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2009/03/31

北ミサイルへの過剰な反応

 北朝鮮のミサイル発射に備えて、東京都心のど真ん中、市ヶ谷にPAC3ミサイルが配備された。「万が一」とはいえ、いざとなれば、ここから迎撃ミサイルが発射される。どんなものか見たことはないが、テレビで放映される画面を見ると、発射されたら、轟音が鳴りとどろき、火炎と煙がたちこめる。何発もの迎撃ミサイルの実弾が都心のビルや住宅の密集する街の上を飛んでいくことになる。【09/4/02追記あり】

 恐ろしいことだ。これは実戦である。私ら戦争体験者は、アメリカ軍機の爆撃と、けたたましく高射砲が放たれていたシーンを思い出してしまう。北のミサイルが、東京に「万が一」飛んできたらということらしいが、PAC3の打ち損ないが、都心のどこかに落ちる可能性の方が高いかもしれない。実戦となったら、そんなことを言ってはおれないということなのだろう。
【09/4/02追記】4月1日の朝日新聞、社会面の記事(『使えぬ瞬時警報』、『迎撃成功なら破片被害も』)によると、迎撃に成功した場合にも、PAC3が打ち損なったときも、広い範囲に破片被害が及ぶことが予想されている。迎撃成功の場合には、巨大なミサイルの何段目かが破壊されて、ばらばらになった金属片が地上に降り注ぐ。PAC3が打ち損なった場合は、自爆するようになっており、その破片が降り注ぐ。迎撃せずミサイルがそのまま落ちた場合と、どちらが被害が少ないか、そんな声が出ているという。先ほどいただいたアホウ次郎さんのコメントもそのことを指摘しておられる。【追記終わり】

 しかし誰もそんなことは起こるとは考えていない。政府も、防衛省も、政治家も、マスコミも、万が一にも実射などあり得ないと思っているに違いない。それにしては、この騒ぎようはなんだろう。あまりにも騒ぎすぎではないか。マスコミは、何でも話題になりさえすればいい。人々は付和雷同して恐ろしがる。それをいい機会と利用する者たちがいるのだろう。莫大な予算を必要とするミサイル防衛システムの本格導入を図る者、防衛設備への投資で儲ける者、危機をあおることで国民の国防意識を高揚しようとする者、ひそかに日本の核武装まで考えている者、などなど。彼らにとっては、今回のミサイル発射は絶好の機会である。危機を強調し、イージス艦やPAC3をあちこちに配備し、その様子をマスコミに取り上げさせて、彼らの目的を遂げようとしているのではないか。この過剰反応は、意図してのPR活動なのではないか。

 私の東京宅は、市ヶ谷防衛省のすぐそばにある。靖国通りから一筋南に入った住宅街への一角である。出入りのたびに本村町の台地上にそびえ立つ防衛省の建物群を仰ぎ見ている。そのすぐ裏手の自衛隊駐屯地の広場に、PAC3のランチャーが上空に向いて迎撃態勢を整えている。ここはかつて大戦中には、大本営と陸軍参謀本部が置かれた場所である。陸軍士官学校もあった。忌まわしい軍事の拠点なのである。それが今再び実戦に備えている。

 都心でのPAC3騒ぎはこれがはじめてのことではない。08年のはじめごろだったか、新宿御苑にPAC3を持ってきたことがあった。移動展開訓練と称して、いざというときに、都心の主要施設を守るため、都内のあちこちの公園や広場に、PAC3を持ってくる予行練習をしたのだった。

 北朝鮮がミサイル開発を進め、日本の首都をミサイルの射程距離におさめ、核弾頭付きのミサイルで日本を攻撃すると、脅す事態を想定してのことだろう。北が狙うとしたら、ターゲットは、霞ヶ関や永田町、そして市ヶ谷の防衛省あたりと想定しているようだ。PAC3は到達距離が短い。数十キロといわれる。朝霞の駐屯地とか習志野の練習場などからでは、うまく迎撃できない。そこで都心への移動展開ということになるらしい。そんな事態を想定していること自体が恐ろしい。

 そのような「万が一」への対応も必要ではあろう。ミサイル防衛体制も必要かもしれない。しかし、それが万全のものとなるか。技術的にかなり問題があるといわれている。私はハードも必要だが、それよりソフトをもっと、もっと重視した方がいいと考える。北朝鮮の軍事技術の能力や開発状況を冷静に見定める必要があるだろう。また北がミサイル開発を急ぐ意図はどこにあるかも考え、対応した方がいい。軍事力で暴走しようとしているのではなかろう。現体制の存続を求めて米国と交渉したいという意図が見え見えである。北朝鮮の当事者に、核やミサイルの開発を一段と進める方向でなく、外交交渉で安全保障を得る方がよほど得策であることを分からせる。そのことへの努力の積み重ねが大事ではないか。その点からすると、今度の過剰反応は、明らかにマイナスだろう。意図して危機をあおっている者たちにのせられてはならない。

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コメント

 こんばんは。いや~、そう言えば、たいへんな所にお住まいでしたね。
そもそも、交戦権を持たないわが国が、迎撃ミサイルを保持したり、使用せんとするのは、おかしな話ですね. 

 今日は、ニュースで落ち目の首相が、解散をちらつかせていました。 この「有事」を利用して、一気に挽回したいというのが本音でしょう。
戦争の根源は、人気のない政治家と、死の商人一派の癒着にあるんですね。

 それにしても、発射して命中しても、はずれても、破片や迎撃ミサイルが、人口密集地に降り注ぐんですが、その辺の危機管理はどうなっているのでしょうか?
首相お得意のクレー射撃で、撃ち落とすんでしょうか * ̄0 ̄)ノ

投稿: アホウ次郎 | 2009/04/02 00:01

アホウ次郎さん

 「交戦権」についての憲法解釈次第でしょうが、「自衛権」はあるとして、自衛隊があり、防衛のためのイージス艦やミサイルの所持は容認されているのでしょう。

 下手に憲法改正されるより、この程度の現実を甘受する方がいいと、私は考えます。しかし、今回の海賊対策のための自衛艦派遣といい、今なお行われているインド洋での補給活動といい、憲法解釈が拡大される一方であるのは問題です。

 次には、アメリカに向かって発射された北朝鮮のミサイルの迎撃に日本も協力するのかが問題となるでしょう。そうなると集団的自衛権の問題をどうするか。きっとさらに解釈をゆるめる方向になるでしょうね。

投稿: アク | 2009/04/02 09:51

 こんばんは。その自衛権ですが、自衛隊の前身の警察予備隊ですが、占領軍が国会承認なしに勝手に創ったと聞きます。うちの近所の人が入隊したら、日本式なら臨機応変なはずが、訓練は米軍の指導で、雨でも雪でも嵐でもかまわず訓練をやるので、本当にしんどかった、と今でも話します。

>次には、アメリカに向かって発射された北朝鮮のミサイルの迎撃に日本も協力するのかが問題となるでしょう。そうなると集団的自衛権の問題をどうするか。きっとさらに解釈をゆるめる方向になるでしょうね。

 アメリカ往きの虎の子ミサイルを、日本で撃ち落としたら、こっちに攻撃を仕掛けて来ますよねっ!! それって、日本が、もっぱらの戦場になってことでは~ ( ̄○ ̄; !?
日本人ってほんと、人がいい。

投稿: アホウ次郎 | 2009/04/02 22:19

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