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2005/09/12

予想はしたが、こんなにひどいとは

 解散直後、多少の予感がして、小泉政治、危険な単純化(05/8/14)を書いたのだったが、こんなにひどい結果になるとは思わなかった。まともな政策上の判断を国民がしたとは思わない。ムードに流された。こんな弾みみたいなもので、大きく振れるのが、政治なのだろう。小選挙区制の恐ろしいところでもある。この結果が、これからの日本にどんな状況をもたらすか。私は暗澹とした気持ちでいる。

政界再編の期待があった 後世、日本の政治の歴史で、小泉時代がどのように評価されることになるのだろうか。大きな流れとしては、小さな政府を指向し規制の少ない競争社会の実現をめざず自由主義と、弱者をいたわり平等を重視するリベラルとの二極に政界が再編されていくだろう、それがよいと、予想していた。自民と民主は、その対立軸に必ずしもなっていないし、公明が自民と連合しているのは、対立軸からして、ねじれている。何度かのガラガラポンで、もう少しわかりやすい対立軸にそって政界が再編されることを期待してきた。

再編の芽はなくなった しかし、今度の圧勝は、再編の方向を、当分の間そらしてしまうことだろう。小泉首相の政治目標としては、郵政改革のあとに何があるのか、さっぱりわからない。小泉の傘の下には、さまざまな考えをもつ政治家たちが混然といて、政権を固守することを至上としている。小泉が切り捨てた勢力が力を失うことで、日本の政治地図が変わるとも思えない。新たに小泉の旗の下に馳せ参じ、政治の世界に参入してきた若い世代にも特別の意味を感じない。「自民党は新党になった」と小泉首相はいうが、自民党の古い体質は、依然として温存されるだろう。

小泉熱の冷めるのを待つ 大きく太った与党勢力が、どのような力学で動いていくのか、予想は難しい。小泉をさらに担ぎ上げるのか、それとも小泉は郵貯までで、急速に次期政権に向けて関心は移るのか。次の大きなイッシューで、内部分裂を起こすか。それとも次の選挙までに、小泉熱が冷めて、この選挙結果への大きな揺り戻しがあるか。そんな時期まで待つしかないのだろうか。

セックス・アピールのある小泉 選挙結果には、さまざまな感想が飛び交っている。まあ、だいたい誰もが言いそうなことを言っているだけだ。そんな中で、おやっと思ったコメントを二つ。今朝のテレビで鳥越俊太郎が、これまであまりあからさまにいう人がいなかったが、あえて言ってみると、「小泉さんには、男性にとっても、女性にとっても、セックス・アピールがある。それが小泉さんを勝たせた一つの要因だ」と。当選した片山さつきも、このコメントにうなずいたが、「決断が早いこと、勝負勘があること」にそれを感じると、少し話をそらせていた。

小泉という物語を演じる小泉 もう一つは、選挙結果が出る前に、書かれたものだが、福田和也が、文藝春秋10月号で小泉さんは徹底的に自己愛に取り憑かれた人間として、小泉純一郎という物語を演じていると分析して、こう書いている。

 あたりまえの話ですが、政治家は、政策を実現したり、予算を獲得したりするために活動している。けれども小泉氏は、自分のドラマを生きるために政治家をしているのではないか。そこに「変人」の「変人」たる所以があり、小泉総理に政治家たちが翻弄され、右往左往する原因があるのです。

 もしこの観察があたっているとすれば、とんでもない人に、日本は大きな力をもたせ、リーダーシップを委ねたことになる。当分は小泉劇場での自作自演のドラマを見守るしかないのだろうか。

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コメント

こんにちは、Aquさま。バランス感覚のよい記事をいつも拝見しております。私は今回、初めて、自民党/小泉に投票しました。

いいわけがましくなりますが、こんな極端な形は、正直なところ、望んでいませんでした。いままで、投票行動においては日本人は世界一バランス感覚がすぐれていると思ってきました。なんともたよりない話ですが、このバランス感覚、けっこう信じています。

公約にもある、憲法改正まで可能な力を手に入れた自民党。まっとうな議論なしにムードだけで進むことさえ多く、不安な存在です。

投稿: miyakoda | 2005/09/12 21:22

miyakoda様。読んでいただいていて、ありがとうございます。私の存じ上げない、さまざまな方がお読みいただいていて、書き手冥利を感じます。

さて、miyakodaさんのいわれる、バランス感覚は、私もいささか期待してはおりました。多少小泉さんに花を持たせ、造反派や民主党にお灸をすえる、しかし全体的には、良いバランスで収まったな、というような結果も考えないでもありませんでした。しかし、それを超えて、異才小泉さんが、誰もが予想しなかった結果を導いたのでした。それだけ、国民を惹きつける(悪くいえば操る、というところまでいく)パフォーマーとしてのセンスを小泉さんが持っていたのでした。

私は日本人のバランス感覚はそれほど信じていません。過去、あれほどに軍部主導の大東亜共栄圏の幻想に引きずられましたし、敗戦で一気に冷め、アメリカ一辺倒になったりもしました。まだまだ政治についての成熟度は足りないと思います。この小泉劇場も、日本人が政治に関して成長していくうえでの一局面でしょう。

憲法改正ですが、96条には「この憲法の改正は、各議院の總議員の三分の二以上の賛成で、國會が、これを發議し、國民に提案してその承認を經なければならない。」とありますから、衆院だけの2/3では、まだ必要条件を整えていないことになります。

小泉自民党に投票した人も、当選した人も、この結果を端的には喜べず、おそろしさすら感じている。民主主義が健全に生きていることを感じているのでしょう。

投稿: アク | 2005/09/12 22:28

アクさん、はじめまして。いつも興味深く拝見しています。
今回の自民の大勝は予想外のことで私も驚いています。自民自身、驚愕の結果だったようですね。
これぞ、小選挙区ならではなのでしょう。

私は日本の政治的成熟度は信じておりません。また、日本人と政治との間には相性の悪さがあるような気がしているのですが、それでも小泉首相をめぐる紋切り型に近い巷の批判、「独裁者」「強権」といったネガティブな言い回しそのものには違和感を覚えます。
彼が希有なパフォーマーであることは確かであっても、「小泉的」がすべからく手法批判に過ぎないあたりに、議論の硬直化を感じるからです。

まだまだ未熟で皮相的かもしれませんが、時の総理大臣が国民に直接メッセージを送って解散した事例は、自民党政権ではかつてないことでした。矮小化単純化されたとはいえ、政策の是非をめぐり「投票して、意見を表明したい」と有権者に思わせた人も、です。まして、自身の後任について国民に向かって「相応の立場についてもらい、研鑽できる環境を整えたい」と語った総理もいません。これまですべて派閥という党内政治勢力間同士、密室でなされてきたことを、彼はいくらかオープンにしたのです。
自民総裁というより、大統領に限りなく近い立場をとり、自身の信任を常に国民に問うことで党内抗争から離脱した、きわめて稀な総理であることは間違いないと考えます。

現在の自民党の実質がどんなものかはともかく、私は小泉政権は日本政治過渡期の政権だと思うのです。今後は、都市型と地方型の対立がより明確になり、ゆるやかな二大政党制に移行するのではないでしょうか?
「政治とは義理人情ではなく、勝負事でもある」という、あまりに当たり前のことを、強く感じた選挙でありました。

投稿: ぽん太 | 2005/09/13 00:45

ぽん太 様、ご意見ありがとうございます。
そうですね。国民に判断を求めて解散に打って出たこと自体は、ほとんど前例のない、民主主義的手続きだったといえると思います。しかし、ほんとうに政策判断を求めるにしては、語りかけが単純すぎ、説明不足でした。小さな政府、国家公務員減らし、官から民へ。そういう短いフレーズの繰り返しでした。それだけのキャッチフレーズで判断を求めるのは乱暴です。国民の判断力や政策理解力を甘く見すぎています。そして国民は、それにまんまとのせられたのでした。判断を求めるという手続き自体が政略的に使われ、パフォーマンスとなっていたと思われ、真摯に民意を問うたと私は思いません。
 それまでの自民党の談合的政策決定プロセスを、透明でオープンなやり方へと、鮮やかに変えたとの印象を与えたのが、小泉手法の成功でしょう。その実、党内での議論すら、不十分という意見も残り、国会での討論も、実質的なものだったとは思えません。肝心の点をいつもはぐらかし、議論が深めることができませんでした。今度の投票でも、中身を理解した上での賛成だったのか、改革というかけ声にのせられただけだったのではないか、とも思えます。
 政治とは、そういうものだ、ということは分かります。その点で、小泉さんは、天性の勘の良さと手際の良さを持っているのでしょう。私は、政治は、国民のために真に良い政策を、長い目で見てじっくりと進めることが根底にあって、その上での政略もありうべし、と考えます。

投稿: アク | 2005/09/13 12:05

aqu樣

うまく説明ができませんが、時間がかかったとしても、必ず、よい方向にすべてが動くと、私は思っています。小泉個人には、操るという意図はないだろうと思います。まわりはどうだか知りませんが。

彼の、一見、非合理までな「言葉に対する忠実性」を、日本人の多くが感じています。自民党主流派的な感覚でいえば、消費税増税まで筋道をつけて彼が泥をかぶり退任するというシナリオが普通でしょう。ですが、そうはならない。

彼は言った通りに、自分の任期中は消費税をいじることはしないでしょうし、言った通りに9月には辞めるでしょう。市井の人々は、インテリよりも、もっと敏感な嗅覚でそれを知っており、確信している。

aquさんのおっしゃる危険性が、果たして現実化するかどうか。私は、とても注目しています。彼は人としての、ある種の美学を貫こうとしている、なんていうと、小泉びいきだと言われてしまいそうですが。

死と隣り合わせだと、こうした発想方法がとても自然に思われます。

投稿: miyakoda | 2005/09/13 23:59

アクさん、お返事ありがとうございました。
私が選挙の後、一番気になることは、都市型浮動票内での分裂・対立の構図です。
具体的に言えば、小泉支持(=消極的自民支持?)と反小泉(=積極的民主支持?)、相互に漂う相手に対する嫌悪感や侮蔑感のようなものでしょうか・・・。
反小泉サイドの分析が、おおむね「日本は駄目だ」「お話にならない」とのことで結論づけられていることにも疑問を感じます。そこには、政治を政策レベルで理解できるのは俺達の側だ、という考えが透けて見える。「政策を理解できる・できない」といった線引きによる上下関係が潜在的に生じている気がするのです。
特に、今回のように一人の政治家の振るまいを支持する・支持しないが争点になると、政党や国よりも、各人の投票行為が「いい」「わるい」という風に断じられる傾向が強くなっていく。
今後は日本でも、都市住民同士であっても、属性による差異や対立がもっとはっきりしてくるのでしょう。この選挙は、後に、都市型浮動票の意識的な階層化が進んだ分岐点とみなされるかも知れないですね。

投稿: ぽん太 | 2005/09/14 00:08

miyakoda様、再度のご意見を寄せていただいて、ありがとうございます。私も自分の殻に閉じこもらずに、いろいろな角度から考えるきっかけになります。
 小泉さんが、自分の言った言葉に忠実であること、ある意味、言葉に殉じるほどのものがあることは、私も感じています。ただ、その言葉にどれだけの内実が込められているか、わたしは皮相的に見てしまいます。
 美学を貫く人ですから、来年9月に予告通り辞めるでしょう。延ばしたら、難問山積で、せっかくの小泉美学が汚れます。しかしポスト小泉は、小泉しかいないとも言われていますね。
 大きなトレンドとして、日本はどの方向へいくのか。小泉路線でグローバリゼーションに一層同化していくのか。日本独自の外交と福祉国家を作っていくのか。そのあたりを今度の選挙は曖昧にしたまま、ポスト小泉に委ねることになりました。
 小泉さんが替わるとしたら、その時点で政権の方向を問い直す選挙をするのが順当ですが、自民党は与えられた議席を手放すようなことはしないでしょう。

投稿: アク | 2005/09/14 10:41

ぽん太さんが、おだやかな表現で書かれたことは、私には、鋭く批判を受けてた、しかもそれは当たっている、と感じられます。アホな大衆が、ペテンにかかり、アホな結果を出した、と考えてしまいがちです。ブッシュ再選直後の米民主党支持者の気持ちと同じです。政策を必ずしも理解しているとはいえないと、上から見下した一般人のほうが、鋭い直感で、政策うんうんのレベルを超えたまっとうな判断を下したのかもしれません。その是非はこれからの歴史が示してくれることでしょう。それにしても、見下した位置からものごとを論じるのは、戒めましょう。
話は別ですが、日本では、アメリカほどの分極化はないだろう、と私は見ています。今度のことで、それが顕在化・加速化するとも思いません。今度の賛否の基盤もさまざまな階層にまだら模様に分散しているように見えます。熱が冷めれば、また別の選択をするでしょう。自民と民主の主張にも、支持層にも、そう差があるようにも見えません。それほどの対立軸が見えないからです。今回の小泉か反小泉かは、一過性のものでしょう。都市型無党派層は、次の機会には、また別の行動を取るのかもしれません。

投稿: アク | 2005/09/14 11:06

アクさん 

皆さまが書いて来られたことに反発するつもりはありませんが、私はアクさんの考えに近い方だと思ってます。

たしかにアホな大衆とあからさまには言えませんが、二度も小泉さんの街頭演説に望んだわけでもないのに、出会ってしまいました。

私は、小泉さんの「郵政民営化を国民に問う」という解散そのものを、否定的にとらえておりましたから、それを無理に押しつける話には耳を傾けたくもありませんでした。
大体、民営化がそれほど大きな問題だろうかと、ず〜っと、今でも思ってます。もしこれがもっと大事な日本の進路を決定するような話だったら別ですが、彼は憲法には、今回一言も触れませんでした。

用事があってその近くで終わるのを待っておりますと、演説を聴いた人達が帰ってきました。胸躍らせ、声弾ませて、まさに映画俳優純ちゃんでも見てきたかのように、興奮していました。
「いい男だねえ。テレビでみるよりず〜っといいねぇ。背が高いわねぇ。話がよ〜くわかった。ぜったい投票にいかねば」・・・もう用事そっちのけで喋ってましたよ。
これが所謂、鳥越さんご指摘の、セックスアピールでなのでしょうか?

私なら、やっぱり裕次郎の声の方がいいけれども。

しかし、これも一票です。

アクさんは、>国民の判断力や政策理解力を甘く見すぎています。と。

ごもっともです。でも国民はアクさんのような方ばかりではないんですね。
その辺、もしかしたら、小泉さんの方が国民を見る目があったかもしれません。
人間てどうしても、自分をものさしにしてしまうものかもしれませんね。

投稿: 美千代 | 2005/09/14 22:30

アクさん、再度のお返事に感謝です。
アクさんが、「まだら模様」と指摘されたこと、私も実感としてそのように感じています。だからこそ、逆説的にですが、憎悪と侮蔑が漂っているような気がするのです。
今回、自民に票を投じた人と非自民に票を投じた人、特に都市部の支持政党なしの人は、実はそう異なった人たちではないはずです。にも関わらず、この大勝を受け、今回たまたま自民支持にまわった人をアンチ小泉派が罵る傾向が、ブログなどには多いように感じます。(アクさんのことではないですよ、念のため)

今回の大勝は、多くの人には予測がつかないことでした。
小選挙区制度というものが、こんなにもすごい力を発揮することを、実感として持っていなかったからです。投票率もそう上がると思えなかった。以前の日本新党の時と似た「風」は吹いているとは思いましたけど、それにしても、という結果でした。
みんな驚いたはずです。同時に、恐ろしいとも思ったでしょう。投票行為の責任がこれほど明らかになった選挙はありません。投票することで政治を変えることができるんだ、ということもはっきりわかったように思います。
私個人、実は次の選挙からが本当の「政権および政策決定選挙」だと思っていました。したがって、その予行演習として今回の選挙をとらえ、自分なりの考えで投票した次第です。
「まだら模様」というのは、つまり、そのようなことだろうと思います。そんなことですので、今の時点の動向を「お話にならない」と断定し、過剰に悲観してみせるには、やや時期尚早ではないかな〜というのが正直な思いです。

投稿: ぽん太 | 2005/09/15 11:12

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