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2006/05/18

地球温暖化問題、動くか

 地球温暖化問題にずっと関心を持って、動向を見てきた。このところ何か動きつつあるようだが、ほんとうだろうか。決定的な動きになるかどうか、一にアメリカにかかっている。問題は科学と政治の双方それぞれにあり、両者のせめぎ合いにもある。そのあたりについて、最近読んだいくつかの記事のなかから二つほど紹介してみよう。ひとつ、連邦政府がこの問題を検討させていた専門委員会が、温暖化は間違いなく人間活動であるとの結論を出したとの報道。もう一つ、温暖化問題に警鐘を鳴らし続けた科学者 Jim Hansen に対する、政権の干渉が公けになり、もはや政府は、温暖化対策を求める世論の流れを止められなくなったこと。この Hansen は、TIME誌が最近選んだ「世界でもっとも影響力のある百人」の一人に選ばれている。

連邦政府の検討委員会が結論を出した 一つは『連邦政府の検討、温暖化で一致』(Federal Study Finds Accord on Warming )との、5月3日付NY Times の記事である。ブッシュ政権は温暖化対策の実施に踏み切る前に、科学的な事実を確実なものにする必要がある、との政策をとっている。対策は大変な費用を要するし、経済にも大きなダメージになる。慎重に進めようというのは当然だが、問題を先送りしているともいえる。2002年に「連邦政府気象変動科学プログラム」を策定し、年間20億ドル(2200億円)をかけて、温暖化の観測と調査を進めている。その計画により設置された科学検討委員会が結論を出した。06年5月2日のことである。その結論は「大気圏の低層部で温暖化が進んでおり、それが明らかに人間活動によるものである」ということだ。

これまでの論争に一つ決着がついた これまで地球温暖化に関して重要な点について、まだ決着がついていないとして論争が続いてきた。大気圏の温度上昇について、相互に矛盾するデータが得られていた。地球の表面と、対流圏と呼ばれる中層の大気圏とで、温度上昇率について違った値がでていて、その不一致が、温暖化について確かなことはいえない根拠としてよく引用されてきた。今回の検討の結果、「地球表面と大気圏の高いレベルとで、温度上昇について不一致はない」ということになった。また、過去50 年の温度上昇が、化石燃料消費に伴う温暖化ガス排出効果を考慮に入れることによってのみ説明できることが、計算機シミュレーションによって明らかになり、この点についてこれまで異論のあった科学者たちをふくめ、意見が一致したという。

ブッシュ政権の慎重姿勢の根拠が薄弱に これで、長年の懸案にひとつ結論が出たことになる。連邦政府は、コストのかかる温暖化ガス規制を進めるほどには、まだ十分な科学的根拠がないと言い続け、慎重姿勢を保持してきたが、その不確定性は除かれたことになる。しかし、ホワイトハウスの担当官は、これは「連邦政府気象変動科学プログラム」で計画された21の評価項目のうち、ひとつの結論が出たにすぎない、連邦政府としては、残りの項目について検討を続けることに当面重点を置く、と述べたという。

Hansen 所長へのいじめ もう一つの変化。温暖化問題推進派の代表者科学者、Jim Hansen に対する米政府のいじめが放棄されたらしいこと。この Hansen はNASA(米航空宇宙局、シャトルを飛ばしたりしている米国政府機関)のゴダード宇宙研究所の所長であるが、人工衛星の観測結果などから、温暖化問題にいち早く警鐘を鳴らし、対策の必要を主唱し続けてきた。たいていの地球温暖化の本や記事には、彼のデータが引用されている。この人が温暖化問題を言い始めたのは、1981年のことだ。ブッシュ政権にとっては、連邦政府の一機関である研究所の所長が、政権の政策に反対する意見を書いたり、講演したりするのが面白くない。陰に陽に口止めを迫ってきた。そのことが、NYTにより暴露され、問題となった。今年の1月29日のことで、『気象の専門家、NASAが彼を沈黙させようとしたと発言』の記事である。この記事にリンクを貼っても読めない。以下のブログに主な内容が紹介されているので参照されたい(竹庵雑記『科学者の勇気』06/2/2)。

いじめは逆効果だった この報道はホワイトハウスにとって、かなり厳しいものとなり、その後、Hansen を口止めするどころではなくなった。地球温暖化を特集した、TIME誌4月3日号(06年)のオンライン版に、Hansen のインタビュー記事が載っている。『科学についてのご意見番、口止め解除』(A Science Adviser Unmuzzled)で、そこでは、彼は温暖化が今や否定しがたい事実となってきたとし、ここ数年のうちに、決定的な時期(tipping point)を、迎えることになるかもしれないと、あらためて警告している。どうやら、彼に対する報道管制は説かれたらしい。このあとTIME誌は、5月8日号で、彼を「世界でもっとも影響力のある百人」の一人に選び、ゴア元副大統領が、彼を紹介する一文を書いている。そこには、何年かあと「気象危機についての歴史が書かれることになったら、Hansenこそが、もっとも強く、一貫して、この惑星環境の維持のために理性ある行動を取るよう主張し続けた科学者として記憶されることになるだろう」と書かれている。どうやら、口止め工作は逆効果だったようで、温暖化対策を求める世論の流れが高まってしまった。

ブッシュ政権は動くか さて、このような情勢の中で、大きくこの問題は動くだろうか。石油産業に支持基盤を持つブッシュが決断するかは疑問だが、国際的に不人気、国内では支持率が低迷しているブッシュ大統領が、この問題でサプライズ政策転換をする可能性がないわけではない。

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コメント

こんばんは。
まあ、無理でしょう。なにせ戦費捻出に、原油価格をつり上げる政策採っていますから。

投稿: GULF STREAM | 2006/05/20 00:46

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