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2005/07/09

ロンドンの血の歴史に、新たな一頁が

ブルームズベリーが現場とは ロンドンの同時多発テロが起きた地下鉄駅の一つ、「ラッセル・スクエア」の名前を聞いて、現地の様子を懐かしく思いおこす。ここは、ブルームズベリーと呼ばれる地区で、南に大英博物館、その北にロンドン大学が広がる、静かな文教地区である。2階バスの爆破現場になったタヴィストック:スクエアは、1ブロック隔てて、対になっているゴードン:スクエアとともに、住宅用の建物や、大学の建物に囲まれた、こぢんまりとした広場である。ゴードン広場に面した住宅の幾つかには、かつて有名な作家、学者そして芸術家たちが住んだ。それぞれの住宅には、そのむねを書いた銘板がつけられている。20世紀前半、ブルーズムズペリー・グループと呼ばれる文化人たちがこのあたりに住んで、互いに往き来しながら、真実・美・自由をひたすら追求する創作活動をおこなった。なかでもヴァージニア・ウルフやリントン・ストレイチーが有名である。経済学者のメイナード・ケインズもこのグループの一員だった。それから60年、70年の時を隔てて、ロンドンは変わった。ニューヨークに匹敵する多民族都市となった。しかし、このあたりの佇まいは、ブルームズベリー・グループが活躍していた時代とそうは変わっていない。ただ今回は違った。地下鉄駅からは、血を流した人々が煙に巻かれながら出てくるは、タヴィストック広場わきの通りでは赤いバスが吹き飛ばされるは、という事態になった。古き良きロンドンを愛する人々にとっては、とんでもないことだが、ロンドンはもともと血なまぐさい事件の繰り返された都市である。そこに新たにテロという1ページが加えらえたことになる。

"Economist" の速報的分析 このテロをどう考えたらいいのだろう。昨日今日と、海外のメディアやブログを追いかけたみた。いち早く事件をクールに分析して見せてくれた Economist "London under attack"。いつ起きても不思議でないテロが起きた。G8の開会時にあわせて、4カ所同時という組織的なテロにしては、犠牲者の数はニューヨークやマドリードと匹敵するほどの、千人や百人の大台とならなかった。犠牲者を悼むが、テロとしては失敗だったのではないか、セキュリティ強化が、テロリストにこれ以上大規模なテロをさせなかった、と分析するなど、大胆なコメントだ。都市はこの種のテロを完全に封じ込めることはできない。しかしテロリストも都市の日常生活を止めることはできない。まもなくシティはいつもの快活な生活を取り戻すことだろう、と早々と楽観論を吹く(テロの成否を犠牲者数で計算するドライな論調にあきれる)。

Friedman は例のごとく NYTでは、Friedman のOp-Ed If It's a Muslim Problem, It Needs a Muslim Solution を読んだ。9/11と違って、今回は相手が見えない。やり返すにも、どこを叩けばいいか分からない。これは、”civillization fallout だ(文明のファールアウト、大気圏原爆実験による放射性降下物、死の灰、に喩えて、テロはイスラム世界から降ってくる死の灰のようなものだ、といいたいようだ)。そうだといって、イスラム世界全体を西側が閉め出すわけにはいかないし、どうしたらいいか。イスラム世界にしか、彼らの生み出した暗殺集団の始末をつけることはできない。これはイスラム村の問題で、村が自分らの問題を片づけるべきだ、だいたい、イスラムの高位聖職者たちのなかで、オサマビンラディンは怪しからんと、法話で語った人が一人でもいるのか、とかなりイスラム世界を非難する口調である。

Friedmanはまたもや間違えた発言を、と Cole 教授 この最後の点については、アメリカのイスラム情勢の専門家 Juan Cole ミシガン大学中東史教授は、自分のブログ:Informed Comment で、各国の多数の高位聖職者がビンラディンを非難する声明をこれまで多く出していると、いちいち列挙して、Friedmanは、それを知っていながら、誤った発言をくりかえしていると非難している。

Cole 教授の昨年9月の発言を読み直す Juan Cole 教授のアルカイダとその思想の継承者についての分析は、さすが専門家だけのことはあると、かつて、このブログで紹介したことがある(「オサマ・ビンラディン側から見たら」(04/9/19))。それを今読み返してみると、Cole教授の当時の結論として引用した部分

 米国はテロとの戦いに勝利しつつあるとはいえない。アルカイダもまた勝利したとはいえない。しかしこれまでの成り行き全体を展望すれば、米国が目標を達成した度合いより、アルカイダが達成した度合いの方がはるかに勝っているといえる。

は、現時点でも全く変わっていないのではないかと思う、

アルカイダとそれに連帯するものたちの思うつぼに アメリカのブッシュ大統領はくりかえし、テロとの戦いに勝利しつつあり、世界は以前よりは安全になったと、強弁するが、その逆であることがますます明らかになっている。9/11のあと、アフガニスタンに侵攻してタリバンを倒し(ビンラディンはいまだに取り逃がしているが)、さらにはイラクを侵略してフセインを倒した(多くの反フセイン感情の若者たちを、反米自爆テロリストに転向させてしまったが)ことで、かえって世界各地でテロの危険度が数段格上げになってしまった。今回テロリスト側の声明と称するものには、イタリアやデンマークをあげているが、今やアメリカに同調して戦う国とその国民は、いつテロの標的にされるか分からない状態になっている。テロとの戦いにおいては、ビンラディンと、その信奉者、あるいは、彼らに緩く連帯して戦うイスラム過激派テロリスト側から見ると、彼らは明らかに戦略的勝利を収めつつあり、西側世界は、かれらの思うつぼにはまりつあるといっていい。

自爆テロ志願者は増えている ではどうしたらいいのか。誰もがテロにひるんではならないという。そうだろう。では、テロリストとの情報戦に勝利し、彼らのテロ行為を未然に察知し、それをすべて止めることができるだろうか。ますます自爆テロ志願者のウェイティングリストに加わる若者が増えつつある(TIME05/7/4に、イラクでの自爆テロをまもなく敢行する若者のインタビューが掲載されている。アメリカ侵攻までは、普通の生活を送っていたファルージャの若者が、どのようにして自爆テロを志願するに至ったか、生々しく伝えている)。テロリスト集団を全滅できるか。おそらくできまい。このように陰惨なテロが、あちこちで続くことだろう。何年も何十年も、この状態は続くのかもしれない。

Cole 教授の分析 アルカイダとそれにつながる集団が何を考えているか、もっとよく知って、対応を考えるべきだと、上記の Cole 教授はいう。今回は、自分のブログ(上記)以外に、Salon.com に”Time to revenge has come" との論説を寄稿している。また多様な信仰者をつなごうとするブログ Beliefnet に、インタビューされる側として登場し、"The Theater of Sacred Terror" というタイトルのもとに、さまざまな問題点に答えて、的確な分析を返している。それを詳しく紹介するのはやめておこう。

テロを止めさせることはできる インタビューの最後の質問「テロを止めさせるのに、西側、あるいはイスラム側がやれることがあるか」との質問に、彼はあっさりと答えている。

 あります。パレスティナでのイスラエルーアラブの対立をパレスチナ人が望む方向で解決すること。アメリカ軍がイラクを撤退すること。アフガニスタンの再建に力を注ぐこと。この3つをやれば、テロの90%はなくなります。

ブッシュはテロを煽っている テロリストはイスラムの人々の心情的サポートを背にしている。もし、3つが実現すれば、テロリストに味方する人はぐっと減る。そうしたからといって、テロリストの要求に屈したことにはならない。むしろ、それがテロとの戦いに勝つ、唯一の道すじである。現在まで、ブッシュのやっていることは、これと全く逆であって、火に油を注ぎ、味方につけるべき人を、敵方に追いやっている。その結果が、ロンドンでの血の犠牲である。 

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