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2005/10/28

内田樹『街場のアメリカ論』

 内田樹の『街場のアメリカ論』を面白く読んだ。これまでに類を見ないアメリカ論だ。内田がアメリカ論?と最初は思ったが、読んでみると、この人らしい意外な視点から、切れ味のいい語り口で、アメリカが論じられており、とても非専門家によるものとは思えない。むしろアメリカを論じる適任者だと思える。

 考えてみると、私も、けっこうアメリカを論じた本や論説文を読んでいる。何のかんのといって、アメリカのことを「気にしている」からである。内田は、ポストモダンの思想家らしく、日本人はアメリカを「欲望している」と表現しているが、私が「気にしている」と書いたことは、その中に含意されているのだろう。

 この『日本はアメリカを欲望してきた』という表現が飛び出す「まえがき」からして、非常に刺激的である。ペリー来航以来、

日本のナショナル・アイデンティティとはこの百五十年間、「アメリカにとって自分は何者であるか?」ということを巡って構築されてきた。その問いにほとんど「取り憑かれて」きたと言ってもよい。

と書いているが、それが言い換えれば、「日本はアメリカを欲望してきた」ということであり、「欲望」という表現の含意を、

日米関係の本質は現実の水準ではなく、欲望の水準で展開している。

との言明で示している。「日本人はどのようにアメリカを欲望しているのか?」を中心的な関心として、この本を書いたともいう。なかなか新鮮である。

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2005/10/23

小泉首相の「心ならずも」発言

 小泉首相の靖国神社参拝の是非について、世論はほぼ2分されている。リトマス試験紙で、酸性かアルカリ性かを判別するように、この問題の是非の判断が政治的意見を分けている。私は、このリトマス試験紙の代わりに、別の試験紙を提案してみたい。小泉首相は参拝後、くりかえし「心ならずも戦地におもむき、命を捧げられた方を、衷心から追悼する」と言っている。この発言の趣旨を是とするかどうか、そこを分極点として、世論を分け直してみたらどうか、である。

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2005/10/19

外国へ行き、写真を撮ること

051019Yachts

 アイルランド南西部のキンセールで、函館郊外の五稜郭の元祖の一つともいうべき、チャールズ砦を見に行った日。風がとても強い日だった。海に面した外壁の隙間(砲眼)の前に立つと、身体を吹き飛ばすほどの烈風が吹き抜けていた。そこから海が見える。風をものともせず、むしろそれを利して、一群のヨットが外洋に向かっているのが見えた。海は、激しく波立ち、薄日を受けて、全面が見たこともない輝きを見せている。古城の見学どころでなくなり、砲眼の壁に身を寄せて身体を固定し、望遠レンズ(180mm)で撮った。モノクロに見えるが、カラーで撮ってこの色である。

 外国旅行をすることの目的に一つは、写真を撮ることである。写真を撮るということはある種の創造である。人とは違う、自分ならではの眼で、ある対象を見るとき、自分が感じとるものがある。それを人に伝えたい。どう撮ることで、それがもっともうまく伝わるか。それを工夫する。写す対象と出会うには、時があり、場所がある。

 身の回りの日常を撮って、創造的・刺激的な写真を見せてくれる人がいる。しかし、日常の気分のなかで、気持を尖らせて被写体と向き合うことはなかなかできない。見知らぬ場所に立つことは、写真を撮る気持を高ぶらせてくれる。こうして写真を撮るものは、人のあまり立ったことのない場所へ、人があまりいたことのない時間に出かけていき、あまり見たことのない光の下で、写す対象を見つけようとするのである。山へ、海へ、深い谷へ、人跡まれな深い森へ写真家は行く。アマチュアも行く。外国へ行くのは、その点では安易である。それを承知しながらも、自分の気持ちを高め、いい写真を求めて、私は外国へ行く。

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2005/10/17

居心地のいい、二流国アイルランド

 たった20日間の滞在で、一国の印象を語るのは無謀であり、見当違いになりかねないの承知で、アイルランド印象記を断片的に書いたおく。偏向的主観的印象であることをご承知の上で読んでいただいきたい。

 旅をしてみて、アイルランドはとても居心地が良かった。その理由はあれこれあるが、みずから二流国であることをもってよしとし、独自のライフスタイル、文化を柔軟に保ちつつ、肩ひじ張らずに他国の人に接していることにあるのではないか、と思い当たった。

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2005/10/15

アイルランドから帰国

051015Annie

 帰ってきました。あちこち走り回り、あれこれ見、写真を撮り、話しも聞いてきた。話したいこと、お目にかけたい写真はたくさんある。とりあえず、一枚お目にかけて、帰国のお知らせにするとしたらどれにするか。迷ったが、この一枚にした。

 アイルランドは、今どんどん変わっているようだ。アイルランドの過去は、今や物語になりつつある。アイルランドの過去は、一口に言えば、英国による支配と、それ故の貧困、そしてそのような現状からのほとんど唯一の脱出手段としての移民、といっていいだろう。その記念碑がこの像である。アニー・ムーア姉弟。ニューヨークのエリス島経由のアイルランドからの最初の移民者として記録されている。姉は、故国に未練を残して振り向いている。しかし、弟たちは、新天地に希望を見いだそうとしている。移民したアイルランド人の気持を象徴する像が、雨に濡れ、煙っていた。

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