2008/02/28

理論の「美しさ」(迷い道にいるのか、物理学。その3)

 少し間が空いてしまったが、予定していた「迷い道にいるのか、物理学」シリーズの第3部を書いてみた。自然法則の究極を求める理論物理の最先端が、スーパーストリング理論という迷い道に入り込んでしまっている(らしい)。それはいったいなぜなんだろう。関心はそこにある。今回は、「なぜ」を端的にいえば、1)「自然法則は美しい」という信条と、2)未踏峰を登はんするこの集団作業が、それがあまりに難路ゆえにカリスマ的なリーダー(一人、あるいは少数)に依拠しすぎた、というあたりにあるらしい。そのことを書いてみよう。書いているうちに例のごとく長くなったので、今回は、1)だけにしておく。

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2008/01/25

間違ってさえいない(「迷い道」にいるのか、物理学、その2)

 量子力学の創始期に、重要な貢献をしたヴォルフガング・パウリという物理学者がいる。電子スピン概念の導入に至った排他原理(禁制法則とも)、ニュートリノの存在の予言などで知られている。1945年にノーベル賞を受賞している。この人は、同僚や若手の物理学者の新説に対して歯に衣着せぬ鋭い批評をすることで知られていた。研究会などでの講演を大声でさえぎって、「間違っている(wrong)」とか、「大間違い(totally wrong)」と言ったという。その彼がもっとひどい説に対して使った表現が、 「間違ってさえいない」(not even wrong)である。スーパーストリング理論批判の書として2冊目に読んだ本のタイトルがこれである。日本語への翻訳本は、せっかくの原題を変えて「ストリング理論は科学か」となっている。

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2008/01/22

「迷い道」にいるのか、物理学

 現代物理学の最先端、素粒子物理学、は、どうやら現在、どうしようもないへんてこりんな迷い道に入り込んでしまい、身動きもならないらしい。しかもその状態が過去20年とか4半世紀続いている。物理学者の中でとびきり頭のいい連中が挑戦しながらも、その分野は何の解決策を生み出さないまま、無駄と思われる議論を続けている。全員が集団思考に囚われているため、内部から批判や研究方針の転換を促す声が出ない。高度な数学理論を寄せ集めて、蜘蛛の巣が張り巡らされたようになっている議論の中身には、外部から批判の向けようがない。しかしいくら何でも、そんなに長い期間かけて何の成果もあげていないのはおかしいではないか。それでいて最も優れた若い理論物理学者の頭脳と有名大学や物理学研究所の理論物理学講座のポストという人的資源と、研究助成金という資金的資源とを独占し続けることは間違っている。そのような批判があちこちから出るようになってきた。

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2007/01/24

製薬会社の研究所閉鎖は手法の革命的変化のせい

 製薬会社として最大のファイザーが、日本での研究所を閉鎖することが話題になっている。全体としてのリストラの一環らしいが、新薬開発しか将来のないはずの製薬会社が、なぜ研究所を閉鎖するのか。ファイザーは日本に限らず、米仏などの研究所5カ所を閉鎖するという。ファイザーだけではない。他の外資系製薬会社も同じように研究所をすでに閉鎖していたり、予定しているという。研究所閉鎖は、リストラという経営上の問題だけではないらしい。薬品開発そのもののスタイルが変わってきたのが原因のようだ。新薬開発手法は、古いやり方から、新しいものへと革命的に変化しつつあるらしい。私の現役時代の最後のころ、すでに耳にしていた。力ずくのスクリーニング法から分子設計へと、新薬を見つける方法が変わるのだと。

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2006/02/02

風旅さんと会う

 「風の旅人」編集長、佐伯剛さんが投げかけた問題、20世紀科学は根本的なところで間違っているとの漠とした疑問、そのいくつかの例として個別に投げかけた疑問のかずかず、また、科学の伝言ゲームへの疑問など、を直接会って話し合いましょう、ということで、お会いした。結果はどうだったか。かなり長い時間、真剣に話し合った。せっかくの美味な料理とお酒は、喉を通るには通ったが、そんなことはそっちのけの話し合いだった。あれこれにわたったお話は密度が濃く、私にはとても興味深く、刺激的であった。しかし、こと科学の問題に関しては、佐伯さんが疑問としてあげた個別問題についての私の説明に、佐伯さんは終始怪訝な表情のままだったし、私も説明が届かないもどかしさを感じたままだった。

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2006/01/25

風旅さんの想像科学

 『「風の旅人」編集便り』で、編集長の佐伯剛さんが、面白い、というより、奇想天外な、科学説を書いた。科学は私の専門である(あった、といった方が正確だが)。妙な学説を唱えられては捨ててはおけない。何度かコメントを書いた。ところが何とも噛み合わない。書いてある事柄を、間違っていると指摘しても、それは普通の科学の範囲内の説明でしょう。私は全然別の前提から出発して、自分流の科学を創ろうとしているのですから、と言われてしまい、相手にしてもらえない。それでいて、

科学、とりわけ20世紀科学は、根本的なところで違ったところから出発して、その上に構築されているのではないかと私は思えてならないのです。

と書き、根本的な間違いは説明されないままなのだが、個別のさまざまな現象とその科学的説明を取り上げて、批判したり、自分の考えを多様に展開する。

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2005/08/17

国際宇宙ステーション、アメリカはやめる気だ

 ニューヨークタイムズ(NYT)が05年8月14日の社説で「宇宙ステーションは必要か」と論じている。宇宙ステーションとは、国際協力で進められている「国際宇宙ステーション(ISS)」のことである。こういう社説を読むと、日本の常識では、政府が進めている計画を、マスコミを代表者とする世論が、止めよと主張しているように見えるのだが、この場合、そうではないだろう。ISSを止めたがっている米政府(NASA)の意向を汲んで、NYTが、国際世論つくりを手助けしていると、私には読める。

 ISS計画は米政府にとっても、米国宇宙開発関係者にとっても、とうにお荷物になってきている。ISSを続けている理由として、社説では二つをあげている。一つは、国際約束があるから。もう一つは、今後の宇宙開発に有益な科学技術上の知見を得ることである。国際約束に関しては、もう果たせそうにないし、関与する国(15パートナー)も予算事情からして、中断を歓迎するのではないか。科学的知見に関しては、計画の変更・縮小により、ほとんど見るべきものがなくなっている。

 それに対し、計画を続けるために必要な経費は巨額にのぼる。また計画続行のための技術的状況が、スペースシャトル技術の現状からして、難しくなっている。協力相手国と話し合って、やめることにした方がいい、というのが、社説の主張だ。これは、おそらく米政府やNASAの首脳部の考えていることだろう。

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2005/07/27

野口宇宙飛行士にばかり注目するアホな報道

 スペースシャトル Discovery の打ち上げが成功した。関連の報道では、野口さんのことに焦点が当てられている。いつも通りの日本の報道の意識の低さにあきれる。イチローや松井が何本ヒットを打ったかだけに焦点を当てて、毎日飽きずに話題にしているアホなスポーツ報道と同じレベル、いや、個人の非凡な力量ゆえではないのだから、もっとレベルが低い、ともいえよう。国際的な田舎っぺですな、日本人は。

もはや宇宙飛行士はヒーローではない 今のシャトル乗組員は、もはや最初の宇宙飛行士ガガーリンや、初大西洋横断飛行のリンドバーグとは違う。巨大なシステムのなかで、分担して役割を担っている一員に過ぎない。前回のコロンビアの事故があった後から、多少リスクを背負っているとはいえ、別にヒーローであるわけではない。それだのに、野口がどうしたとか、何といったとか、何をやるか、そんなことばかり報道する。おまけに出身地の人々、出身校の同期生や後輩らの喜びようを伝えるなど、過熱する報道を見ると、恥ずかしくないのかと皮肉を言いたくなる。日本がお金をたくさん出しているのです。それだけのこと。

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2005/06/11

Palm の発明者が、脳研究に一石を

 パソコンなどの電子機器に多少なりと通じている人は、Palm といえば、あれだと思い出すことだろう。最初は PalmPilot、 後にPalmの名で、世界中に普及している個人情報管理機器(PDA,Personal Digital Assistant) のことである。ソニーが出しているクリエもそれである。手書き入力と、パソコンとの同期というアイデアが抜群で、パソコンを手帳の形にして持ち歩くことを可能にした。その発明者、Jeff Hawkins は、じつは脳の研究が本職だった。長年研究し、考えてきたことを、最近一般向けの本の形で出版した。Palm の発明者ならではの、創意に富んだアイデアが提案されている。脳科学については、ディレッタントに過ぎない私に、はばかりながらいわせてもらうと、実に画期的な成果だと思える。たくさんの研究が積み重ねられてきながら、核心をついたアイデアが現れなかった脳研究に、ついにブレークスルーが訪れた、といってもいい。彼の提案によって、これからの脳研究が大きく変わるのではないか。

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2005/05/05

氷は、気象の大変動を警告している

 グリーンランドの氷を、2マイル(3.2キロ)の深さまでボーリングし、地球の過去の気象変化を11万年前まで調べた。その当事者が書いた本『氷に刻まれた地球11万年の記憶』(リチャード・B・アレイ著、ソニーマガジンズ、2004年刊)を読んだ。

 怖いことが書いてある。氷に刻まれた過去の気象履歴が明らかにしたのは、地球の気象は大暴れしていること、またそれが異常ではなくむしろ当たり前だ、ということである。現在の穏やかな気象は、むしろ希有なものであって、次の大暴れがいつ始まっても不思議ではない。変化は、突然やってきて、短期間に非常に大きな変動が起きる。何世紀もかかって、というようなゆっくりした変化ではない。何十年でもなく、何年間というスパンで、巨大変化が起きるという。

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