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2005/11/15

医院窓口での署名集め

 2週おきの月曜日は、医院通いの定例日である。痛風の持病をもっている。ホームドクターとして長年お世話になっている近所の内科医院へ、このところ夫婦そろって、出向くのが定例になっている。連れ合いは別の持病もちである。昨日(05/11/14)もいつものように出かけた。窓口に診察券を出すと、受付の女性が、そこにある署名をお願いします、という。署名の趣旨が2,3行ほど書いてある。ちらっと見ると「誰もが安心してよい医療が受けられるように 国民皆保険制度を守る署名」とある。連れ合いは、何のためらいもなく署名したが、私は、この件、よく分かりませんから、と署名しなかった。

 調べてみると、この署名運動は、日本医師会など医療関係の37団体で作っている「国民医療推進協議会」が、05/11/8に決めたもので、全国的におこない、1千万人の署名集めをめざしている【NikkeiNet(05/11/08)、日本医師会など37団体、患者負担増反対の署名活動】。

 お医者さんの組織のひとつ「全日本民医連」は「緊急アピール」を出し、医院・診療所にくる患者さんに署名を求めるよう、全国の医者に指示を出している【全日本民医連〈緊急アピール〉(05/11/8)】。12月11日までの1ヶ月やるらしい。

 現在、医療制度の改革が、次の政治課題の一つとして、問題になっている。医療費の総額が毎年どんどん増え続け、このままでは、現在の健康保険制度は破綻してしまう。国家予算の負担分も増え続け、財政赤字の大きな要因になっている。国レベルで議論になっているのは「医療給付費総額の数値目標を導入する」ことらしい【医療費抑制、給付総額に数値目標導入で調整(読売新聞05/11/15)】。何らかの経済指標に照らして、総枠を押さえ込む原則をまとめようとしている。新聞などは、厚生省では、医療費増の最大要因である老人医療費について、高齢者層にもっと負担を求めること、入院時の食事代などの自己負担などが検討されていると、伝えている。診療報酬や保険点数、薬価も当然見直されることだろう。

 医療制度の見直しは急務である。このままではパンクする。ただ、この問題の解決は複雑である。医者、大病院、薬業界、健康保険団体と保険料の支払者である一般国民、そして患者。それぞれに利害は違う。それらを調整し、トータルに面倒を見ているのが国(その後ろには納税者としての国民)である。

 これまで医療制度は、主として自民党内の族議員と医師会などが結託して仕切ってきた。そのためには政治資金が動いたことは、日本歯科連の一部政治家への闇献金事件で明るみに出た。前回は、三方一両損などという、ていのいい言葉でごまかされたが、国民は釈然としなかった。今度は違うだろう。9/11の小泉党大勝で、政治の世界では、空気ががらりと変わった。既得権擁護に動く勢力は、旗色が悪い。

 日本医師会などは、これまでにない危機感を持っていることだろう。医療制度見直し、特に総額規制に反対している。それはたぶんに、医者の取り分が減ることへの危機感だろう。既得権益の擁護だ。しかしそれは表に出せない。そこで患者の負担が増えるのに反対、という一点に絞って、患者と一緒になって医療費制度に反対しようとしている。それが、にわかに始まった病院、医院窓口での署名運動らしい。

 さて、私たちは、どう考えたらいいか。これ以上負担を増やしてほしくない、特に私たち老人にとっては、高齢者をターゲットにした負担増はごめん被りたい。そういう点では、医師会側のアピールに同じたくなる。

 しかし、ここでよく考えてみたい。患者側の医院・病院での直接的な負担増反対、ということだけでは、この問題は解決しないだろう。医療費のツケは、健康保険料と税金という形で回ってくる。特に問題は、次の世代に負担を先送りする、という形でツケ回しをするである。医療費を巡る全体を、長期的に、トータルな視点で、みんなで考えてみる必要がある。そのさい、医師・病院側と、患者・国民側の利害は、同じではないことに留意したい。これまでは、医師会などの業界団体と自民党厚生族に仕切られてきた決定メカニズムを、国民の側に取り戻す必要がある。郵政解散で示された国民の意思を受けて、新自民党は、これまでとは違う方向性を出してくれるだろうか。

 郵政改革の賛否をめぐって、郵政族、特定郵便局長会そして郵政の労組などが、民営化は、地域住民の不便を増すと、反対運動を展開した。国民は、それは自分らの既得権擁護に過ぎないと拒否した。郵政改革反対=既得権擁護、それとほぼ同じことを、この病院・医院窓口での署名運動はやっていることにならないか。医院・病院窓口での署名要請に応じる前に、このことをよく考えてみたい。

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批判のための批判でしかない…〜引用開始〜 医療改革 三つの心配に応えよ  医療制度を改革するための政府・与党の大綱がまとまった。  高齢化が進めば、医療費はふくらむ。しかし、だれもが必要なときに必要な医療を受けられる保険制度は守りたい。そのためには、医療のむだをなくすことが条件だが、国民一人ひとりの負担が増えることはやむをえまい。  だが、大綱には三つの心配がある。  その一つは、今回の負担増�... [続きを読む]

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