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2005/10/19

外国へ行き、写真を撮ること

051019Yachts

 アイルランド南西部のキンセールで、函館郊外の五稜郭の元祖の一つともいうべき、チャールズ砦を見に行った日。風がとても強い日だった。海に面した外壁の隙間(砲眼)の前に立つと、身体を吹き飛ばすほどの烈風が吹き抜けていた。そこから海が見える。風をものともせず、むしろそれを利して、一群のヨットが外洋に向かっているのが見えた。海は、激しく波立ち、薄日を受けて、全面が見たこともない輝きを見せている。古城の見学どころでなくなり、砲眼の壁に身を寄せて身体を固定し、望遠レンズ(180mm)で撮った。モノクロに見えるが、カラーで撮ってこの色である。

 外国旅行をすることの目的に一つは、写真を撮ることである。写真を撮るということはある種の創造である。人とは違う、自分ならではの眼で、ある対象を見るとき、自分が感じとるものがある。それを人に伝えたい。どう撮ることで、それがもっともうまく伝わるか。それを工夫する。写す対象と出会うには、時があり、場所がある。

 身の回りの日常を撮って、創造的・刺激的な写真を見せてくれる人がいる。しかし、日常の気分のなかで、気持を尖らせて被写体と向き合うことはなかなかできない。見知らぬ場所に立つことは、写真を撮る気持を高ぶらせてくれる。こうして写真を撮るものは、人のあまり立ったことのない場所へ、人があまりいたことのない時間に出かけていき、あまり見たことのない光の下で、写す対象を見つけようとするのである。山へ、海へ、深い谷へ、人跡まれな深い森へ写真家は行く。アマチュアも行く。外国へ行くのは、その点では安易である。それを承知しながらも、自分の気持ちを高め、いい写真を求めて、私は外国へ行く。

写真の女神 外国へ行き、見たこともないような風景を前にすれば、いい写真が撮れるかというと、そうはいかない。光にさえ恵まれれば、きれいな写真は撮れる。絵はがき的写真である。それでは満足できない。場所と時と、それに幸運に恵まれないと、いい写真は撮れない。人は「写真の女神が微笑んでくれる瞬間」という。そのような偶然に恵まれて、はじめて一枚のいい画像を創ることができる。幸運は、偶然がもたらすか。そういう面もある。しかし、それ以上に、撮るものの粘りが大事である。粘りに粘って、大半は無駄で、そのあげくに、やっと女神が微笑んでくれる時がくるのである。もちろんそんな幸運が舞い込んでこないこともある。外国に行くのは、女神と出会えると思うからである。外国に行き、撮ることに専念する時間を持つ方が、女神が微笑んでくれるような気がするからである。もちろん思いこみに過ぎない。

撮影チャンスに恵まれる個人旅行 さて、今回のアイルランド行きはどうだったか。いい風景はたくさんあった。個人旅行だったから、パートナーさえ我慢してくれれば、好きなように時間を使えた。今回はとても理解があった。ツアーに参加しての旅行の場合、旅仲間に配慮して、早く戻れと、声をからして叫ぶ。撮影に専念する気になれずに、いつも欲求不満を抱えて帰ってくる。今回は、車のなかで、じっと我慢してくれた。ドライブをしながら、何度カメラストップをしたことだろう。彼女の旅日記にいずれ実情が報告されることだろう。

女神はすり抜けた えらそうな講釈のわりに、たいした写真ではないといわれそうだが、上掲の画像は、もうちょっとで女神が微笑んでくれるところだった。いささかもの足りない。前景に激しく波立って光る海を大きく入れたのはいいとして、ヨットの並びがいまいちである。一艘だけ、傾いでいないヨットがあり、気がそがれる。残念な写真である。数駒撮ったなかのベストなのだが、やはり最高の瞬間はなかった。女神が微笑んでくれたと思えたが、完璧ではなかった。

チャールズ砦 キンセール湾の東岸に位置するチャールズ砦は、アイルランドにいくつかあったという星形をした要塞のうち、唯一原形を残しているものだという。函館の五稜郭の先輩格といえようか。17世紀に建造され、スペイン軍が来たり、英仏連合軍が戦ったりという歴史がある。海岸すぐの場所にそびえ立つように立っている。この砦を見ておこうと出かけたのだった。こんな海と、そこにヨットがいるなどとは思いもしなかった。こんなふうに思いがけず、向こうから転がり込んでくる写真の瞬間がある。それがこたえられなくて、外国に行き、ウロウロと女神のほほえみを待つのである。

有数の外洋ヨット基地 後で調べたことだが、キンセールは、ヨットハーバーとして、ヨーロッパ有数の良港として知られているらしい。アイルランド西部は、今度行ってみて、しみじみ分かったが、風が強い。それを避けて係船できる山裾に入りこんだ深い入江がある。ちょっと出れば、大西洋をわたる偏西風が強く吹き付ける。外洋ヨットの腕試しをするには格好の場所なのだろう。

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コメント

いい写真ですね。感動しました。

投稿: 余丁町散人 | 2005/10/21 20:36

Yachtsmanの余丁町散人さんから、そうおほめいただくとうれしいです。このヨットは、5,6人は乗っている、なんというクラスか知りませんが、中型のヨットですね。

投稿: アク | 2005/10/21 21:36

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