« 索引のない本 | トップページ | 『求めない』をもとめない »

2008/02/03

いいんじゃない、福田流

 「つなぎ法案」という暴挙を最後に止めたのは福田首相だったらしい。すでに新聞などにも書かれていたことだが、今日(08/2/3)の日曜朝恒例のいくつかの政治番組で、関係者がそれとなく明かしている。ひたすら低姿勢を保ち、表だって派手に動かず、他人事のように装いながら、最後には収拾に動く。それが福田流のようだ。それを私はけっこう評価している。衆参で政治勢力が逆転している状況を当面乗り切るには、それしかあるまい。あるいはこの時代の政治にふさわしい類いまれな資質を持った首相ではないかとも思える。歴代の自民党の首相にも、自民党政治にもこれまで支持表明をしたことのない者である。とんだ見込み違いかもしれないが、そう書いておこう。

 予算委員会の質疑で、つなぎ法案について聞かれて、「与党の方で何か考えているらしいが、中身を承知していない」とか「与党の方で任せてほしいと言われていますので」などと、他人事のように言っていた。それを「無責任だ。税に関わる法案ならば、政府提出でやるべきだ」と詰め寄られても、「いま与野党で交渉している最中でしょ。そういう段階で、私は内容に関与する立場にないし、必要もない」と、議員立法だから首相や内閣は関係ないと突っぱねた。多くのマスコミは、いくら何でも首相であると同時に自民党総裁なのだから、そんな立場の使い分けはひどすぎると非難していた(たとえば、朝日新聞、1/30、「窓・論説委員室から」恵村順一郎)。今になって、そのように非難した不明を詫びるのだろうか。

 つなぎ法案を自民党の方で進めていることを、福田さんは内心苦々しく思い、そんな奇策で突っ走ることはないだろうと、こんにゃく問答で対応しているうちに、自民党首脳が暴走をはじめ、委員会採決まで強行してしまった。その段階になって、表立たないやり方で収めようと動いたらしい。裏で誰が福田首相の意を汲んで動いたか、いろいろの憶測はされているが、それを明かさないところも、いかにもこの人らしい。前回の大連立構想で党首会談が目標を達せずに終わったときも、福田首相は裏話を一切明かしていないし、小沢代表に文句もつけなかった。言いたいことがいっぱいあっただろうに。

 これが福田流なのだろう。福田さんの首相としてのあり方について、多くの政治評論家は批判的である。トップ・リーダーとしてのリーダーシップがないとか、この国をどうしようとの理念がないとか、宰相としての器なのかなどと論評している。内閣支持率も低迷しているところをみると、国民の多くも不満を感じているのだろう。しかし私は、この人はこの人で、この時代に合った役割を演じていると、受け容れる気でいる。

 理念を強調し、大見得を切り、衆院の2/3強の数をたのみに、強引に推し進めようとする。そういうリーダーが喝采を浴びた時代もあった。それに比べると、福田さんは、腰を低くして、モミ手をしながら苦情を処理しようとしている、大店の番頭さんのように見える。なんだか頼りない。当面の問題処理に追われて、長期的に何をしようと考えているのか分からない。国民生活重視で行くというのが唯一の政治スローガンのようだが、経済や外交をどう進めるのか明確でなく、動きが遅いのが、政治の玄人には気にくわないらしい。

 だが、この政治情勢をどう乗り切れるのか。対立を避け、話し合いを持ちかけ、とことん粘って、その姿勢を国民に理解してもらおう。それを背景に、野党を政策協議の場に引きこもう。そんな戦術なのではないか。その方針によくぞ徹していると見る。この政治状況で、首相の立場にいれば、それも一つのやり方だろう。それしかないかもしれない。強行突破は、野党とにっちもさっちもいかない状況を作り、世論を離れさせ、行き詰まってしまう。あの安倍前首相が、もし体調不良を起こすことなく、いまも首相を続けていたらどうなっていたことか。それを考えると、福田さんに替わった今の状況の方がはるかにマシと思える。

 逆に民主党などの野党の立場からすると、福田流はやりにくかろう。対立を激化し、自分らの方に国民の支持を引き寄せる状況をつくって解散に持ち込む。あわよくば衆院で逆転を図る。そのようなことになかなかなりそうにない。「政局」にならないなかで、政策論議をしなければならない。それにまともに対応できるか。政策力と政権担当の潜在力が問われることだろう。そこで実現可能な政策を提示し、民主党に政権を任せてみようと、国民の多くが納得するようになり、時の風が味方すれば、政権交代もありうるだろう。また政界再編の芽も出てくるだあろう。

 この先、どうなるのだろう。揮発油税の暫定税率維持を含めた予算関連法案の是非は、3月の期限まで先延ばしされただけで、見通しはついていない。これから議会での質疑が行われるが、与野党で何らかの妥協案が模索されることだろう。道路特定財源のあり方について、抜本的な見直しの機運が出てくるかどうか。おおかたの世論はその方向を望んでいるのだが、自民党の中に根強い抵抗勢力がある。民主党が世論を追い風に、それを突破できるか。妥協案を決める最後の段階で、今度のような福田流が出てくるだろうか。福田首相は総裁になるときに、道路族の支持を受けているが、この問題にきちんとした方針で臨めるか。そのあたりが福田政権の天王山だろう。うまく乗り越えられれば、内閣支持率も回復するだろうし、モミ手の福田流に対する国民の理解も増してくるのではないか。それを全面的に支持するわけではないが、当面この福田流に私は期待したいのである。

|

« 索引のない本 | トップページ | 『求めない』をもとめない »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36654/17944358

この記事へのトラックバック一覧です: いいんじゃない、福田流:

« 索引のない本 | トップページ | 『求めない』をもとめない »