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2007/08/13

技術評論家・桜井淳、私を名誉毀損告発に動く

 2週間ほど前の夜、電話を受けた妻が「あなたに水戸警察署からですって」と、心配そうな顔で私に受話器を渡した。警察からの電話など、とんと思い当たることがない。とにかく出てみた。「水戸署刑事二課の○○です。桜井淳さんという方をご存じですか。じつはその方が、貴方を名誉毀損で告発したいと署に来られたのです。そこで貴方からも事情をうかがいたいのです。」と優しい声の女性刑事さんがおっしゃる。とうとう桜井は、警察にまで行ったのか。私とのブログのやりとりで、彼はだいぶ痛手を被ったらしい。何とか私のブログエントリをネット上から消したいと画策してきた。プロバイダーに2度ほど訴え、うまくいかず、今度は警察へ行ったわけだ。新潟原発の地震災害でマスコミに用いられ、元気が出たのか。それともマスコミに以前ほどは用いられなくなり、被害者意識を駆り立てられたのか。

 告発のポイントは、原発事故があったとき、原発の技術幹部がいち早く彼の自宅にやってきて事故詳細を彼の耳に入れようとすること、また事故現場を特別に見学する便宜を図ることなど、私がブログに書いたこと(ここ)が、私の作った虚言であり、誹謗中傷にあたり、被害を受けた、ということらしい。しかしこれは事実、彼が私に向かって、得々と喋ったことである。おまけに彼はネット上に載せていた「市民的危機管理入門・日本原子力界の話題」(高野孟が編集をしていたネット上の週間誌「東京万華鏡」に連載記事を書いていた)で、ほぼ同じ趣旨のことを具体的に書いている(あとで引用してお目にかける)。また私がそのエントリを書いたさい、そのような話しをわざわざでっち上げる必要もないことだった。

 水戸署は、彼の言い分を聞いたあと、私の一連のブログを丹念に読んでくれたらしい。私に電話がかかってきたときには、すでに事情を把握した上で、念のために、私からも説明を聞きたいということだった。それも署に呼び出すこともなく、電話で話を聞くので十分ということだった。私は彼との関係、ブログ上で論争するようになったいきさつ、桜井はかつて私のブログのおいてあるプロバイダーに訴えたが、プロバイダーは誹謗中傷に当たらないとの判断をしたこと、さらに桜井は、私のブログにメルアド記載がないことは会員規約違反にならないかと筋違いの訴えまでして、私のブログをネット上から消滅させようとしたらしいこと(ここ)などを、お話しした。

 それから2週間、あるいは署に両者に来てもらって、事情聴取をするかもしれないといわれていたが、そういうことにもならず、今朝水戸署の担当刑事さんから連絡があって、警察としては事件性がないので、告発は取り上げない。桜井には、必要があれば本人同士話し合ってみたらどうかと助言し、申し出を却下したという。こんな根拠のない告発が取り上げられるはずはないと確信していたが、警察に訴えられ、一時とはいえ被疑者の立場におかれていた。無事落着でやれやれである。

 民事という手段は残っているが、彼に勝ち目はあるまい。よく知らないが民事裁判には金がかかる。そこまでやるか。出方を見守ろう。それより、私に直接会いに来ればいいのだ。しかし会って何を主張できるというのか。彼はそれが分かっているのだろう。だから周りから卑劣な攻め方をしてきたに違いない。

 以下、これまでの経緯をまとめておく。時間と興味のある方には読んでいただこう。

 私はこのブログ上で、技術評論家としての彼の言説のありようを何度か批判してきた。評論家としてテレビに何度か出ている公人である。その言説の信用性を批判するのは、ブログという手段をもった一市民として当然のことであろう。

 以前、彼は拙宅に何度か訪れて話し込んでいくある種の友人であった。定年を目前に大学院に入学し、技術論で博士号を得たいと意気込んでいて、私の意見を聴きたいとやってくるのだった。彼の論文草稿をていねいに読み、コメントを書き込んでやったり、参考になりそうな書籍を貸したりした。そんな訪問の際に、けっこう雑談もした。原発事故評論家としての彼の裏話が、ぽろりと漏れたのもそんな雑談の折だった。

 彼はそのころ、自分のブログを立ち上げようとしていた。依頼を受けて私が手助けした。ブログとはどんなものか、どのプロバイダーのブログが使いやすいか、マニュアル的なものを貸し、メールなどで何度も相談に応じた。彼にとってブログの本来の目的は、市民科学の名の下に、ネット上の論文誌を立ち上げることだった。そんなことが果たして成功するかどうか、私は疑わしいと思っていた。じじつ彼の始めたブログの内容はひどいものだった。誇大な自己宣伝、他人・他機関の誹謗中傷、書かずもがなの駄文などで埋められていて、手ほどきしたものとして恥ずかしいものだった。それだけではない、私から聞きかじったこと、彼の間違いを私が指摘して書き送ったメール内容などが、そのまま自分の意見であるかのようにエントリに化けるに及んで、彼の評論家としての言説のいい加減さにあきれ果てた。彼と友人関係があるとはいえ、彼の言い過ぎ、間違いの多い言説を放置するわけに行かないと、このブログで桜井批判を始めたわけだ。最初は北朝鮮の原爆実験に関して彼が書いたり、マスコミに発言したりしたことの誤りを正すことからだったが、次第に彼の技術評論家としての信頼性に及ぶことになった。

 私が書いた桜井批判のうち、いちばん彼にこたえたらしいエントリの該当部分を少し引いて説明してみる。全文は『言い過ぎだよ、桜井淳(06/12/31)』にある。参照いただきたい。このエントリでは、桜井が自分は原子力に関して表も裏も把握している数少ない評論家だと自画自賛したエントリを書いたことに対し、彼の実像を多少知っているものとして、それはないだろうと書いたのだった。その中で、反原発運動家の言論に悩まされていた原子力界の一部の人が、彼を、毒の薄い便利に使える論者として育てた事情に触れたついでに、彼から聞いた話しを紹介して、以下のように書いた。

 彼自身から聞いた話だが、電力会社は事故・トラブルがあると、幹部クラスが技術の専門家を連れて、いち早く彼の自宅に直行してくるそうだ。マスコミが彼のコメントを求めに来る前に、電力側の言い分を彼の耳に入れておこうというわけだ。あるいは彼を事故現場に招き、現場を見せる。こんな関係が、電力会社と彼との間にあるようだ。それをどう判断するか、読者におまかせしよう。

 彼が私との雑談の中で、気楽に話したことだが、私の批判の文脈の中でそのように書かれたことは、私の想像以上に痛手だったようだ。すぐに彼は自分のブログで、私を虚言癖があり信用できないとか、電力会社は東大の先生や原子力関係機関の幹部にならともかく、自分ごときに、大事な事故情報をいち早く伝えようとするはずがないとか、現場見学は、申し込めば誰でもできるとか、言い訳していた(これもすべてダウンロードして保存してある)。ある時は大言壮語して自分を大きく見せようとし、問題となれば、自分は小者でそんな立場にありません、と小さくなってみせる。そういう男なのだ。

 事故時に電力会社の幹部が飛んで来るという事実に関しては、前述のように彼自身がネット上のサイトに、2001年11月29日、以下のように書いている。ここで全文を読むことができるが(文字化けすることあり、その場合は表示文字コードをShift JIS または Shift JIS X0213にするとよい)、肝心の部分を引用しておく。

 浜岡原発1号機の事故の翌日午後、浜岡原子力発電所の部長から電話が入った。水戸まで来たいというのだ。すぐにお断りした。というのは、私自身忙しいこともあったが、それ以上に、わざわざ静岡県浜岡町から茨城県水戸市まで来ていただくことに対する時間と経済的な負担の大きさを考慮すると、申しわけなく、どうしてもお受けすることができないと思った。しかしながらどうしてもと言うので翌日の午後6時過ぎに水戸駅でお目にかかることにした。当日、原子力計画部長HIと原子力管理部副長TIが現れた。

 まずふたりから事故の状況の説明があった。そのつど質問しながら話を進めた。最後に事故に対するお互いの考え方をディスカッションしながら示した。私にとってはいくつか新たな情報や原発での実際面での運転管理の様子が分かり、ありがたい内容であった。そのような機会を持てたことは結果的にはよかったように思える。その後も関係者とは電話やメールで何度かやり取りがあり、つぎのような未公開情報を得ている。 (以下略)

 これを読めば、私の書いたことが誹謗中傷でも何でもなく、彼自身が事実であることを明かしていることは、誰の目にも明白だろう(「自宅」か「水戸駅」かの違いは、このケースでは些末であろう)。その時の状況に応じて、ああもいい、こうもいい、おまけにそれを指摘したものを、名誉毀損で告発する。市民科学を唱え、人々のための技術評論を志向するなら、まず人間であることがどういうことなのか、真摯に考えることから出直してもらいたいと思う。

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コメント

おひさしぶりです。

桜井氏は、そんなことを裏でやっていたのですね。
ずいぶん前のエントリだから、無視しても良いと思ったのですが、彼にとっては無視できないことだったんですね。

これで、合法的な方法でブログつぶしができなくなった今、手段を選ばない方法でブログつぶしをしやしないか。
そんな心配を今しています。

投稿: 木村孝@愛知 | 2007/08/13 19:30

木村孝さん、ご心配いただきまして、ありがとうございます。「桜井淳」で検索すると、例のエントリが出てきます。彼はなんとかこれをリンク外れにしたいのでしょう。しかし、何人かの方が、すでに引用して書かれていますから、もはや手遅れでしょう。
彼はもっとまともな方向へ、彼なりの言論をやっていって、それで見直されていけばいいのだと思います。あと十年、二十年、自分は華々しく言論活動をしていく、年寄りは静かに消えていけ、そう彼は書いていたように思うのですが、その方向がうまく展開できないのでしょうか。気の毒なことです。

投稿: アク | 2007/08/13 20:26

 私が今まで関わった方では、ここまで難しいことになりませんでしたが困ったことになった方がおられました。その方の根底には強い学歴コンプレックスがあり、一生懸命なのですが、多少の知識や聞きかじりで全てが分かったように勘違いし、素人の方々へ見せびらかしたがる癖のある方でした。その方は正しい知識に基づく理解を世間に広めることが目的ではなく、素人の方々から専門家として尊敬の眼差しを向けられること、付加的に得られる肩書きが重要ですので、自分の知識ソース(いわば師匠ですが)を含めて、折角得られた尊敬の眼差しや肩書きを破壊するものは全て敵になるといった有様でした。
 アクエリアンさんの事例を参考に、何事に関してもいつどのような事態が起こってもいいように、私自身の言動、書き物の内容もくれぐれも慎重を期したいと思います。勉強になりました。

投稿: Aurora A | 2007/08/14 03:29

Aurora A さん

お書きになった事例に似た事情が、私の関わった場合にもあります。そのあたりを明かし、分析してみたいと思うことはあるのですが、プライバシーに関わることでもあり、今のところ差し控えています。

一般的にいえば、人間にとってさまざまな種類のコンプレックスが、異常行動の原因になることが非常に多いですね。

ご指摘ありがとうございました。

投稿: アク | 2007/08/14 08:12

アクエリアンさん、お久しぶりです。

さて、桜井氏のものと思われるブログがあるようです。

榛名山の見える果樹園で働く乙女の趣味と社会時評
http://blogs.yahoo.co.jp/harunasan20062000

桜井氏のファンの若い女性を装っていますが、どうも桜井氏本人のように思えます。
ひとまず、連絡まで。

投稿: 木村孝@愛知 | 2007/09/19 16:47

木村孝@愛知さん

よく見つけられましたね。あれだけ書き散らしていた人が、書く場を失い、そのままでいるはずがないと思っていました。それにしても何というタイトルでしょう。

たしか彼は、前橋工か太田工の出身だと記憶していますから、土地勘という意味では「榛名山の見える・・・」は当たっています。

07/6/5のエントリ「日本の核議論の欠陥」の中で、私の実名を出して「原研出身の物理学者の飯泉仁氏の解説もまったく信用できないそうです」などと書いているところをみると、彼でしかあり得ないでしょう。

それにしても、あいかわらずくだらないことを書き散らしていますね。画像はパクリでしょう。今後の推移をときおりのぞいてみましょう。

投稿: アク | 2007/09/19 20:40

アクエリアン先生 こんにちは
三苫と申します。

以前、横からコメントをして失礼をしました。気にかかっている
ことがあって、無作法ですが、またコメントさせていただきます。
自分は以前から安全論に関心があって、個人的に調べていました。
それでアクエリアン先生の御発言に気掛かりなことがあります。
アクエリアン先生は桜井先生のことを次のように仰っておられます。

「いうなれば、彼はずっと下積みとして組織にいた。そのような経歴からして、「組織のメカニズム、監督官庁、主要企業との相互メカニズム」と彼が称するものを、どれだけ実地に経験し得たか。うわさ話を耳にしたことはあるだろう。ここ2,3年、私のところにも出入りして、私の経験談を何かと聞いてもいった。そんなことをもって、メカニズムを知り尽くし、原子力界の”表の世界”と”裏の世界”を把握したというのは、もう一度いうが明らかに言い過ぎだろう。私の知る部分についてこうである。他は知らぬが、推して知るべし、かもしれない。」

これはアクエリアン先生が言い過ぎをされていると自分は思います。
安全論の立場からの「組織のメカニズム」を把握するには、いわゆる
下積みというのは現場のことですから、構造を把握しようと意識すれ
ば、むしろ好都合なポジションです。20年前に原子力工業に連載され
た文章も「下積み」から見えた安全論、つまり事実に基づいた安全論
というものだったと思います。

また、アクエリアン先生の次の御指摘も自分には同意できません。

「第3パラグラフについて、多少経緯を耳にしている。明かしてもいいだろう。電力界、原子力産業界は、当時原発安全問題について、いわゆる反原発派の論客に悩まされていた。広瀬隆、高木仁三郎などである。原研などにいる安全問題専門家が対応したが、しょせん原発推進派とのレッテルを貼られていて、旗色が悪い。反原発でもなく、推進の色も付いていない、いうなれば中立の評論家を育てて、毒の強い反原発派の論客に対抗させよう。森一久はそのように考え、すでに頭角を現しつつあった桜井を使おうとしたようだ。マスコミも、反原発論者のあまりに旗色のはっきりしたコメントよりましと、桜井を便利に使いはじめた。彼もその流れにうまく乗って、原子力界にとって比較的無難な役割を演じてきた。そんな流れで今日まで来ている。」

当時、自分も連載を読んでいて、「すでに頭角を現しつつあった桜井
を使おうとした」とアクエリアン先生が仰ってる動きを、桜井先生の
文章から感じることがありました。桜井先生の文章はとても正直です。
当時、桜井先生の葛藤が文章から読み取れて胸が痛くなりました。
しかし「彼もその流れにうまく乗って」とアクエリアン先生が仰って
いるのは実際と違うと思います。当時の桜井先生が、御自身の将来を
優先したとはとても見えません。あくまでも自身の安全論にこだわっ
て行動されていたと自分には見えています。今は多くの人達、原子力
関係者の人達も、絶対安全は無いとか言っていますが、最初に勇気を
持って発言したのは桜井先生でしょう。当時はどれだけリスクがあっ
たかを、アクエリアン先生にも思い起こしてほしいと望みます。
                           三苫拝

投稿: 三苫 | 2007/09/22 23:27

三苫さん


まず、何で今ごろになって、このコメント?という気がします。

コメントで引用された私の意見は、彼のブログ・エントリに対する私の意見ですから、部分だけ取り上げて問題とされるのはどうかと思いますが、お答えしておきます。

さて、第1点、下積みだから見えてくる問題点があること。たしかにその面はあるでしょう。原発での下請け孫請けに働く人々が見た原発の実態のようなことがその一例としてありましょう。しかし、私には、彼の原子力安全論が彼の下積みとしての現場経験に根ざしたものと思えたことはありません。職場での彼と、技術評論家としての彼は、私の見るところ分裂していて、いわば彼は二つの世界を生きていたように思えます。職場での彼は何をやっていたのでしょう。職場での立場、経験から、原子力界の表の世界と裏の世界を把握している、などといえるとは、私にはとうてい思えません。

第2点。原子力安全について彼が主張したこと。それは、原子力界内部のいわば良識派とでもいう人たちには常識ともいえる意見でした。しかし組織の名のもとにそれを言えば、結局推進側の意見とみなされる。一方には極端な反原発派の意見がある。そのような状況の中で、彼はうまく隙間を見つけて頭角を現し、用いられたのでした。彼は物理学者を名乗り、所属組織の名を出しませんでした。組織に配慮してというより、彼にとってそれが有利だったからでしょう。「葛藤が文章から読み取れて胸が痛くなりました。」はて、そんなものだったでしょうか。端的に言って、彼は売名家のたぐいでしょう。

投稿: アク | 2007/09/23 10:29

アクエリアン先生、こんばんは。
お久しぶりです。

件のブログの画像ですが、windows XPのサンプル画像をそのままアップしたものでしょう。

それにしても、容量が凄いことになって、重くてしょうがない・・。

投稿: SunnySide | 2007/09/23 23:30

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