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2006/03/13

Web上の新聞、朝日とNYTの比較

 NYタイムズ(以下、NYTと略記)の有料会員(TimesSelect)になっているので、NYTのWeb版をよく読みに行く。昨日(06/3/12)の紙面で、注目したのはKristof のダルフール報告である。常連コラム担当記者の Nicholas D. Kristof が、NBCの"Today"という番組の女性アンカーAnn Curry と、その取材スタッフたちとチームを組んで、 スーダン・チャドの国境地域に決死的な取材をしている。ここは全くの無法地帯で、スーダンもチャドも守ってくれない。大量虐殺を粛々と進めている民兵組織ジャンジャウィードがいつ襲ってくるかもしれない。その報告とビデオレポートは現地の救いのない状況を生々しく伝えている。ベテラン記者こそが、危険な現場に飛んで取材報告するべきなのだ。そのジャーナリスト精神の旺盛なことに感服する。それとともに、最前線でのニュースを早く正確に生々しく読者に伝えるため、インターネットいう媒体をいかにうまく活用しているか、そのことにも感心する。新聞社がインターネットをどう利用しているか。それがこのエントリの主旨である。朝日新聞のネット版(asahi.com)と比較してみよう。

朝日新聞インターネット版 朝日(asahi.com)には、朝日新聞本紙にあるすべての記事が載っているわけではない。随時短い速報を載せ、新聞本体に載っている記事のうち、総合、社会、経済、政治、スポーツ、国際各面のトップ記事と、社説、天声人語のみが全文掲載されている。ニュース速報は過去記事まで検索で探せるが、何件あっても、トップの8件しか表示しない。当日の朝刊全文を読むには、有料の asahi.com perfect の会員になる必要がある。2種類あって、Lite(月525円)は当日の朝刊だけを全文読める。一年以内の過去記事は別途有料(1件84円)である。Full(月3150円)は、過去3ヶ月分の今日の朝刊が読める。また過去20年分の記事検索ができるが、読むのは同じように有料である。

NYTの場合 NYTは原則全文を掲載している。新聞本紙以外に日曜版に付いているWeekly Review, NYT magazine, Sunday Book Review なども全文読める。しかし、最近一部の記事を読むのが有料となった。NYTの売りである著名コラムニストの論説は、今ではTimes Select の会員にならないと読めない。年額$49.95(約6000円)である。Times Select を購読すると、著名コラムを読めるだけでなく、付加的サービスが充実していて、十分もとが取れる。特集記事やスポーツ解説(たとえば荒川が優勝したオリンピック女子フィギュアについて専門家が署名付きで的確な分析をしていた)、ビジネス関連の分析記事、NYTに載らず、International Herald Tribune に出るコラム、特集的な記事などがある。ずっと前からインターネット上で動画を配信するサービスは始まっていて、日本ではまだそこまでいっていないが、大統領の主要演説などはビデオ放映される。これらはほとんど無料だが、今回のKristof記者の肉声による現地報告ビデオは有料の方に入っている。また、アップルのiPodが普及させたPodcast(インターネット上のラジオ放送のようなもの)で、主要コラムを音声(書いた本人の朗読ではない)で聴くことができる。早読みなので、それだけで聞き取るのは骨だが、記事本文を読みながら、あるいは読んだあとで、聴くのはとてもいい。

個人ファイル保存サービス 有料会員に対する付加的なサービスとして、ありがたいのは、契約者に個人のストレージスペースを与えてくれ、注目した記事を保存できることだ。いわばオンライン上のスクラップブックを持てるということである。これはという記事や論説を、どんどんそこに溜め込んでおいて、あとで参照できる。Web上の新聞は、日替わりで変わっていく。あとで思い出して探そうと思っても、それは容易でない。この個人ファイルスペースは、新聞と一体化していて、非常に便利だ。インターネットならではのものである。しかもこの記事保存サービスは、NYT上の記事に限定されない。Web上で見かけたあらゆるページをNYTの個人ファイルスペースに保存できる。ブラウザーに個人ファイル保存のボタンを付けることができ、ブラウザーでページを表示した状態で、そのボタンをクリックすると、そのページをNYTのストレージスペースに保存できるのだ。ブロッガーたちのエントリの保存に私は使っている。ただし日本語ページはうまく保存できたためしがない。

その他の付加サービス 過去記事については、1981年以降の記事を検索でき、有料会員は月当たり100件までは基本料金の中で読むことができる。そんなにたくさん読むことはないので十分なサービスだ。ほかにも付加的サービスがある。あらかじめ関心のあるテーマ、たとえばアメリカのキリスト教とか、進化論をめぐる論議、などを登録しておくと、その関連記事が出ると、電子メールで通知してくれる「通知機能」、日曜版のMagazineとSunday Book Review に載る記事を、事前の水曜日にEmailで配信してくれるサービスもある。すべての記事はプリンターに適したフォームで印刷ができるし、こんな記事を目にしたよと電子メールで知人に伝えるサービスもある。在米の知人から、先日、小泉政治批判に転じた渡辺恒雄読売会長のインタビュー記事を送ってきたが、この機能を使ったものだった。

主なサービスを比較してみよう。

           朝日     NYT

 ニュース     一部無料   全文無料
         大部分有料
 社説        無料     無料
コラム・解説   NYTに匹敵    有料
        するようなものはない
        (有るものは有料)
日曜マガジンなど   無い     無料
 ビデオ
スライドショー    無い     あり(一部有料)
個人ファイル     無い     あり(有料)
通知サービス     無い     あり(有料)
過去記事の閲読    有料     有料

ここで、NYTの有料とは、年$49.95の中ですべてカバーされる。朝日新聞は最低で月525円だが、さらにサービスごとに従量課金される。

新聞社のインターネット取り組みの違い NYTの有料サービスはどのくらい利用されているのだろう。一時期はこの有料サービス申し込みをしようとしても、登録フォームのページが開かないほど賑わっていた。私の場合、2,3ヶ月、気づくたびに申し込みを試みたができなかった。1月下旬、やっと契約できた。NYTの場合、紙媒体として売れている数は、日本の主要紙に比べれば、格段に少ない。しかし、このインターネット有料会員とWeb紙面での広告収入によって、紙媒体の購読料に匹敵するくらい収入を得ているのではないかと想像する。朝日の場合、有料会員になっている人は少ないだろう。読者にとってメリットも少ないし、新聞社側にも、そちらの方に力を入れて、収入を上げようという姿勢はあまり感じられない。インターネット時代にあって今後の発展をどう図るか。新聞社の取り組みが全然違うようだ。

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コメント

perfect asahi.comがスタートした当初(10年近く前?)から個人契約をしていました(当時は学生)。当時は従量制ではありませんでした。従量制に変わって非常に使いにくくなりました。あの会社には個人の活動を支えるという発想はないのでしょうかね。

投稿: kisslegg | 2006/05/01 11:02

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