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2008/12/15

オバマ大統領誕生を喜ぶ10の理由

1)ブッシュの時代が終わったこと。終わることは分かっていたが、共和党大統領では,現路線の継続となったことだろう。最強の軍事力によるアメリカ独りよがりの、ネオコン的世界支配、今回の金融・経済危機で露呈した新自由主義による経済運営、「進化論教育・人工中絶・ホモセクシュアル」などに反対する宗教保守寄りの国内政策、地球温暖化対策に消極的な姿勢、などなどのブッシュ政治が一掃されること。

2)中庸をえたリベラルを中心に幅広い政治勢力がアメリカの政治基盤を優位に占める時代が久しぶりに戻って来たようであること。ブッシュを支持してきた保守派政治ウィングは依然として半数に近い勢力を占めていることは選挙結果に明らかである。しかし過去2回の大統領選挙でギリギリに勝敗を分けていたが,今回はかなりの差で民主党勢力が勝利した。政治基盤が大きく動いて,ここしばらくはこの潮流が続くことが期待できる。そうなるかどうかは、オバマがどれだけ現実的に実効性のある政治を展開するか、両院で過半数を占めた民主党がオバマにどのように協力してこの政治基盤を確固たるものにするか,にかかっている。

3)イラク侵略戦争からの撤兵が具体化するであろうこと。これにともない中東諸国(特にイラン)との関係が少しはいい方向に行くことを期待してもいいだろう。さらには非常に難しい問題だがイスラエルとパレスチナの和平問題に、少なくとも現状よりはましな対応をする希望がもてる。

4)外交の基本姿勢が変化することが期待できる。軍事力(ハード・パワー)によるよりも、外交力(ソフト・パワー)による国際紛争の解決の方向を重視するであろうこと。ヨーロッパと協調して国際的な諸問題を解決していこうとの姿勢に転じるであろう。しかし、オバマといえども、アメリカの国民の期待と国益を背負っている。場合によっては軍事力の行使をためらわないことはありうるだろう。

5)国内、国際両面での経済政策が変わる。富裕層優遇の経済政策が修正され、金融危機を招いた馬鹿げたマネーゲームに規制が加えられるであろうこと。経済のことは自由に市場に任せていればいいという政策が見直され、経済のあり方、特に格差問題に、政治は積極的に関わるべきであるとする政策が重視されていく。当面の経済危機にニューディール的な政策がとられることだろう。

6)初めての黒人系大統領が誕生したこと。選挙民がオバマが黒人であることを最終的にはほとんど問題視せず、彼の人物と能力を買って彼を選んだ。これにより、アメリカの複雑な人種問題、社会階層問題に、いささかの転機がおとずれたのではないか。人種間の差別や対立を超えて,融和をもたらそうとの機運が促進された。もちろん、これですべて解決というような安易な期待はできない。しかし、アメリカのマイノリティに,自分たちもオバマのようになれるのだという可能性を気づかせたであろう。かつての怒りをもって闘いとる民族運動が,静かに実力を示していく方向へと向かっている。その動向を顕在化させる象徴的な出来事であった。

7)組織的な草の根運動による未曾有の規模の選挙運動が成功したこと。若い世代を中心とする膨大な数のボランティアが草の根的に輩出し、巧みに組織され、運動を小口の寄付が支え、インターネットを使うことが功を奏し、さらにボランティアと寄金を呼ぶという好循環で、選挙運動が各地に展開した。それが無政府的にではなく,非常によく統率された。これはオバマ本人のリーダーシップと,有能な側近を駆使した力量による。このボランティア組織は,選挙戦終了により終わることなく、今後の政治活動のリソースとして残っていくことだろう(Change.gov に運動は引き継がれている)。重要政策が論点になったときに,オバマ支援に動くことだろう。また予備選に始まり本選に至る長期にわたる大規模の運動をオバマが統率してきたことは、すでに大統領となっての仕事ぶりを予感させるものである。主として大口富裕層からの寄金に頼り、選挙での論功行賞でその後の人事が行われてきた、これまでの大統領選とその後の政治のスタイルに変革をもたらした。これまで宗教保守の、教会を基盤とする組織選挙が成功してきたが、それをはるかに凌ぐ運動モデルが生みだされた。

8)サラ・ペイリンというキャンキャン吠える、知性のなさそうな女性を、副大統領として見ずにすんだこと。

9)日本の政治にとっても,オバマはあるべき政治家の模範像を示してくれたこと。アメリカと日本では政治風土は違うが、彼のような政治家がアメリカに現れ、重みと説得力のある言葉を語り,冷静に考え抜かれた政策を進めることが,日本でも政治家のモデルとして,若い政治家に刺激を与えるであろう(それにしても、日本にオバマに匹敵するような政治家がいつ現れることか)。またアメリカがリベラル寄りに振れたことが、日本での政治にも影響を与えるかもしれない。さらに日本での政治活動や選挙運動のあり方にも,たとえばインターネットの使用を緩和するなど,改善すべき点が多々あることを示唆してくれたと思う。

10)日米関係のあり方が長期的に見て好転することだろう。日米関係は目先で見ればただちにいい方向へ向かうとはいえないかもしれない。しかし長期的に見ればオバマ政権のもとでの日米関係は、日本がより主体的に振る舞わざるをえない方向に行くという功をもたらすことだろう。これまでのブッシュー小泉という例のような、個人的なベタベタした関係をオバマが重視するとは思えない。それはかえって、相互に現実的・戦略的な関係を作り直すきっかけになるであろう。冷徹に国益をぶつけ合う中で、互恵を見いだす関係が望ましい。アメリカは対中政策を重視するであろうし、それを恐れることはない。そのなかで、日本としてのあり方を見直していく方がいいだろう。

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