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2006/12/19

もう一度、桜井淳へ

 技術評論家・桜井淳が、ポロニウムをめぐるやりとりは、自分の素朴な他意のない疑問を述べたまでで、お互い知り合い同士なのだから穏やかに終結しようよと、というようなことを私宛のメールのかたちで、自分のブログに載せている(ここ)。技術的な問題点をめぐる黒白の問題だったのに、それを最終的につけないまま、「誤解」だの、「物理学者の品格」だのということばで、終結を図ろうというのはだらしがない。

 私が、彼の名を明示して、彼の書いていることの間違いをブログに書く気になった動機はこうである。「ポロニウム再論」で書いたように、彼宛に送った直接メールの内容を取り込んで(悪いことばで言えばパクって)、彼が書いたエントリの内容やタイトルを修正して、論旨を微妙にずらすという、技術評論家としていかがかと思う行動をとったことだ。「ポロニウム再論」で、詳しく論じたことにまともに答えず、いまだにラジウム説に固執し、ポロニウムは半減期が短くてダメとか、ラジウムにはベリリウムから中性子をたたき出せるガンマ線がないことなどをその後も書いている。

 このやりとりで、技術評論家として数々の場で発言している彼が、物理の知識や判断能力に、かなり危ういところがあることを知った。彼に自宅に来てもらって話すとか(これまで何度かそうしている)、メールを送るとかしてもいいのだが、またパクられて、生半可な知識をひけらかすのに使われる。やはり公然と彼の間違いを指摘するしかあるまい。なお、桜井と敬称抜きで書いているのは、けんかを売るつもりでいっているのではない。第3者的に書く場合の慣習に従っているだけだ。

 前ブログ(「間違いの上塗りだな、桜井淳」)で書いたように、私も「今では」(彼が後づけでタイトルにつけた表現)ポロニウムが使われていないことを、この問題を調べるうちに知った。そのことは認めておこう。しかし、代わりに何が使われいるか、彼は分かっていない。いまだにラジウムあるいは「半減期の長い取り扱いやすいもの」などといっているのは、そもそも原爆の起爆時の物理過程を理解していない証拠である。なぜラジウムがダメなのか、ラジウムの(γ,n)による中性子発生をどう考えたらいいか、そこをよく理解しないで、ポロニウムは維持管理がたいへんですよ、などという物理過程としては本質ではないところに逃げ込んではダメなのである。ラジウムは全く考慮にもいれられずに、当初からポロニウムが使われた。その後、核兵器の性能向上のために別種のものに置き換えられた。その方向をしっかり理解しないとダメなのである。

 このブログでは、技術的な問題に深入りするのは避けたい。別にサイトを作って、そこに詳細を書くことにした。ラジウム問題に限らず、彼が原爆問題について発言していることに、いくつか誤りがある。その点も追々書くことにして、とりあえず「ラジウムはなせダメなのか」を書いた。ラジウム中性子源の強度では、瞬間的な強度がたりないこと、ラジウムは製造後半月もすると崩壊系列の娘核が平衡状態に達し、(γ,n)中性子を放出するようになることなどを詳論した。桜井はよく読んで勉強してもらいたい。

 ポロニウムの代わりに、進歩した核兵器ではなにが中性子源イニシエーターとして使われているか、まだ桜井は分からないようだ。それは宿題としておこう。いつになったら調査が行きつくか。見ものである。

 核兵器についての科学技術的な議論をすることは、これまで日本ではある種のタブーであった。しかし、例えば北朝鮮の核実験とその技術的達成度をどう評価するか、などが現実の問題になってきている。正しい知識をもち、まっとうな技術的判断をする専門家が必要になってきている。いい加減な知識をもつ技術評論家がする、いい加減な議論がまかり通ることは、かなり危険であり、看過できない。私は特に、それについて詳しいわけではないが、ある程度核物理や炉物理を学んだものなら、分かる程度の知識は持ち合わせている。また公開されている文献を読めば、えられる情報も結構ある。いくつかの問題点について、時間があれば上記サイトに続けて書いていこうと思う。本当は、こんなテーマではなく、別のエントリを書きたいところだが、久しぶりに物理学研究者としての闘志が戻ってきた。私のブログの常連読者には、寄り道をおゆるしをいただきたい。

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コメント

>このやりとりで、技術評論家として数々の場で発言している彼が、
>物理の知識や判断能力に、かなり危ういところがあることを知った。
>彼に自宅に来てもらって話すとか(これまで何度かそうしている)、
>メールを送るとかしてもいいのだが、またパクられて、
>生半可な知識をひけらかすのに使われる。

彼の常套手段ですが?

本日も鉄道技術に関して生半可な知識で書いているため、ある場所で指摘されています。

投稿: 通りすがり | 2006/12/19 23:13

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