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2007/12/11

届かなかった手紙

 「おれ、お前に打ち明けることがあるんだ」。つい先日、高校の在京同期会の忘年会にでたときのことである。何ごともあけすけに話して憎めない「ボッチャン」というあだ名の友人が、今回もカラッとうれしそうに話しはじめた。この人のことは2年半前にここに書いたことがある。それに目を通してから、以下を読んでいただくといいだろう。「お前が転校してからさ、すぐのことだったんだけど」。そう、僕は高校3年になって間もない6月、突然の転校をしたのだった。「同期の女の子がおれに頼みがあるといってきたんだ。お前に手紙を送り届けてほしいと」。転校後、僕は近況をクラス宛ての通信として何度か送っていた。その地方では有数の進学校の仲間に東京での受験事情などを伝えれば、少しは役に立つかと思ってのことだった。多分そのことを知って、クラスの代表株のボッチャンに頼めば、僕に手紙を届けられると思ったのだろうか。「いいよ、と引き受けたのだけれど、おれ、けっきょくお前に送らなかったのさ」。こんなことを平気な顔をしていえるのが、この人なのである。

 いったい誰だったのだろう、その女の子は。一人二人思い浮かばないことはないが・・・、とふくらませて書ければ面白いのだが、じつはそのころの僕は、女の子との付き合いなど想像もつかない、まことにウブな男の子だったのである。これはほんとの話。戦後の栄養不足の時代にとりわけ貧乏な家計の家に育ったせいか。ひどく「おくて」だったのか。ともかく、僕は女の子のことなどほとんど関心がなかった。やっと声変わりし急に背も伸び始めたのは、高校2,3年頃のことだった。

 どこかに書いたことがあったが、同期会のたびに、お前そんなに大きかったかなと、よく言われる。みなの記憶は、中学から高校前半の時期に固着してしまっている。ようやく生長しはじめて間もなく、僕は皆の前から姿を消していた。高校同期の在京組が定例的に集まっていることを知り、そこにに出るようになったのは、ずっとたってのことである。転校以後、その地とは縁がなくなっていた。同じ大学に同期で入ったものが何人かいたが、付き合いが続かなかった。その高校の卒業生名簿に載っていないということが連絡を阻んだ。だがある偶然が同期会とのつながりを回復してくれた。それはまた別の話なので、今回ははしょることにしよう。

 「彼女がおまえに手紙を届けてと頼んできたのは、おれと親しくなるきっかけを作りたかったんだと、おれは思ったんだ」。こういう男なのである。先にリンクしたエントリに書いてあるように、常時7、8人の女の子に同時進行で惚れていたと公言する男である。毎日5通はラブレターをあれこれの女の子に書いては渡していたともいう。ちょっとでも魅力を感じた女の子には惚れずにおれず、女の子といいことをする妄想にばかり耽っていたと、無邪気な顔をして言い放つのだ。くだんの手紙の女の子も自分に惚れて、アプローチしてきたと妄想したとしてもおかしくない。「それで、その子とどうなった?」「しばらくして、あの手紙送ってくれた?と聞いてきた。送ったよ、といっておいた。その子とそれっきりだったな」。

 「その女の子が、ほんとにおれに何かを伝えたいということだったら、おまえ、彼女の気持ちを踏みにじったことになるよな。おれだって手紙を読んでいたら、応えたかもしれないし、それからどうなったか。それにその子は、返事のないことで、おれのことを恨んだかもしれないな」。そこに助け船が入った。Nさんという、僕とパートナーとのなれそめを知っている女性の同期生。「何いっているのよ、あなたにはちゃんとみやちゃんという人が決まっていたじゃない」。それはまた別の話なのだが、ボッチャンへの追及はそこで腰砕けになった。

 その女の子が誰であれ、何か僕に思いを伝えたかったのだろう。僕がそれを読んで、何か反応することから、物語が展開したかもしれない。それを断ち切ってしまった、ボッチャンの不作為の行為。それを責めることもできるが、青春時代というのはそういうものだろう。淡く55年の彼方に消えてしまった夢。

 地方の高等学校の在京組同期会。けっこうメンバーはいるのだが、出席する顔ぶれは限られている。この日は午後3時開会、夕方5時半にはお開きと開催時間を工夫してみたことで出やすかったのだろう。いつもより女性同期生が多かった。久しぶりに遇った人もいた。閉会後男性の大部分はものたりず、夕闇の中、2次会へと繰り出した。女性の参加も少々。そこでもボッチャンとはアッケラカンと飲み交わしながら、この話あの話を繰り返した。おかげで長時間飲み続けすぎた。帰り道、めずらしく千鳥足だった。

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コメント

アクさん

なんだあ、つまんないの!もっとこの話が発展しなかったのが、どうも読み終えてから物足りないです。

せめてその同窓会で出合って欲しかった!

女性というのは、そういう期待をするもんです。題名からすると期待はずれだったのか?いえ、その友人を書きたかったのでしょうね。

投稿: 美千代 | 2007/12/12 06:37

美千代さん

なんだぁ、つまんないの! とは、ほんとにそうですね。
タイトルが誇大すぎたか。

若いころを振り返ってみれば、こんなつまらない話ばかりの積み重なり。それが今ごろひょっこり出てきたので、それを書いてみたまで。事実は小説より奇なり、などということは希有なことで、私のまわりにはありえないです。

投稿: アク | 2007/12/12 21:49

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