« 花酵母の純米吟醸酒「来福」 | トップページ | 僕が「くろご5号」になったわけ »

2005/07/27

野口宇宙飛行士にばかり注目するアホな報道

 スペースシャトル Discovery の打ち上げが成功した。関連の報道では、野口さんのことに焦点が当てられている。いつも通りの日本の報道の意識の低さにあきれる。イチローや松井が何本ヒットを打ったかだけに焦点を当てて、毎日飽きずに話題にしているアホなスポーツ報道と同じレベル、いや、個人の非凡な力量ゆえではないのだから、もっとレベルが低い、ともいえよう。国際的な田舎っぺですな、日本人は。

もはや宇宙飛行士はヒーローではない 今のシャトル乗組員は、もはや最初の宇宙飛行士ガガーリンや、初大西洋横断飛行のリンドバーグとは違う。巨大なシステムのなかで、分担して役割を担っている一員に過ぎない。前回のコロンビアの事故があった後から、多少リスクを背負っているとはいえ、別にヒーローであるわけではない。それだのに、野口がどうしたとか、何といったとか、何をやるか、そんなことばかり報道する。おまけに出身地の人々、出身校の同期生や後輩らの喜びようを伝えるなど、過熱する報道を見ると、恥ずかしくないのかと皮肉を言いたくなる。日本がお金をたくさん出しているのです。それだけのこと。

 成功の意義 Discovery の打ち上げや、いずれの無事帰還まで、今回の成功の意義は、アメリカNASAの技術集団が、03年2月の Columbia 事故以来2年半かけて、アメリカ世論の批判に耐えながら、事故を究明し、シャトルの弱点であるといわれる技術的問題に、いかに万全の対応をとってきたか、にある。今回の打ち上げのヒーローは、地上にいて、安全対策が無事に役割を果たしたのを確認してホッとしている技術陣や、マネージメントを担ったトップ陣だろう。一時は、シャトルも軌道ステーションもポシャルかと思われたが(私は、それがいいと考えているが)、リーゾナブルな対応策をねばり強く実現した技術者たちと、大きな組織をまとめて方向を出したマネージメントはほめられていいだろう。こういうところで発揮される総合力は、アメリカのすごいところだ。

 そこにまず関心が行くべきで、極端にいえば、Discovery に誰が乗っていて、シャトルの安全対策に沿って、船外に出て耐熱タイルの修理テストなどをしようと、それは組織の一齣としてやっているだけの話に過ぎない。何がこの打ち上げ成功をもたらしたのか、その意義は何か、というポイントを外して、野口さんのことばかり興じるのは、あまりに身びいきな偏りだろう。

有人宇宙活動は必要か かつてHPに書いたことだが(『スペースシャトルはいらない』)、有人宇宙活動の意義は余りない。国際宇宙ステーション計画が進んでいる。日本も莫大な費用を負担している。しかし何をするのか、あまり展望はない。金をかけるわりに、科学技術的に画期的なことは何もない。意味のある研究テーマに窮しているほどだろう。アメリカやロシアにとっては国威がかかっているから、まだいい。日本はこの金食い虫計画に対する気前のいいスポンサー役を演じている。

宇宙観光ツアーしか 科学的に意味のある宇宙探査は、無人で十分できる。先日の彗星への金属塊衝突実験とか、ハッブル望遠鏡などが、それを実証している。宇宙開発関係者は、将来的に費用に見合いそうなのは唯一、宇宙観光旅行だという。大金をかけて、南極や北極に行く、あるいは、エヴェレストに登る。今はそんな時代になったが、将来は、宇宙飛行もツアーの対象になりそうなのである。

 宇宙開発の華々しさと、日本人宇宙飛行士の活躍に浮かれるより、どれだけ金が使われているか、それほど意義のあることなのか、よく考えてみた方がいい。

|

« 花酵母の純米吟醸酒「来福」 | トップページ | 僕が「くろご5号」になったわけ »

コメント

暑い日々が続きますが、お元気ですか?久しぶりに訪問し、暑さに負けない白熱した理論展開を楽しませていただきました。
宇宙開発の意義は旅行ぐらいとのこと、
宇宙に出かけた人達の少なくない数が、ある種の啓示を得て帰ってきているようです。
その中心は地球の美しさとかけがえのなさに感銘を受け、一方、環境破壊や地域紛争を宇宙から目視することを通じて、神の視点や、東洋的悟りを感じたりしているようです。
その意味で、今後民間人の多くが宇宙に出かけ、この種の洞察を我が物とすることが続けば、人類にとって最も意義あることになると考ますが、いかがですか?

投稿: 魔法使い | 2005/07/27 18:57

追伸、今後、大いに出かけて欲しい人は文型感覚を持った人達です。理系に凝り固まった人は、上記の体験に鈍感な方もいる。宇宙をただ、じっと見つめてきた詩人、絵描き、小説家など、文型人間を送り込むことが、人類の役に立つ近道と言うのは言いすぎでしょうか?
ちなみに私は建設部門の技術士の端くれです。

投稿: 魔法使い | 2005/07/27 19:03

 魔法使いさん、早速お目にとまったようですね。なるほど、文系人間を、宇宙に送り出せ。私も理系に凝り固まった方ですから、何ともいえません。かつてガガーリンが宇宙を飛んだとき、神がいるという天を人間が支配したのだから、これで神はいないことがみんな分かっただろう、などというとても単純な感想を語ったのも理系人間でした。
 宇宙に行くという体験によって、精神面に大きな変化を受ける。啓示ともいえるような。それをインタビューで聞き出して書いたのは、立花隆でしたね。大気圏を飛び出し、無重力空間を漂うというのは、確かに希有な体験でしょうから、そのことで、何かを感じるということはあるでしょう。高い気高い山に登る、秘境へ行く、見たこともない美しい風景にであう、・・・いろんなことで、人は霊感ともいうようなものを感じるようです。ただそれが、人智を超えた何者かを知ることになるのか、単なる感情の高まりに過ぎないのか。私は理系ということではなしに、神秘主義への傾斜には否定的です。立花隆は、「臨死体験」にしても、脳その他の先端科学のとらえ方にしても、詭弁に近いことをいっているように、私はとっています。
 書きこんだあと考えたのは、イチローにしても、野口さんにしても、日本人は自分たちの到底できないことを、彼らが、いわば身代わりにやってくれている、と喜んでいるのだな、ということでした。そのあたりをもう少し汲んで書くべきだった、と思いました。彼らが華々しくやっていることを見ることで、わがことのように、みなさんは喜んでいるのですね。第一線で活躍している同郷の士を、わがことのように喜ぶ心境でしょうか。その素朴な気持ちまで、アホというつもりはありません。しかし、マスコミはもう少し高い見地に立って、報道の見識を示してほしいと思って書きました。マスコミは、一般受けするように感情におもねる報道作りをするのが問題です。

投稿: アク | 2005/07/27 20:41

野口飛行士達が、無事地球に戻ることを祈ります。

「今やヒーローではない」と言えるよう、無事に戻られることを。

投稿: 安孫子です。 | 2005/08/08 20:25

安孫子さん、どうも。
安全に打ち上げ、安全に帰還すること自体が、自己目的化したような今回の飛行です。アメリカの国民に、そして外国人に無事を祈らせ、盛り上げた上で、無事の帰還。それでNASAの術中にはまるのです。あえて人の命を賭けるような有人宇宙は、どうなのでしょう。今回、あれだけ対策を講じながら、やはり断熱材の脱落があった。シャトル技術は、もう限界でしょう。いつ次があるか。もうないかもしれません。

投稿: アク | 2005/08/09 16:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36654/5176889

この記事へのトラックバック一覧です: 野口宇宙飛行士にばかり注目するアホな報道:

« 花酵母の純米吟醸酒「来福」 | トップページ | 僕が「くろご5号」になったわけ »