2009/08/01

第1、第2の「マンハッタン計画」?

 最近の金融危機を話題にするなかで、「第2のマンハッタン計画」という言葉が使われている。「金融工学」の名の下に、それまで理学分野とは無縁であった金融の分野に数学や工学分野の研究者、それもベスト・アンド・ブライテストが参入し、協同して「デリバティブ」とか「リスクマネージメント」などの理論を高度に発展させた。その行き過ぎが今回の金融危機を招いた。彼らが結集した場が、ニューヨーク市マンハッタンのウォール街であったことと、かつての原爆開発開発が「マンハッタン計画」と呼ばれたこととがどこかで結びついて、この金融工学の異様な盛り上がりとある意味での破綻を「第2のマンハッタン計画」と呼んでいるらしい。「第2」のほうはともかく、「第1」のほうは、マンハッタンとは何の関係もない、偽称もしくはある種の暗号であることを、原爆開発史を多少なりと読んだことのあるものは知っている。誤った歴史が語り継がれることのないように、この「第1」、「第2」の話を受け売りする人々に歴史的事実を指摘しておきたい。

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2008/09/02

健康によい食品選びのための指標:ONQI

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 新着のナショナル・ジオグラフィック誌(08/9月号)を拾い読みしていたら、こんな記事が目についた。米国で、栄養価をあらわす指標 ONQI というのが新たに導入され、スーパーで売られている食品に表示されることになるという。すべての食品に、1-100の指標が付けられる。点が高いほど,健康にいいと。健康を気にする消費者は、スーパーで食品を求めようとするとき、この指標を参考にするといいというわけだ。たとえば、ブロッコリーやオレンジは100、リンゴ、キャベツ、トマトが96、紅ザケ、鯛、エビが、それぞれ、82、82、75と、高い指標を与えられ、他方、ステーキ、鶏胸肉、ハンバーガー、目玉焼き、ホットドッグなどが、それぞれ 44、39、25、18、5 と低い指標になる。ナショ・ジオ9月号の「健康」欄に80ほどの品目の指標が出ている。

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2008/07/15

生ごみゼロをめざして

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 生ごみ排出ゼロを心がけている。コンポストを使ってきたが、いっぱいになると、その始末にてこずる。まだ土に戻すには早い。もう一つコンポストを置くには、庭のスペースが足りない。そんなところに「生ごみ処理機」のことを耳にした。市から補助金が出ているという。4〜6万円の処理機を導入すると、2万円の補助が出る。早速購入し、市役所に行って補助金の申請をした。このような処理機があることも、補助制度があることも知らなかった。数年前にはじまったことらしい。案外知られておらず、普及もしていないのではないか。どんなものか、使いはじめて約1ヶ月の経験を紹介しよう。

【画像説明】奥右が、生ごみ処理機の蓋を開けたところ、蓋の裏にヒーターとファンが取り付けられている。右手前が、刻んで乾燥中の野菜かすなど。左奥は乾燥中のコーヒーかす。左手前が、処理後の生ごみ。画面をクリック→拡大。

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2008/06/03

中性子研究の進展を喜ぶ

 今朝の新聞に、「中性子放出に成功」との、小さな記事が載っていた(プレス発表はここにある)。茨城県東海村にある J-PARC という加速器施設で、プロトン(陽子)を加速して、水銀ターゲットから中性子をはじめて発生させた、というニュースである。ずっと以前私が関わったことがやっと実現したということで、私にとっても感慨深い。この計画のごくごく萌芽の段階で、大学と原研(私のいた原子力研究機関)の数人の関係者で非公式に話し合いをはじめた。私はそのメンバーのひとりだった。その段階から、計画が具体化し、機関間の調整をし、予算が認められ、技術開発が進み、施設建設に着手、そしてやっとビームが出るというところまで、20年近くかかっている。その間、さまざまな人たちの努力で、科学研究のための新しい道具がついに実現した。実際に研究が行われ、成果が出るまでにはさらに時間がかかるだろうが、今後を期待したい。

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2007/11/13

こわいもの

 ある会社の広報誌に寄稿したものが出版された。その会社のホームページに掲載(『こわいもの』)されているので、お読みいただきたいと紹介する。この会社(長瀬ランダウア株式会社)は、放射線を扱う仕事(医療機関とか産業とか)をしている人たちが、どれだけ放射線に当たったか(被ばく線量)を計測するサービスを行っている。私が現役だったころは、胸にフィルムバッジをつけて仕事をしていたが、今はもっと進んだバッジなどが開発され使われている。放射線作業従事者が多数いる職場では、自前で被ばく線量管理をしているが、個別の医療機関や大学、放射線を使う産業現場(非破壊検査など)などでは、このような会社に外注している。その種業務の大手のようだ。

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2007/07/20

真鍋モデルを貶める槌田(『CO2温暖化説は間違っている』の間違い、その2)

 地球温暖化が人為起源のCO2によることが、多くの科学者のたゆまぬ努力によって、次第に明らかになった来た研究史の中で、金字塔ともいうべき画期的な業績がいくつかある。ハワイ・マウナロア山でのキーリングのCO2濃度観測などがその一つだが、コンピューターを使って気候予測をする分野で画期的な仕事をしたのは、日本人の真鍋淑郎(プリンストン大学)であった。1967年、真鍋が共同研究者と書いた論文について、ワートは『温暖化の〈発見〉とは何か』の中で(143頁)、

 温室効果による温暖化のモデル計算が、専門家に理にかなったものだと見られるようになったのは、このときが初めてのことだった。温暖化に本質的な要因が十全に計算に取り入れられたと認められたのだ。専門家の一人であるブロッカーがのちに振り返って言っているが、この1967年の論文こそが、「これ(温暖化)は憂慮すべき問題なんだと、私を確信させたもの」だった、と。【上記書の翻訳がこの部分はやや生硬であったので、原文から私訳】

 と書いている。この真鍋の業績について、槌田は『CO2温暖化説は間違っている』の中で、とんでもなく見当違いの批判をしている。そのことを少し詳しく検討してみよう。

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2007/07/18

槌田『CO2温暖化説は間違っている』の間違い

 著者・槌田敦は、異論を唱えるのが生きがいの人である。最近では地球温暖化問題での通説を攻撃しているらしい。地球温暖化が産業活動などによるCO2の増加によることがほぼ明らかになった、対策が急務だ、との気象学者たちの結論に異を唱えているらしい。またやっているな。無視してもいいのだが、この問題にずっと関心を持ち続けてきたものとして気になる。タイトルに書いた彼の著書(ここ)を取り寄せて読んでみた。案の定おかしなことがいっぱい書いてある。どこがおかしいか、きちんとした反論はすでに専門家によってなされている(たとえばここ、本エントリの末尾にもリンクあり)。私は、槌田の致命的な誤りを1,2取り上げて、一般向きに書いてみよう。

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2007/06/10

「バサラ」だったドジャンヌ

 ドジャンヌ(Pierre-Gilles de Gennes)が亡くなっていた。このところ新聞も、ウェブページもゆっくり見ているひまがないほど忙しかったので気づくのが遅れた。物質科学の理論家としては現存する最高の人だったろう。死亡記事を検索してみると、ほとんどの記事に「現代のニュートン」という言葉が添えられている(たとえばここ)。現在テレビやディスプレイに使われている液晶が、まだ単なる研究対象だったころ、その振る舞いを理解する基本的な理論を築いた人だ。ほかにもさまざまな分野で研究をしている。未知の物質や現象にいち早く目をつけ、その本質を見抜くという仕事をする人だった。1991年にノーベル物理学賞を得ている。死亡原因は明かされていない。74歳という早すぎる死だった。

 たった一度だけ出会いがあった。その天衣無縫ぶりになかばあきれ、かくも自由に振る舞う人だからこそ創造的な仕事もできるのだと妙に納得もした。その思い出を書いてみて、ドジャンヌは、会田雄次のいう「バサラ」だったと思い当たった。バサラとは、何ものにも拘束されず、破天荒に生きるさまをいう。

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2007/03/09

温暖化予測は検証されていない?

 温暖化問題について、少し無謀なことをしてみようと思う。この分野の専門家が書かれたことに、素人である私が疑問を投げかける、ということだ。それは「予測」についてである。仮説と実証という科学の本来的なあり方を説いた上で、予測は実証されていない、そのとおりになるかはその時になるまで分からないと、この専門家は書いている。これは、正論のようでいて、ミスリーティングではないか、そう私はいいたい。予測とはいっても、過去のデータによるモデルの検証という、いわば実証に近い科学的テストがくり返し行われており、これは通常の科学での仮説と実証にほぼ相当することを、いうべきではないかと思う。

 前のエントリで温暖化問題について書いたことで、コメントをたくさんいただいた。その中で教えていただいて、名古屋大学の高野雅夫助教授のブログ『だいずせんせいの持続性学入門』を読みにいってみた。今回のIPCC報告書について、地球環境科学の専門家らしい的確な紹介をしておられる。その一連のエントリの最初に書かれた「『予測』とはなにか」にある「予測=未実証」説に、私は引っかかる。シリーズもののイントロとして書かれ、そのあとの文脈では、妥当な見方に戻っているのだから、目くじら立てることはないのだが、やはりここに書かれた予測論は誤解を与えるものだと思う。

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2007/03/03

田中宇の「温暖化のエセ科学」論は?

 国際ニュース解説の配信者として知られる田中宇が、最近発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書を、エセ科学だと批判している(ここ)。1990年の一次報告以後、2,3次と研究成果を積み重ね、疑問点について議論を深めて解決し、予測の確度をあげて、今年第4次報告の完成を目指してきたIPCCと、それに参加している世界中の2千人を超える気象科学者の努力を、一部の異論を誇張して示すことで、エセ科学だと斬り捨てるのは乱暴すぎよう。私は専門家ではないが、この問題に関心を持つものとして、田中の議論の主要点をチェックしてみる。

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