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2006/06/23

カシュガルの市場で

060623sundaybazar

 カシュガル。民族の十字路とも呼ばれる地だ。タクラマカン砂漠を北沿いに、あるいは南沿いに迂回した、西域北道と西域南道の二つのシルクロードが、再び交わり、また西、サマルカンドへ、南、ヒンドュークシュ山脈を越えて、パキスタン、インドへと分かれている地点。日曜日には10万人が集まってくるというバザールへ行けば、さまざまな人種が入り交じり、商い、食べている。

 この地に立つと、ここはもうとても中国とは思えない。政治の分け目からすれば中国最西端の都市ではあるにしても。ほとんど話されているのは、ウイグル語であり、『ニーハオ」より「アッサラマレイコム(あなたに平安を)」の挨拶が、通用する。ウィグル族とひとくちに言っても、そのルーツは複雑のようだ。天山山脈より北、さらにはモンゴル平原に住んだチュルク系のウイグルや、もともとタリム盆地に住んだインド・ヨーロッパ語系民族などを祖先とするといわれる。たしかに中近東系とも、スラブ系とも、モンゴル系とも見える、さまざまな顔の特徴を見る。歴史上多くの民族が行き交い、遊牧し、移住するなかで、混在し混血して今のカシュガルを現出しているのだろう。

 それはカシュガルだけではない。おそらく漠然と中央アジアと呼ばれるあたりの人種・民族状況はそんなものだろう。そこを人工的な国境線が分けている。新彊ウイグル自治区と境を接するカザフスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンなど、さらにその向こうにあるウズベキスタン、トルクメニスタン、イランなど。ずっと地続きであり、人々は国や民族などというものにこだわらずに、いわばバリアーフリーに往き来してきた。この「地続き」ということの意味を、このカシュガルの地に立ってみるとひしひしと実感する。

 ホテルのテレビで、プーチンやイランのお騒がせ大統領アフマディネジャド、またパキスタンのムシャラフ大統領、そして中央アジア諸国首脳らとおぼしき人々を前に、胡錦涛(フーチンタオ)主席が挨拶をし、円卓を囲み会談している場面が、長々と映し出されていた。いったいこれは何だ、と思ったが、中央アジアを囲む諸国のサミットが存在するのだ。上海協力機構(SCO)といい、前身の「上海ファイブ」設立から10年、SCOに改組されて5年になるという。かつてソ連の一部だった中央アジア諸国で、国境を越えた武装勢力のテロが頻発し、それらの国々だけでなく、中国、ロシアを悩ませた。この地域の軍事的安定を協議し、協力するのが当初の目的だった。その後中・ロにとって、この地域のエネルギー資源が関心事となった。さらには、アメリカ一極支配に対する対抗軸、というような意味合いも生じてきているようだ。正式加盟国は、中、ロのほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン。オブザーバーとしてインド、パキスタン、モンゴル、イランが参加している。オブザーバーではないが、アフガニスタンのカルザイ大統領も同じ時期に会議の開かれた上海に来ていて、サミット一行に合流したらしい(TIME 06/6/26号に載っている写真にはカルザイも並んでいる)。

 カシュガルという場所で、この会議の映像を眺めると、なるほどこのようなまとまり方もあるのはもっともだと思える。ユーラシアは地続きで一つ、ともいえる。しかし内部事情は複雑であるようだ。中、ロは、互いに利害を異にし、他の諸国との関係においても対立する場面がある。この協力機構への思惑は互いに違うだろう。中央アジア諸国には、独裁的で非民主的な国々も多い。アメリカと距離の取り方においてもそれぞれに違う。アメリカと友好を深める方向のインドと、今もっともアメリカが敵視するイランが同床異夢で加わっている。アメリカはイランが加わり、反米同盟となることを気にしているようだ。しかし、この会議で、中ソがイランに何かを言ったらしい。会議後、イランは濃縮ウラン問題について多少態度を軟化させている。地域を地続きとする諸国が同床異夢ながら、話し合いをする地政的必然性を、中央アジアを身近に見て理解した。

 しかし、こういう政治レベルと、実見する民衆レベルとが、いかにも乖離しているように思える。上をどのような政権が治めていようと、自分たちの生活に変わりはないよ、少なくとも平和でありさえすれば、というような感じだろうか。ユーラシアは一つ、と書いた。それに二つのことを付け加えておきたい。地続きのこの大陸から、日本は切り離された、特殊な国だな、とつくづく感じること。またユーラシアは一つというのと別のレベルで、中国は決して一つではないな、とも感じること。漢人を主体とする中国政府は、うまく辺境の地を治めているが、内部は決して一つとはいえない。ウイグル人はおとなしく治世を受け入れている。しかし、彼らの生活ぶりは、もっと悠久不変で、どう転ぼうとどっこい生きている、それが大事さ、という風に見える。

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コメント

はじめまして!
旅行記のカシュガルというところに目を向けたら、ちょっとおかしい内容がありました。
中国侵略者のプロパガンダをそのまま日本語にして発表せずに、もう少し勉強されてから、まじめに書いていただければ幸いです。ウイグル民族をはじめ、東トルキスタン国民の心に傷をつける内容が書いてありました。この土地は中国ではない。今は中国侵略者の支配もとにおかれて、非常に苦しく圧迫、弾圧されています。独立を実現するまで。
これから東トルキスタンについて書くときに
www.turkistanim.org
をご参考にしてください。ご質問があればメールで聞いてください。
ご健康をお祈りいたします。

投稿: ウイグル太郎 | 2007/04/18 22:34

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