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2006/06/21

行ってきた、タクラマカン砂漠

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 タクラマカン砂漠周辺の各地をほぼ一回りしてきた。さまざまな印象を持ち帰ったが、まずはロバ車と石油開発のことを書こう。中国奥地の現状を端的に物語るものとして。

 それぞれの国、地方での暮らしぶりは、交通・輸送の手段として何を使っているかで、ある程度わかる。これまで訪れたところでいえば、パキスタンのフンザや、ミャンマーでは、歩き、担ぐこと。ヴェトナムでは、圧倒的にバイク。西欧でも、東欧のやや遅れた国でも車であった。今度行ってみた中国新彊ウイグル自治区では、それがロバ車だ。どの家もロバを持つ。たとえば、かつてキジル国があり、キジル千仏洞で知られるオアシス都市クチャでは、人口45万に対して、4万頭のロバがいるという。町の中心部に住み、急速に近代化しつつある社会に順応できている人は、車を使う生活になっているが、大部分の人々は何百年も変わらぬ生活を続けている。刈った麦を運ぶのも、収穫した西瓜をバザールで売るために運ぶのも、ちょっとそこまで用足しに行くのも、ロバに牽かせた2輪荷車だ。
【上記画像は、西域南道ホータン付近にて】

 遺跡見学へ出かけると、入り口でバスを降りたあと、かなりの道のりをロバ車が運んでくれる。荷台に車輪を何の緩衝器なしにつけたこの車は、でこぼこ道を行くと、ゴツゴツと突き上げてきて、決して乗り心地はよくない。ロバは小さな体にしては、重い荷を牽き、よく働く。粗食に耐え、20年は働き続けるという。人々は家族同然に可愛がり、死ねば手厚く葬るという。

 しかし、ロバ車の生活も少しは変わりつつあるようだ。今はロバを使っているが、終わりになれば、次はバイクだとある農夫は語った。バイクで荷車を引くバイク車だ。ときおり見かけたが、ひなびた田園風景に似合わない。やはりロバ車がいい。モータリゼーションがこの地に浸透するのは、まだずっと先のことになるだろう。

 他方、タクラマカン砂漠周辺の各地で、石油開発が進んでいる。クチャ周辺では、黄色い炎を吹き出す煙突が、あちこちに望めた。石油汲み取りの際の気化ガスの燃やす、油田特有の火だ。石油関連の産業設備も随所にある。送油管の敷設工事も盛んに行われている。タクラマカン砂漠を南北に横断する砂漠公路を通ったが、ここからも油田を掘削する高いボーリング塔が遠くから望めた。もともとこの公路は石油開発のために敷設された。中国人ガイドによると、タクラマカン砂漠の推定石油埋蔵量は、サウジアラビアを超えるとという。にわかに信じがたいが、何の役にも立たず、人の侵入を拒むだけの広大な砂漠(日本全体よりやや少ない程度の面積)が、今や石油の宝庫に変わりつつある。【公表されている石油埋蔵量のデータによると、中国全体の残存埋蔵量は、サウジの7%にすぎない】

 急激な経済発展を遂げつつある中国は、今、猛烈に石油を必要としている。石油は、エネルギー、石油化学、ガソリンなどの点で、経済発展の基本要件をなす。中東、ロシア、中央アジア、アフリカなど、あらゆるところに石油取得の手を延ばし、原油価格高騰の一因となっている。東シナ海では、コスト高のガス田開発に手をつけ、日本と境界線争いをひき起こしている。もしタクラマカン砂漠にサウジアラビアを超える石油埋蔵量があるなら、外に求めることはないのにと思う。埋蔵量は、ガイドが言うほどはないのかもしれない。あるいは、自分の懐にあるものは先に残し、有り余る外貨を使って外から買い付けたり、コスト高でも境界ぎりぎりのガス田開発を手がけた方がいいと、戦略的に考えているのだろうか。何十年か百年か先、石油枯渇時代を迎えたときに、この巨大砂漠の下に潜む豊富な石油がものをいうのかもしれない。

 いや、これは素朴なロバ車のことから飛躍しすぎた。しかし、前時代的なロバ車が行き交う地域が、石油基地となり、発展する中国経済を支えようとしているという現実が、今の中国社会のピンとキリの落差をあらわに示しているように思うのだ。

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