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2007/11/27

先送りでいいのか

 行き詰まり状態の政治状況についての報道から、政治に詳しくない私のようなものにも見えてくるものがある。この国の将来のために今やっておくべきことを決め、実行に入る貴重な時間を失いつつあるのではないか。あとでふり返ってみて、この時代に何を失ったか、それゆえに人々の暮らしがどれほど損失を被ったかが分かるのではないか。行き詰まりのなか、次の衆院選での勝敗を優先して、与野党とも重要な政治案件を先送りしている。そのつけは大きく響いてきそうだ。

 先送りせずに今決めるべきことは、インド洋での給油などではない。歓迎したくないことだが、税制であると思う。消費税をふくめた税体系全体のあり方である。財政の健全化、年金、医療、地方、格差などの問題は、とどのつまり税のあり方に帰着する。徹底的な歳出削減、官僚主導からの脱却、規制緩和なども併行して進める必要があるのはもちろんだ。しかし税制に手をつけずして財政、年金などの問題、すなわちこの国の将来に関わる基本的問題を解決できそうもないことは素人目にも明らかだ。

 われわれも他人事とせず、みずから考え、議論に参加しなければいけないのではないか。年金、医療などの社会保障は手厚く、税は軽いほうがいい。誰もそう望む。だが、そうはいくまい。大きな借金(一人あたり約7百万円)を抱え、その利払いだけでも大きな歳出科目となっている。他方、老齢化で年金や医療についての国庫負担が増えていく。依然としてあちこちに隠れている歳出の無駄など問題は多々あるが、現在の負担のレベルでは国が立ちゆかないことは明らかだろう。そのことに大胆に立ち向かい、国民にオープンに政策をあかし、未来に向けて国をリードしていく政治家なり、政党がどうして出てこないのか。

 自公政権はすでに姑息な増税を進めてきている。はっきりと国民にこうなると語りかけることなく、内輪の手続きで、まず老齢者控除を廃止し、次に2回に分けて定率減税を打ち切ってきた。実質にかなりの増税である。課税されるほどの年金を受けている高齢者がいちばん痛手を被った。こういうだまし討ちのような増税ではなく、国の将来に関わる政策として税のあり方を明示的に説明し、選挙で可否を問うべきだろう。選挙では論点にしないという、国民の目をごまかすようなやり方でしか増税できないとしたら、情けない。

 増税は、経済状況とのかねあいで、タイミングがあるのだろう。そのあたりは私には分からないが、国の将来像を見据えて、長期的観点から取り組む必要があるだろう。そのことを的確に見据えた政治家なり、政党が、率直に国民に向かってその必要を説いてほしいものだ。

 さて、本年(07年)10月31日に世界経済フォーラム(WEF)が「2007年国際競争力ランキング」を発表した。朝日新聞「世界競争力、日本は8位 経済フォーラム発表」(2007年11月01日06時40分)の記事にはこうある。

 毎年世界の政財界リーダーが集まるダボス会議の主催者、世界経済フォーラム(本部・ジュネーブ)は31日、07年版の世界競争力ランキングを発表した。1位は米国で、日本は8位だった。
 世界131カ国・地域の統計をもとに、インフラ整備状況、マクロ経済の安定度、市場規模、技術力、教育制度などを指数化。経営者ら世界約1万1千人への独自アンケートの回答と組み合わせ、総合的な競争力を評価した。
 (中略)
 日本は科学者や技術者の能力の高さ、企業の研究開発への取り組みの熱心さが高評価を得たが、財政赤字や金融市場の脆弱(ぜいじゃく)性などで減点された。

 より詳しい資料は以下にある。世界経済フォーラムによる「世界競争力報告書2007-2008年版」(速報)について(平成19年11月1日、経産省産業技術環境局技術調査室)

 私は、TIME誌(07/11/26号)が ”The Best Countries for Business" という特集でこの統計にもとづいた分析をしていることから、内容を知った。ランキングを見て、日本が8位だというのは、そんなものだろうと驚かない。かつてもっといい位置にいたが、このところ10位あたりだったと記憶している。上位にランクされている国を眺めて気づくのは、北欧を中心とするヨーロッパの国々の強さである。2位以下、スイス、デンマーク、スエーデン、ドイツ、フィンランドと続く。7,8位がシンガポールと日本で、そこから英国、オランダと続く。ノルウェーが16位、フランスが18位、ベルギーが20位で、ヨーロッパの先進国はほとんどそのあたりまでに入っている。

 かつてヨーロッパの、特に高福祉・高負担(重い税負担)の国々が経済的に停滞しているように見えた時代があった。そのころ日本は日の出の勢いだった。今、日本は沈み、高福祉・高負担のヨーロッパ諸国が、グローバリゼーションの進むなか国際競争力を伸ばしている。日本は大きな財政赤字を抱え、デフレから脱却できず、格差問題の解決に悩んでいる。

 最初に書いた、税の問題を明示的な政策課題にして、国民に説明し、是非を選挙で問うべきだということと、次に話題にした国際競争力ランキングの話は、別のことと見えるかもしれない。しかし、将来の国のすがたを考えるとき、福祉とその裏付けとしての税のあり方が基本の問題だ。それを逃げていては競争力のある国、すなわち、人々が豊かに持続的に暮らすことのできる国とはならないのだ。高福祉・高負担でありながら競争力のある国を目指すのか、格差是認・あいまい税制で、かつ官民絡みのスキャンダルの絶えない国でいいのか。このあたりでよく考えてみるべきだろう。それぞれに国の事情はあるにせよ、ヨーロッパの国々の強さは私たちに考えるヒントをくれている。

 一つの例として、上記TIME誌が取り上げているデンマークのことを紹介しながら、論点を明確にしてみようと思ったが、長くなるので、次回にしよう。

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