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2006/03/25

そばを賞で、日本の核武装を論じる

 同期入社の友人から声がかかり、手作りのそばを賞味する会に参加した。同期を中心に、同じ会社に勤め退職したものが7人が集まった。主催した友人は、農地を借りてそばを耕作し、収穫したそばを石臼で挽いて、そばを打つ。香り立つそばはさすがに旨かった。そばには酒である。愛飲する「来福」を持参した。そばよし、酒よしで、おおいに食べ、かつ飲んで、後半は話が盛り上がった。会社のことから、政治へと話は流れた。論客揃いだ。侃々諤々となったが、その中で日本は核武装すべし、との言が飛び出したのには恐れ入った。

まずはそばの話。私は少し遅く行ったので、そば打ちの一部始終を見ることはできなかったが、捏ねて畳んだそばをめん切り包丁で細く切る段階から見た。みごとな腕だった。道具への凝りようからも、そばへの打ち込みぶりは察せられた。こね鉢、延ばす桐製ののし板、めん棒、めん切り包丁とこま板から、最後にそば湯を入れて出してくれる器まで、質のよいものを取りそろえている。それらの道具をワンセット収める木箱は自作である。みごとな趣味だ。年季も入っている。退職後の趣味もいろいろだが、一つの理想型がそこにあった。

手作りそばを食べる会 この会に誘われたには、わけがある。今年の年賀状の添え書きに「ぜひ手作りのそばを味わいたい」とおねだりしておいた。友人の昨年の年賀状に、そばに打ち込んでいる次第が書いてあったのを覚えていたのだ。昨年ひさしぶりにあった同期会でも、大いに吹聴したらしい。この同期会が海外旅行の時期と重なって、私は出られなかった。聞いたところでは、その会合で、この友人は、そばを食わせろと、多数から言われ、約束もしたらしい。昨日の会は、その約束を果たすためだったのだが、そう大人数に一度に食べさせるほど、そばは打てないらしい。たしかに見ているだけでも、そば打ちの全行程は時間がかかる。数人分を一度に打つのがせいぜいだろう。招かれたのは5人、友人に助っ人がひとりいて、その助っ人の仕事部屋でこの会合は開かれた。友人と助っ人とがそれぞれに打って、7人のそばを食べる会が成り立った。

香り高いそば 一口ごとに味わいながらいただいた。最初は汁をつけず、すこしだけ口に入れる。かぐわしいそばの香りが口内に拡がる。次に汁をつけて噛む。かたくしこしこと弾力がある。私はそばを吸い込むことはしない。あれは音が生理的に嫌いだ。このぞばは吸い込みを許さない力強さがあった。その点も気に入った。ふだん食べているのは、これに比べるとじつにヤワなそばだな。

酒に酔い大言壮語の果てに それまではよかった。酒の入りすぎがよくなかった。それからの議論は、いま思うのだが、酒がさせた妄想だと思いたい。しかし案外本音が出たのかもしれない。とにかく書いておこう。時代の変化をいたく感じさせられたからだ。私のブログを継続的にお読みの方は、推察がついていると思うが、私のもと職場は原子力の研究に関わっている。この日の仲間は、日本における原子力研究の創始期から研究者としてあるいは事務管理部門の幹部として働いてきた連中である。平和利用に徹するというのが、日本の原子力の大原則だ。国内では、平和目的であっても、防衛関係とは一切関係を持たない。国際的には核不拡散条約に非加盟の国とは研究上の協力をしない。施設見学すら断っている。それほど気を遣ってやってきていたはずだ。日本の原子力の実力のほども、日本の原子力開発の、国際政治の中でのあり方もよくわきまえている。酒に酔い大言壮語しがちな話の流れの中とはいえ、日本は核武装をすべきだという主張が出されるとは、いったいどういうことだ。

OBとなった気楽さゆえに? こんな主張は、現役時代には考えられもしなかった。出てくれば、政策論に強い仲間からたちどころに否定されてしまったことだろう。それが堂々と話され、私のか弱い抗弁などとうてい太刀打ちできずに、賛同をえてしまう。この場での発言は、OBゆえの気楽な発言なのだと思いたい。防衛庁の関係者が、辞めたあとで勇ましい発言をしているのと似た状況だ。しかし本人は真剣そうだった。考えてみれば、日本の核武装という暴論を、結構まっとうなものとしてしまう方向へ、時代は変わって行っているようだ。研究屋と事務屋で意見が分かれた。おおまかにいえば、事務屋が原爆開発やるべし論、研究屋は否定論であった。これはたまたまのメンバーがそうであったとも、ある程度の傾向を反映しているともいえる。事務屋は時代の空気に敏感であり、研究屋は社会問題については理想論に傾く。

対中強硬論の勃興 核武装論は、対中強硬論から発している。中国の反日感情の高まり、東シナ海でのガス田開発、小泉首相の靖国参拝へのあからさまな干渉、首脳会談の拒否などに反発して、対中強硬論が勢いを得ている。自民党親中派や外務省チャイナスクールの進めてきた軟弱な外交交渉ではなく、強硬な態度で臨むべし、そのためには中国に優越する軍事力を持つべし、対抗上核武装もやむなし、その気になればすぐにできる、とまでなっていく。

悪循環を作り出している現政権 私は平和憲法堅持を主張する少数派であるが、この暴論にはただあきれるだけで、有効な反論ができなかったのは不甲斐なかった。最近の右傾化が我が同期の連中にまで、このような形で拡がっていることに、驚くのみだった。小泉首相が靖国参拝にこだわる。それに中国は反発する。急激に経済力を身につけた中国が、アジアでの覇権を目指して、あれこれの強硬策を打ち出してくる。それに日本の世論が反発し、力には力をというナショナリズムが煽られていく。そういう悪循環を、中国政府と小泉政権が作り出している。その反映がここにも出ている。

核武装はあり得ない 念のために書いておくと、どう考えてみても、日本が核武装というシナリオは考えられない。アメリカがそれを許さないのは明白である。アメリカと手を切って、独自のアジア政策に打って出るというシナリオは現実味がない。日本単独でエネルギー確保の道はない。原子力エネルギーも石油も、アメリカとの協調関係なしには成り立たない。アメリカの核の傘の下にいて、非核3原則を維持することが、最も現実的な安全保障政策である。核武装論は、酔いから醒めているものには、正気の沙汰ではないのである。

 おいしいそばを味わい、酒に酔い、同僚の世迷いごとに気楽さと危なっかしさを感じながらも、一日を楽しく過ごし、ご厚意を感謝しつつ、おいとました。

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コメント

ご無沙汰しています。
少し話がずれますが、世界的な原発へのシフトに乗っかって、プルサーマルの好機とばかり、電力会社が走り出していますね。
それにしても、影に日向に監視をほのめかす輩もある中で、等身大のOB記事はいいですねえ。

投稿: 魔法使い | 2006/03/30 00:15

魔法使いさま、読んでコメントいただいて、ありがとうございます。
プルサーマルは、再処理路線をとる以上、仕方がないかと思いますし、安全性もまあ、大丈夫かと思います。ただ、地元了解を取るために、利益誘導がなされた上での、このセレモニーであること、その負担は、消費者につけ回しされることなどを、しっかり見ておく必要があろうかと思います。
「等身大のOB」、何しろ気楽ですからね。それでも、依然として一家意識を持ち続けている。もう少し家離れして、普通の市民意識になればいいのにと思いますが。

投稿: アク | 2006/03/30 22:31

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