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2009/02/06

とうとう主夫役を

 つい先日、アイロンかけ役が回ってきたことを書いた(ここ)のだが、今度は全面的に主夫を務めることになってしまった。わが連れ合いは何かと事故が多い人だ。転びやすい。今回は風呂場で転んだ。手をついて体重を受けて、肩が傷んだ。腕が上がらなくなり、動かす向き次第でギクリと痛いという。脱臼とかしているかもしれないんだから、診てもらったらと勧めたが、いやだという。医者嫌いである。そうこうして、10日が過ぎた昨日、自分で整形外科医院に出かけていった。何か自覚するところがあったのだろう。迎えに行ったら、右腕を三角巾で吊った姿で出てきた。腱板損傷と診断されたという。腕と肩のいくつかの筋肉を互いにつなぐ役割をしているのが「腱板」である。それが部分的に裂けた状態らしい。手術してつなぐのがいいのだが、老齢者は手術せずに、養生して自然治癒を待つという方針だそうだ。1ヶ月は三角巾で腕を固定して、肩を動かさないように心掛けよといわれたという。

 利き腕を固定されては、ほとんどの家事ができない。ということで、この日から炊事や洗濯などあらゆる家事がこちらに回ってくることになった。特に問題は料理である。これまでほとんどやったことがない。はじめて、野菜を刻んだり、炒め物をしたり、鍋から盛り分けたり、配膳したりの作業をすることになった。今までは「ご飯だよ」の声がかかるまで書斎に籠もっておれたのに、毎食ごとに立ち働かなくてはならない。

 わが家ではこれまである程度の家事分担があった。食器洗いとコーヒー淹れなどが私の分担だった。おおまかにいえば、食前はあちら、食後はこちらという分担だった。それが食前も食後ともなると、食事を挟んで前と後1時間とか30分とかを費やさねばならない。

 一般に夫の退職は妻にとってたいへんなお荷物の到来である。夫は退職してやれやれこれでのんびり過ごせるという気分になる。ところが、妻にすれば新たな就職のようなものだ。どかっと居座る働きの悪い管理職に気づかいしながら、何倍もの家事労働をしなければならなくなる。それまでは、朝出かけた夫は日中は職場である。夜も残業や付き合いなどで食事が要らない日があった。出張で不在の日もあった。退職となると、夫は終日家にいる。三食食べさせなければならない。家事が増えるだけでなく、食事の工夫で頭を悩ます面もある。退職後家事にまめに励む男も稀にいるらしいが、概していえば、どこも問題を抱えていることだろう。

 わが家とて同じである。わが連れ合いも、食事の準備が重荷だと常日頃不満を漏らし、食事の準備もたまにはやってよと要求する。読書人、思索人、ブロッガーを自称する私の存在価値など眼中になく、ただの暇人に見えるのだろう。仕方ない、無理でも亭主関白を装って、この一線(料理に手出ししないという)だけは守ってきた。されど、突然のこの事態では「この一線」どころではなくなった。鉄壁だったはずの「マジノ線」は思わぬ弱点を突かれて破られた(古いなぁ。大げさだなぁ)。相手は、済まなそうにしているが、チャンス到来と、快哉を叫びたい気分ではないか。

 包丁で野菜を刻むのも不器用にしかできない。卵焼きとか、天ぷらのあげ方とか、チャーハンの作り方は、いちいち指導をうけてこなしはじめている。なかなかのほめ上手に操られている。これからどうなるか。やらせすぎて、私の凝り性に火を付けるとたいへんなことになるぞと、ひとことだけ言っておこう。

 ついでに「転びやすさ」について書いておこう。とにかく相当なものである。覚えているだけで、足の骨折でギプスを付けたのが2回。捻挫一回。浴室で転び大怪我をして、病院に担ぎ込まれ、二十数針も縫った大事故一回。そこまで行かなかった転倒は数知れず。なぜそんなに転びやすいのか。私の観察するところ、身体的機能に欠陥はない。問題は性格である。小柄なのに、元気よく動きすぎる。安全への事前の配慮がない。無鉄砲である。特に歳とともに身体能力が退化してきたのに、気持ちは若いままに動こうとする。現状に対応できていない。そのアンバランスが転びやすさを助長している。この性格は母親ゆずりらしい。彼女の母親は、自宅の玄関で転んで、頭を打撲し、それが原因で亡くなった。入院見舞いに駆けつけた連れ合いに、意識のあるうちに言い残したのは「あなたは私に似て転びやすいから、気をつけなさい」とのひとことだった。せっかくの遺言を彼女はまだ深刻に受け止めていない。そのうちに転んで歩けなくなった連れ合いを車椅子で介護する近未来の夫婦像を、私はしばしば夢に見る。ミゼラブルな老後だ。

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コメント

>私の凝り性に火を付けるとたいへんなことになるぞ

お見舞い申しあげます。でも家事とは本当に奥が深くて面白そう。小生もやってみたいのだけれど、なかなかその機会がないので(越権行為だと言われてしまうので)アクさんがうらやましいです。この際、徹底的に奥義を極められ、どんなものかみんなに発表してください。意外と簡単なことだったのかも知れないという気もしてます。昼飯は僕の分担だったけれど、最近晩飯の領域にも敵陣地を浸食中。

投稿: 余丁町散人 | 2009/02/06 21:23

奥様のことどうぞお大事に。

料理は創造的です、毎日は大変ですが、多くの女性はそれをしてきたのですね。大変なことです。

投稿: 柳絮 | 2009/02/06 22:30

http://intmed.exblog.jp/7786696/
転びやすい原因の病気があるか?2回も脚を折られたなら、圧迫骨折や大腿骨頚部骨折も気掛かりですね。「車椅子で介護する近未来の夫婦像」気が重いですね。

投稿: sionoiri | 2009/02/07 05:40

余丁町散人さん

かねてからクッキングに楽しんで手を染めておられる様子は、ブログを通して存じ上げています。

私は、そこまで深入りせず、単なる労力提供にとどめておくつもりでいますが、先行きどうなるか、好奇心があり、凝るほうですから。


柳恕さん

「創造的」。誘惑的な言葉です。
「女性はそれをしてきた」。男性に都合のよい男女分業に寄っかかっている自分が問題であることは分かっているのですが・・・。


sionoiri さん

 コメントありがとうございます。書いていただいたURLにあるようなことも疑ってみる必要があるかもしれません。

投稿: アク | 2009/02/08 10:22

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