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2006/09/30

もっと風を

060930windpower

  中国で見た風力発電機が林立する風景(クリック→拡大)

 中国の新彊ウイグル自治区を旅行したとき、トルファンとウルムチの間で、風力発電機が林立するのを見た。その数は百を越すとみたが、説明を聞くと、300基まで増やす予定で、機器はオランダからの輸入だという(ガイドはオランダと話したが、デンマークかもしれない)。この地域は石油開発が活発に行われているが、同時に何百という風車を導入している。深刻なエネルギー不足と、それに足早に対応しようとしているこの国の現状をまざまざと見る思いだった。

 風力発電は、自然の風力を使う。水力発電と同じように再生可能エネルギーである。化石燃料のように使ってしまうと、資源量が減っていくわけではない。だから再生可能。発電時には温室効果ガスを出さないクリーン・エネルギーである(機器の製作・設置段階でのエネルギー消費はあるが、いったん作ってしまえば排出量はゼロである)。理想的なエネルギー源であるが、いろいろと問題はあるらしい。ウィキペディアの「風力発電」に、長所・短所や現状での問題点がよくまとめられている。

 昨日、偶然だが、新聞で3つの関連記事を目にした。
・朝日新聞の経済欄の解説記事「風力発電・向かい風」には、クリーン・エネルギーが売り物だったのに、今や自然保護団体などが各地で「生態系の破壊、景観の破壊につながる」と建設反対の声を上げている、とあった。
・ニューヨークタイムズには、"Ascent of Wind Power" (06/9/28)という記事があって、インド、中国では風力発電の導入が盛んに進められている様子を伝えている。
・朝日新聞茨城版には、県南の海岸沿いにある鹿嶋市の企業が、自分の工業用地に石炭火力発電所を建設中だが、その近くに大型の風力発電機10基がいわば併設され、これは関東随一の規模になるという記事がある。全国版で逆風といい、地方版では進行中という、同じ新聞紙上にちぐはぐな記事が同日に掲載されている。

 まず、最後の記事から少し詳しく見ると、石炭火力発電所は50万キロワット。最近の原子力発電所一基の半分にもならない発電量だが、茨城県についていえば、県全体の電力の20%をまかなう。近辺の海岸沿いに同じ系列の会社が風車を設置することがユニークで、しかも2万キロワットの風力発電機10基を建て、間もなく営業運転をはじめる。鹿嶋市の半数の所帯の電力はこれでまかなわれるという。海岸沿いの工業団地では、環境上の問題がよそほどないのだろう。温室ガスを排出する。その埋め合わせに風力を併設という考え方なのか。

 最初の記事にある生態系の破壊などの問題は、やはり狭い国土しかない日本独特の問題だろうか。森林破壊などが非難されている。野鳥の会も反対のようだ。渡り鳥の飛行ルートで被害があるという。ただ、風車が大型になるにともない、回転速度は遅くなり、鳥類への問題はほとんどない、との意見もある。騒音、強風、落雷などの問題をいう人もいるが、いずれも技術的に解決可能である。景観がどうか。確かに国立公園の美景を損ねるような場所は問題だろう。しかし、風車のある風景は、人工物としては美しい。デンマークの海岸沿いの海の中、スペインの低い山などに林立する風車は、なかなかの見ものである。

 ニューヨークタイムズの記事は、インドの風力発電機の製造会社が業績を伸ばしていて、総設置容量からして、世界5位に食い込んできたと書いている。インドの電力事情はひどいらしく、むしろ風力発電が伸び、製造会社は、アメリカに下請け会社を設置するほど成績を伸ばし、技術レベルも高いらしい。中国にも売っているが、中国に技術をとられないかを心配しているようだ。風力発電規模は、インドが昨年は48%の伸び、中国が65%も伸びている。中国もインドも、増加する電力をまかなうのに、とりあえずは石炭火力で、長期的には原子力で対応しようとしている。しかし環境技術の遅れている両国の石炭火力は、酸性雨の被害をもたらし、また温暖化ガスの排出を増加させる。やはり風力は大事だと力を入れている。中国は、2020年までに、電力の1/5を再生可能エネルギーとする計画だ。風力への期待が大きく、インドを追いかけるのに懸命である。

 私がこんな話題を取り上げるのは、日本ではどうも風力を軽視する傾向があるように思うからだ。たまに話す原子力関係の人は、風力はダメと、決めつけるようなことをいう。どこそこのは壊れたとか、あそこは設置したけれども発電量はさっぱりとか、悪い噂ばかりを口にする。世界の趨勢と、逆を向いている。風力でまかなえる割合は、確かに少ないだろう。数だけは04年の統計で924基、しかし設備容量は90万キロワット程度、それを2010年に300万キロワットにする計画だが、とても達成できそうにないという。製造技術も外国に立ち遅れていて、輸入に頼っている。本来なら日本の重電機メーカーが得意としてもいいものだろうに。

 全世界では電力の約5%をすでに風力が担っている。日本ではまだ言うに足りるほどの割合になっていない。調査の上では総発電量の7-10%は可能ともいわれる。環境問題などは、関係者がその気になれば解決できる未成熟の問題に見える。エネルギー分野の人を先頭に、もっと風力に関心を払っていくべきだ。

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コメント

この間、日本の電力会社は風力発電の買い取り価格を引き下げしたと思いましたが日本の電力会社は電力品質を非常に気にするようですね。海外とは管理レベルが違うんでしょうか?それとも日本の電力会社が怠慢なんでしょうか?

投稿: lba | 2006/10/01 10:34

Iba さん、コメントありがとうございました。

風力発電の現状を、インターネット検索で調べてみました。

問題は、電力会社の買い取り価格というより(それもありますが)、国全体としての取り組み、やる気にあるように思えます。エネルギー特措法(RPS)というのがあり、国は、電力会社に買い取りの義務を課しているのですが、その目標値が非常に低く、各社とも軽くクリアしてしまっているほどのようです。それ以上は補助金も出ませんから、電力会社のやる気を引き出せません。むしろお荷物となっているようです。出力の変動があるためです。解列といって、電力の需要が低い季節、時間帯には、風力からの受電を止めてしまうらしいですね。これでは、せっかく風力発電機を導入しても、余剰電力を電力会社に買ってもらえず、宝の持ち腐れになってしまう、というような事情があるようです。

もっと目標値を引き上げ(現状では、全発電量の0.2%という数字を資料で見ました)、電力会社に買い取り量を増やすように持って行かないと、風力を導入しようとする地方自治体、民間会社、NPOなどが増えないでしょう。

まず、国としての取り組み姿勢が変わらないといけないようです。

2,3,リンク先を書いておきます。

・日本の風力発電が育たない理由を考える
http://homepage3.nifty.com/carib7/eng/wind/think_now.html
・「新エネルギー/国は導入促進策の強化を」
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2006/sha20060405.html
・再生可能エネルギーの普及促進策と技術課題
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt053j/0508_03_feature_articles/200508_fa03/200508_fa03.html


投稿: アク | 2006/10/02 07:15

追記、ありがとうございます。解列なんて知らなかったです。
風力発電に力が入っていないのは原発が利権になっているからじゃないですかね?自治体には交付金が入るし原発関連企業は実質、独占企業ですよね。核燃料サイクルも後退するか不要論まで出てきてしまうかも。
あと停電が許されないという日本国民からの圧力が海外とは比べ物にならない気がします。鉄道も分単位の運行ですし。これでは風まかせの風力発電の比率を上げられないのではないでしょうか。

投稿: lba | 2006/10/04 20:29

原発に力を入れる何分の1でも、資金を回せば、風力や再生可能エネルギーは、もっと進むでしょう。それは温暖化ガスの削減目標が決められているだけに、必要な施策なのです。風力はその割合が大きくなれば、出力の変動はかなりカバーされてくるといわれています。多種の発電方式を組み合わせることで、停電の心配までする必要はなくなります。

投稿: アク | 2006/10/05 17:53

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