が、昨日(6/13)の「日本誘致実現総決起大会」のことを伝えていたことから、返事を書くのを怠っていたことを思い出しました。お歴々が顔をそろえ、これでもがんばったのだぞ、とのポーズを見せて、幕引きとなったように見えます。ギブアップの代償が、遠隔操作(日本にいても、現地にいるのと同じように実験ができる)とか所長のポストとかのようですね。青森県には、何もありません。材料試験装置はかつて話題になりましたが、本当にいるのかどうか。当事者はどう考えているのでしょう。

ところで、かおるちゃんは、ITERが来ることによる地域の国際化に期待を持っておられたようですが、どうでしょうか。私はあまり期待できなかったろうという見方です。日本に決まったら、ヨーロッパは自分たちで代替の装置をヨーロッパに作ることにしたでしょう。日本に大挙してやってくるなんてことはなかったでしょう。その他の支援も大したことはなく、日本ひとりできりきり舞いをすることになったのではなかったかと思います。プロジェクトはぽしゃったかもしれません。たとえ予定通りいったとしても、想定されているようなことになったかどうか。日本にも国際レベルの研究機関があり、国際協力もやっており、外国人も来ていますが、地域にインパクトのあるほどのものになったためしがありません。外国の国際研究施設に行ったり、滞在したりしたこともありますが、研究所も研究者も閉鎖社会を作っていて、地域とそれほど交流があるようには見えませんでした。

青森県は、今回も壮大な夢を見させられ、またもや夢が破れたのではなかったかと思います。酷ないい方ですが、外から何かが来ることによって現状が変わるという地元の期待がむなしいように見えます。

投稿: アク | 2005/06/14 16:25

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