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2005/05/20

団塊の世代の老後

 団塊の世代が、まもなく定年を迎える。多くの人がそれを問題にしている。2007年問題というのだそうだ。戦後まもなく生まれたこの世代を「団塊の世代」と名付けた堺屋太一が、雑誌「文藝春秋」に、3回にわたって「新団塊の世代論」を書き、6月号で最終回となった。「団塊お荷物論」や、「暗い定年後」というイメージを排し、

 60歳を迎える団塊の世代は、新しいタイプの働き手であると同時に、新しい巨大な市場でもあるのです。団塊の世代が60代である2007年から2017年は、まさに「最高の十年」となるのです。

と書いている。いろいろな助言や提言が書かれている。主なところを拾うと

・70歳まで、好きな仕事をして働け。
・給与の50%ダウンは、問題ない。可処分所得はかえって増え、豊かな生活ができる。
・自分のために金を使え(子や孫に金をかけたり、残したりする必要はない)。
・企業の側にとっては、団塊世代の良質な労働力の活用に成功するかどうかが、これからの鍵。
・豊かな団塊世代は定年後も、巨大市場をつくり出す。彼らの消費動向を見定めて、的確な市場を創出する企業が伸びる。
・年金、医療、介護、資産運用、相続などについて、制度面での改革(大胆な民営化など)が必要。

 団塊の世代より十才以上年長の、私の退職経験(ホームページ本館に書いてきた。仕事を辞めるまで仕事を辞めてから)からすると、うなずけることが多い。退職後の生活は、暗いものではなく、むしろそれからが本当の人生を楽しめる時期である。そう実感している。堺屋太一は、四季でいえば、老年期は、冬ではなく、実りの秋だ、という。秋を象徴する動物は、虎。動き回ることなく、群れることなく、淡泊な気分で、実りを待つ。群れるのが好きで、会社依存体質の団塊の世代に、これからはひとりひとりが虎になれと、奨めている。私が、上記シリーズで書いてきたことも、同じである。

 定年後の生活についての不安は、誰にもある。これまで退職したものはみな、そこを通り過ぎてきた。団塊の世代が退職するからといって、個々人にとっては、これまで誰もが体験して来たことと変わりはない。退職者はみな、ひとりで問題と向き合い、自分なりの対応をしてきた。団塊の世代が特に不利な条件下に置かれるわけではない。それがこのように社会問題となるのは、彼らの集団としてのマスが大きいからであろう。

 団塊の世代とともに、世相が変わってきた。この世代が、社会を特徴づけてきた。彼らが、社会の標準モデルだった。家電を中心とする消費財マーケットも、住宅も、サラリーマン像も、家族像も、あるいは教育事情も、都市における政治風土すら、彼らの成長とともに変わってきた。その彼らが、これから老年者の生き方スタイルを変え、新しいモデルを作りだしていくことだろう。

 私ら、団塊以前の世代にとっては、団塊の世代が、退職者に仲間入りしてくることは、プラスでもあり、マイナスでもあろう。老齢者向けの市場の拡大と質の向上は、ありがたい。最近はともかく、これまでは老齢者は、社会からは、なおざりにされたり、邪魔者であったり、暴利をむさぼる対象であったりした。良質なものを求め、口うるさい老齢者が増えてくるにしたがい、老齢者向けの市場は競争にさらされ、淘汰が進むだろう。『もう一度この手で、抱きしめたい』の春山満がやっているようなことが、一つの良いモデルになるだろう。

 団塊の世代が、退職者となり、自由に好きなことをするようになることは、脅威だ、ともいえる。これまでは老年者の密かな楽しみだった場に、多数の新参者がやってくる。平日の公園、デパート、本屋、あるいは図書館は、空いていて、ゆっくり楽しめる空間だった。まもなく、そこに、たくさんの元気な老人たちがウロウロする、という恐ろしい事態が出現する。良質な海外旅行も、比較的少数の老齢者が特権的に享受していたものだった。ここに元気な「若年老齢者」たちがひしめくことになる。今のように安閑としておれなくなる。私たちは、もう一つ別の、もっと経験を積んだ老齢者の楽しみ方を探していくことになるのだろうか。それとも、彼らが黄金の十年を楽しむ時期には、70代老齢者は、60代老齢者に押しやられ、ひっそりと陰にひそむことになるのだろうか。団塊世代の定年は、上の世代にとって問題でもある。

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