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2005/07/22

小沢征爾、今年も水戸でやってくれた

050721Ozawa

 小沢征爾の音楽を生で聞けるのは、水戸に住むものの特権であると、小沢の水戸来演のことをブログやHPに書くたびに、くりかえしてきた。毎年1度か2度、水戸室内管弦楽団の指揮にやってくる。今年もその時期が来て、昨日(05/7/21)から3日間定期演奏会が開かれている。彼はサービス精神旺盛である。みんなに音楽を楽しんでもらいたい。しかしコンサートのチケットの入手は難儀である。そんな事情を小沢はよしとしない。今年は新企画がおこなわれた。昨日、コンサートの初日、会場から1kmほど離れた、千波湖畔にある芝生の広場に大スクリーンを置き、コンサート会場の中継をしてくれたのだ。事前申込は必要だったが、無料である。主催者の予想を超えて、4千人が集まった。

 コンサートのチケットは、今日(7/22日)の分を買ってあったのだが、初めての野外中継も面白かろうといってみた。芝生に広げるシート、ビール、おにぎりなどを用意して、開演2時間前に出かけた。会場近くの駐車場に車を入れられるか、それが心配で、早く出かけたのだ。この日のために、会場の隣に臨時の駐車場が用意されていて、その心配は無用だった。同じように早めに来た人々で芝生広場は、ピクニック気分。食べ物や生ビールを売るテント小屋などもあった。思い思いの場所をシートを広げて確保しながら、夕食を楽しんだ。昨日は、涼風が吹き、時には遠雷も轟いたが、雨にもならず、野外コンサートにはちょうどよい日和だった。時ならぬ音響と人のざわめきに、近くの森をねぐらとするカラスたちも、戸惑ったのか、あかねさす夕空を背景に、群をなして上空を舞いつづけていた。

 380インチの大スクリーンと、大きく、複雑な構造のスピーカーを使っての中継は、NHKの協力で実現したものだ。私らのいた前方の席では、コンサートホールで実際に聞く音を上回る大音響で、迫力があった。映像では、コンサートホールでは後ろ姿しか見ることのできない小沢の指揮ぶり、とくに表情を、クローズアップで見ることができた。水戸室内管弦楽団は、小編成ながら、名手を集めている。何度か見ているので、常連の顔は、なじみとなっている。そのプレイヤーたちの演奏ぶりも、大きく映し出される。これは誰さんだ、あれはあの人だと、うなずき合いながら楽しめた。こんな野外でのコンサート鑑賞など、はじめてのことだが、くつろげてなかなかいい。ラフな格好で、足を投げ出して、音楽を聴く。単なる映写会ではなく、1キロほど離れたコンサートホールで実演されているものを、同時的に見、かつ聴いている。コンサートホールにいるのと違った、開放的な臨場感もまたよかった。

 おまけがあった。アンコール演奏を弦楽器部門だけがやっている間に、管楽器の人たちが、野外コンサート会場に駆けつけて、予定外のミニコンサートをしてくれたのだ。オーボエの宮本文昭、フルートの工藤重典ら、国際的に活躍している人たちが、屋外でイベント風に演奏をしてくれるなど、考えられないことだった。やがて大声援のうちに、小沢も現れた。赤いTシャツに着替えて、みんな楽しんでくれましたか、とうれしそうだった。このおまけの催しは、野外中継のことを聞き、そこに数千人が集まっていると聞いて、開演前に小沢が、そこに行きましょうと、にわかに決まったものだという。管楽器の連中の演奏は、事前の準備がなく、ファックスで楽譜を取り寄せたりして間に合わせたらしい。小沢のサービス精神がみんなを動かしたのだろう。

 感動的な場面があった。中継画面でのシーンだったが、アンコール曲の演奏が始まる前に、小沢がマイクで、ひとこと話しをした。水戸室内管弦楽団は結成15周年になること。小沢らを育てた斉藤秀雄が亡くなる直前、車椅子で最後に指揮をした曲、モーツアルトのディベルトメント K.136 第2楽章を、斉藤先生の当日の演奏を偲びながら演奏すること。ちょうどその頃水戸芸術館の館長を委嘱された吉田秀和が、水戸室内管弦楽団(MCO)の編成を構想していて、斉藤先生門下のオーケストラ・メンバーが主力となってMCOが出来、その最後の演奏に加わったメンバーも、ここにいること。そんなことを話したあと、心に沁みる第2楽章が演奏された。終わってから、コンサート・ホールの中程にいた吉田秀和を紹介し、今この楽団があるのは先生のおかげです、ありがとうございます、と話したときには、小沢は涙を流していた。大スクリーンに映し出された小沢のぐしゃぐしゃになった顔を見て、この純なところに、この人の音楽の良さがあるのだとあらためて思ったのだった。

 エントリの最初に水戸にいる特権と書いたが、小沢の切符は、水戸にいても、入手は容易ではない。水戸芸術館の会員になっていると事前予約制で申し込めるが、抽選で当たる確率はそう高くない。今年はそれに外れてしまったので、連れ合いのみやは早朝4時半からチケット購入の列に並んだ。そのチケットを持って、今夜はコンサートホールの閉じた空間で、少しかしこまった気分で、もう一度演奏を楽しんでくる。曲目はすべてモーツアルト。ホルン協奏曲や交響曲「プラハ」である。

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