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2005/08/14

小泉政治、危険な単純化

 私は、何度も書いてきたが、小泉改革に賛成の立場だ。もちろん郵政改革にも賛成だ。しかし、今回の小泉首相のやり方に、危険なものを感じる。郵政改革に賛成か反対か、それを問うのだという。非常にわかりやすい。対立軸をわかりやすくして、その是非を問う。負ければ辞めるという。いさぎよく、純粋で、往生際が良さそうに見える。しかし、これは危険な大衆操作ではないか。過激である。穏やかさを重んじてきた日本人の体質が、この危険さに本能的に気づいて、ノーを言ってくれればいいが、一方では、日本人は、この種の単純化にのせられてきた前歴もある。心配だ。

小泉首相の政治手法 小泉首相の言うことは、いっけん明快である。対立点をはっきりさせ、反対するものの存在を明らかにし、悲壮感をただよわせて正義のため悪と戦う、といった筋立てに持ち込んで、国民の支持を得てきた。しかし、仔細に見れば、対立点は単なるスローガンに過ぎず、政治思考のレベルはシンプルそのものだが、政治手法はしたたかである。その政治手法に、手だれの自民党政治家たちが、抵抗するすべもなくやられてきた。野党となると、この政治劇の舞台にすら登場させてもらえずじまい。

過激派・小泉 小泉首相は、過激である。他人の言うことはいっさい聞かず、自分の思いこんだ政治信念を貫こうとする。スジも通さず、仲間内での駆け引きと妥協に明け暮れる政治家をずっと見てきただけに、妥協せずに闘う小泉首相に爽快さを感じてしまう。これが危険だ。混乱した政治状況から、単純で大衆受けする政治スローガンを掲げ、実行力のある政治家が現れて、一気に政治局面を転回する。最初は救世主に見えるのだが、結果は悲惨な事態に陥る。歴史はそのような事例に事欠かない。

郵政改革が最優先か、まっとうな疑問が吹っ飛んだ 日本の政治財政のシステムがこのままではうまくいかない。それをどうするか。小泉政治は、ある程度その手当をして、一部成功してきた。しかしかけ声倒れで、実質がさっぱり伴っていない面もある。この段階で、郵政改革が最優先に手をつけるべきことか。多くの人々は、よく分からずにいる。疑問に思っている人も多い。しかし、解散という荒技まで使って、決然とこの問題を前面に掲げた舞台回しの巧みさに、その疑問は吹っ飛んでしまった。

過激な単純化は不幸を招いてきた 政治の歴史で、為政者によるこのような単純化が、しばしば行われた。それはおおむね国民に受けた。しかし結果は、国民を不幸に陥らせることが多かった。後になって、あそこで俺たちは騙されたのだと、ほぞをかんだ。大東亜共栄圏という幻想は、当時多くの国民に支持され、結果は悲惨な戦争へと至った。列島改造というわかりやすいスローガンは、巨大な土建国家を作り、バブルとなってはじけた。アメリカでは、悪漢国家を退治して、民主制を広めるのだという、西部劇的でわかりやすいブッシュ政治が、過半のアメリカ人に支持を受けて進められている。その功罪は未だ明らかではないが、テロリズムの火を煽るだけで、成功しそうに見えない。共産主義体制の下とはいえ、文化大革命のもたらした不幸も思いおこす。

単純化には、中庸の精神で こういう単純化が過激さを伴って主張されるとき、大事なのは中庸の精神を取り戻すことだ。本能的に、これは行き過ぎだ、おかしいぞ、と感じることだ。煽られそうになったとき、バランスを回復するのだ。この面での私のものの考え方の教師は、モンテーニュだが、この事態に適切な引用箇所を思い出せない。とりあえず、以下の引用をしておこう。

 ある政治の不完全を非難することはやさしい。まったく、この世のものはすべて不完全に満ちているからだ。一国民にその古来の習慣に対して軽蔑させることも、甚だやさしいことだ。これを企てて成功しなかった者は一人もない。けれども、いったん打ち倒した状態を、前よりも一層よい状態に建て直すことは、多くの者が企てたが、いずれも無駄骨折りに終わった。

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